「条件付き確率」の使い方を具体例を使ってわかりやすく解説【初心者向け】

2023年10月13日

物流業界で「確率」「統計」は不要なのか?必要性を検証してみた。

で、物流ではベイズ統計の利用価値が高いことを紹介しました。

このベイズ統計を理解するには、まず条件付き確率を理解する必要があります。

条件付き確率を勉強すると、人間の直観を裏切る結果が導けることが分かって面白いと思いますよ。

今回は条件付き確率の意味と、その使い方について解説していきます。

 

確率の記述方法

サイコロを振って1が出る確率が1/6の場合、確率論では次のように表現します。

P(X=1) = 1/6

ここでXを確率変数といい、サイコロ投げの場合は1から6までの値をとります。

もしくは、確率変数を省略して

P(1) = 1/6

のように書くこともあります。

Pは「Probability」の略で「確率」の意味です。

 

同時確率とは?

それでは2つのサイコロを振って、どちらも1が出る確率はいくらでしょうか?

初めてだと少し戸惑いますね。

2つの出来事が同時に起こる確率は、それぞれの出来事が起こる確率を掛ければ求まります。

(厳密には、それぞれの出来事が独立であるという前提が必要です)

それぞれのサイコロが1が出る確率は1/6ですので、

1/6×1/6 = 1/36

となります。

これを確率論で記述すると、

P(X=1, Y=1) = P(X=1)P(Y=1) = 1/6×1/6 = 1/36

となります。

 

このように、2つの出来事が同時に起こる確率を同時確率と言います。

2つの確率変数がそれぞれ取る値を、P(X=1, Y=1)のようにカッコの中に書きます。

そして、同時確率はそれぞれの確率のになります。

 

小学生の頃に習った「集合」で表すと、赤で示した部分の確率を示しています。

 

式で書くと、

P(X∩Y) = P(X)P(Y)

ということです。

 

条件付き確率とは?

次の問題を考えてみましょう。

 

2つのサイコロを振ったら、1つのサイコロが机の下に落ちてしまいました。

もう一方のサイコロの目は3でした。

この時、2つのサイコロの目の合計が7以上になる確率はいくらでしょうか?

 

一方のサイコロの目をX、もう一方をYという確率変数で表します。

X、Yの確率変数は、ともに1~6の値を取ります。

 

落ちなかったサイコロの目が3になる確率は1/6です。

つまり、

P(X=3) = 1/6

です。

 

サイコロの目の合計が7以上になるためには、もう一方のサイコロの目が4、5、6のいずれかにある必要がありますね。

そして、その確率が3/6、つまり1/2であることも自明でしょう。

つまり、

P(Y=4, 5, 6) = 3/6 = 1/2

です。

 

そして、これらのことが同時に起こる確率は

P(X=3, Y=4, 5, 6) = 1/6 × 1/2 = 1/12

です。

ベン図で書くと次のようになります。

 

ここで求めたいのは、一方のサイコロの目が3であることが分かっている時に、2つのサイコロの目が7以上になる確率です。

ということは、P(X=3)の集合の中で、P(X∩Y)の集合が占める割合を求めればよいことになります。

 

つまり

となります。

 

こういうのを条件付き確率といいます。。

なぜなら、1つのサイコロの目が3という条件のもとで、2つのサイコロの目が7以上になる確率を求めているからです。

 

上の式をもう少し一般的に書くと、

となり、これによって、ある条件のもとで、もう1つの出来事が起こる確率を求めることができます。

 

また、条件をX、もう一つの出来事をYという確率変数で表すと、Xの条件のもとでYが起こる確率は、P(Y|X)のように記述します。

 

先ほどの式と併せると、

のように書け、これが条件付き確率の公式になります。

 

 

条件付き確率を具体例で理解する

先の例では、わざわざ条件付き確率の公式を使わなくても、直観で1/2の確率だと分かるかもしれません。

でも、次の例はどうでしょうか?

 

ある夫婦には子供が二人います。

ある日、そのうちの一人の子が外で遊んでいるのを見かけました。

男の子でした。

もう一人も男の子である確率はいくらでしょうか?

但し、男の子が生まれる確率と女の子が生まれる確率は半々とします。

 

「二人のうち、たまたま一人が男の子だったかもしれないけど、そんなの関係ない。

もう一人も男の子である確率は半々だ。」

と考えるのが普通ではないでしょうか?

管理人もそうでした。

しかし、確率を計算すると1/3になります。

そのからくりはこうです。

 

二人の子供の性別の組み合わせは、

  1. 男、男
  2. 男、女
  3. 女、男
  4. 女、女

の4通りです。

ある日、一人が男の子であることが分かりました。

この時点で、dの可能性は消えます。

すると、残り3通りの中で、もう一人も男の子になるのはaの1通りだけですね。

つまり、確率は1/3ということになります。

 

これを条件付き確率で解くとこうなります。

 

まず、二人の子供の性別をそれぞれX、Yという確率変数で表します。

X、Yともに、男の場合は1、女の場合は0とします。

 

ある日、男の子を見かけた時点で、4通りの中から3通りに絞られたのですから、X=1となる確率3/4の出来事が起きたと言えます。

P(X=1) = ¾

 

また、男男になるのは4通り中1通りだけですので、X、Y共に1になる同時確率は1/4です。

P(X=1∩Y=1) = ¼

 

従って、一人が男の子という条件のもとで、もう一人も男の子になる確率は、

となり、先ほどと同じ結果になりました。

 

この理解を確認するために、先ほどの例の派生形を考えてみましょう。

 

ある夫婦には子供が二人います。

ある日、そのうちの一人の子が外で遊んでいるのを見かけました。

男の子でした。

かつ、お兄ちゃんでした

もう一人も男の子である確率はいくらでしょうか?

但し、男の子が生まれる確率と女の子が生まれる確率は半々とします。

 

先ほどの例と違うのは、太字部分だけです。

 

二人の子供の性別の組み合わせは、

  1. 男、男
  2. 男、女
  3. 女、男
  4. 女、女

の4通りです。

左側が上の子、右側が下の子としています。

 

上の子の性別をX、下の子の性別をYという確率変数で表します。

X、Yともに、男の場合は1、女の場合は0とします。

 

ある日、上の子が男の子だと分かった時点で、aとbの2通りに絞られます。

これは、

P(X=1) = 2/4

という確率の出来事が起こったと言えます。

 

また、男男になるのは4通り中1通りだけですので、X、Y共に1になる同時確率は1/4です。

P(X=1∩Y=1) = ¼

 

従って、上の子が男の子【P(X=1)】だという条件のもとで、下の子も男の子【P(Y=1)】である条件付き確率は、

となり、先の例とは違った確率になりました。

 

まとめ

条件付き確率の公式

は一見、自明のように思えますが、意外と直観を裏切るような結果を導けることがお分かりになると思います。

ただ、これだけでは単なる頭の体操に終わってしまいます。

物流への適用事例も思いつきません。

 

しかし、これから派生したベイズの定理は、物流のみならず、様々なビジネスに適用できます。

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