平置きで保管効率が最大になるような倉庫レイアウトをVisioで設計する方法

2023年10月11日

前回(倉庫レイアウトの設計方法をロジスティクスエンジニアがわかりやすく解説①|パレットラック編)は、4段積みのパレットラックで保管する場合にVisioで保管エリアの広さを見積もる方法を解説しました。

保管するパレットの大きさに応じてパレットラックのサイズを決めれば、一間口のブロックの大きさが決まります。

あとは、このブロックを通路や柱を考慮しながら、パズルのように並べていくだけでVisioでレイアウトできました。

 

ところが、前回は4段積みのパレットラックでは、目標の1,400パレットを収容することができませんでした。

今回は、倉庫の床の上にパレットに載った貨物を置く、平置きで1,400パレットを収容できないか検討してみます。

 

平置きの方が保管効率が高くなる条件

一般的には、平置きよりもパレットラックの方が、多くの貨物を収容することができます。

そうでないと、わざわざコストをかけてまでパレットラックを使う意味がありませんので。

 

しかし、条件によっては平置きの方が多く置ける可能性もあります。

まず、パレットに載せた貨物を2段積み3段積みできる場合です。

これは、貨物の梱包強度によります。

 

もう一つは、奥行き方向に複数のパレットを置ける場合です。

下図は、奥行き方向に4枚のパレットを置ける場合の正面図と側面図です。

 

このように置くと、1列に4枚のパレットを隙間なく置けるので、通路スペースを取る必要がありません。

その代わり、手前にパレット2枚分のスペースに空があっても、後日入荷してきたパレットをそこに置くことはできません。

先入れ先出しができなくなるからです。

従って、この方式を採用できるのは、入出荷ロットが大きい場合に限られます。

 

Visioでレイアウトする

ブロックサイズを決める

それではこれらの条件が満たされる場合に、平置きで1,400パレット分保管できるかを検討してみましょう。

貨物は2段積みまでOK、各商品アイテムの入出荷ロットは10パレット以上の少品種多量と仮定します。

 

まずは、前回と同じようにVisioでレイアウトを描く場合のブロックのサイズを決めます。

奥行き方向に5パレット(2段積みでは10パレット)置いて、隣の列と100mmの余裕スペースを持たせる場合、1ブロックのサイズは次のように5,500mm×1,200mmになります。

同様に考えて、奥行きに4パレット(2段積みでは8パレット)置く場合のブロックサイズは4,400mm×1,200mmになります。

 

ブロックをレイアウトする

前回と同様、フォークリフトが通路で旋回するための直角積付通路幅は4mとすると、次のようにVisioを使ってレイアウトすることができます。

 

倉庫の幅に合わせるため、4パレット/ブロックと5パレット/ブロックが混じっています。

柱を避けている所4か所を考慮すると、全体で724枚分のパレットロケーションがあります。

それぞれ2段積みにすると、1,448パレット分の貨物を収容できることになり、1,400パレットをクリアできました。

 

保管効率を見積もる

保管効率が重要な理由

さてこれで一件落着かと言うと、ことはそう簡単ではありません。

なぜなら、入荷の時に1ブロックが埋まり切らなかったり、出荷の時に1ブロック分すべてきれいに出ないこともあるからです。

そのような場合には、中途半端に空スペースができてしまうことになります。

全体で156ブロックありますが、各ブロック平均1パレット分の空スペースがあるだけで、156パレット分のスペースがムダになります。

 

この場合、1,448 – 156 = 1,292パレット分しか保管できないことになります。

従って、このムダになるスペースを正確に見積もれないと、1,400パレット分を収容できるかどうかは分かりません。

合理的に見積もるにはどうしたらよいのでしょうか?

 

入荷時の保管効率

入荷時の空スペースを見積ることは比較的簡単です。

入荷時は原則的に空のブロックに入れます。

従って、商品アイテム別入荷パレット数を8または10で割って、その余りが入るブロックは空スペースがあるブロックになります。

例えば、ある商品アイテムが26パレット入荷した場合、その商品を10パレット/ブロックのロケーションに入れる場合、

26÷10=2 余り6

ですので、

2+1=3ブロックが必要となり、保管効率は

26÷(10×3)=87%

となります。

 

出荷時の保管効率

しかし、出荷時にできてしまう空スペースを解析的(式を解くやり方)に見積もることは困難です。

出荷に引き当てられる在庫が、フルに詰まったブロックから出される場合もあれば、スカスカのブロックから出される場合もあるからです。

このような場合にはモンテカルロシミュレーションにより、確率的に予測するしかありません。

>> 倉庫レイアウトの違いによる保管効率をシミュレーションする方法【サンプル付き】

 

次回はモンテカルロシミュレーションを使って、果たして1,400パレット分を収容できるのかを検証します。

95%の確率で保管可能なパレット数をモンテカルロシミュレーションで求める