【物流業界の課題と将来性】ただの下僕か?それともクールな職業か?

2021年8月4日

最近はアマゾンを始めとするネット通販や、ウーバーを始めとする宅配サービスによって、物流が身近なものになってきました。

それまでは店頭にモノがあるのが当たり前のように思っていた消費者でも、家まで届けることまでは流石にただでは無理だろうと思ってもらえるようです。

しかも、普段忙しく買い物に行く時間すら勿体ないという人には、宅配料金は安いとさえ思ってもらえます。

コロナで外出したくないと思っている人にとっても、場所によっては交通費などを考えると、安いと思ってもらえるでしょう。

これは大きな変化です。

なにせ、それまでは一般消費者だけでなく、メーカーや小売業などの会社にも物流はただと思われていたのですから。

 

これは日本古来の、ある商慣習が影響していると考えられています。

商品価格に物流費を含む慣習です。

この慣習には、物流業者や物流担当者を苦しめる要因が多く詰まっています。

 

まず、買う側からすると物流費を意識しなくていいので、ただ同然と思ってしまいます。

どうやって発注しても物流費が変わらないのなら、1つしかなくても明日持って来いとなりますね。

買う側だけではありません。

売る側も物流費は面倒くさいコストとしか思えなくなり、コスト削減の格好の対象となります。

納品条件を顧客と話し合ってWin-Winを目指そう、などという発想にはなりません。

 

これでは欧米からSCMのカッコいい理論が入ってきてもムダです。

奴隷同然と思われている物流が表舞台に立つことはできないでしょう。

 

欧米では商品価格と物流費は普通、分かれています。

そのため、チマチマ毎日発注するなんてことをしたら物流費が高くなってしまいますので、そんなことはしません。

やむを得ない場合には、きちんと対価を支払います。

彼らからすると、日本は物流のユートピアに見えるでしょう。

 

ところが時代は変わりました。

ようやく日本でも、物流はただではない、それどころか私たちの生活を便利にしてくれる付加価値の高いサービスなのだ、と思ってもらえるようになりつつあります。

これには色々な要因がありますが、大型の物流センターを次々に建ててサービスを認知させてきたアマゾンの頑張り、消費者のわがままに堪忍袋の緒が切れて値上げを断行したヤマト、コロナでブレイクしたウーバーなどの宅配サービスの影響が大きいと思います。

これらは不可逆の変化ですので、今後は物流サービスへの健全な認知が益々広がっていくでしょう。

 

ですので、若い人たちにとっては物流業界に飛び込む絶好のチャンスだと思います。

一般消費者だけでなく、物流会社や荷主会社も変わってきています。

ロジスティクスエンジニアリングが認知されてきたのが好例です。

 

管理人が20年前に物流業界に入った頃は、DHLFedExなどの一部欧米系大手物流会社しかエンジニアなんていませんでした。

ロジスティクスエンジニアリングとは、物流を数字で管理することです。

>> 【ロジスティクスエンジニア】の業務内容を張本人が徹底解説します。

 

これがないと、どういうことになるでしょう?

 

日本にはいつも何年か遅れで、欧米のベストプラクティスが入ってきます。

例えばVMIセンター納品です。

VMIとは組み立てメーカーが自社で部品センターを持つのをやめて、ベンダーに自分たちの工場の前に倉庫を用意させて在庫も持たせる手法です。

センター納品とは、大手小売り会社がベンダーに各店舗まで納品させるのをやめて、自社で用意した物流センターへの一括納品に単純化する代わりに、センターフィーという手数料を徴収する手法です。

これらが日本に入ってきたのは、2000年代前半でした。

 

実はこれらは、物流費が商品価格に含まれる商慣行だった日本が変わるチャンスでした。

なぜなら、これらの手法を導入するには、物流費が商品価格から分離されていないと、採算性をきちんと評価できないからです。

今までの物流費と今後の物流費をきちんと算出できないのに、今までのやり方を変えるのは無理というものでしょう。

 

しかし、当時はロジスティクスエンジニアリングが根付いていなかったせいか、このような議論に参加できる会社は少数派でした。

大手メーカーや大手小売の要求に、データで反論できるくらい理論武装したベンダーは少数でした。

その結果、大手企業による押しつけ、コスト削減の道具に使われてしまったのです。

 

このように、ロジスティクスエンジニアリングで数字で理論武装できていないと、訳の分からない要求を押し付けられてしまいます。

物流コストはただでさえ把握するのが難しいのに、日本では商慣行上、会計にいろいろな科目で紛れ込んでいます。

しかし、これを把握して、どうすればどのようにコストが変わるのかまで把握できていれば、データで反論できるようになります。

近い将来、このような議論が当たり前になっていくでしょう。

 

まとめ

  • 日本では長く、物流費はおまけのコストと見なされ、ただただコスト削減の対象でしかなかった
  • 物流費込みの商品価格がその大きな一因
  • 欧米では物流費は商品価格から分離され、無理なサービスは要求しないし、する場合は見合った対価を支払う
  • 日本でも最近は物流サービスはただでないことが認知されるようになってきた
  • 今後は、数字に基づいた議論ができる業界になっていくと思われる
  • 若い人たちにとっては、今後、物流はクールな選択肢になる(10年前なら決して推奨しなかったが)