ロジスティクスエンジニアってどうなのよ?業務内容やキャリアプランについて

エンジニアというと、機械系やIT系の会社で働いている技術的社員というイメージがありますが、最近はロジスティクスエンジニアという職種をよく目にするようになりました。

ロジスティクスエンジニアはどんな仕事をしているのか?

どんなスキルが必要なのか?

キャリアとしての将来性はどうなのか?

実体験に基づいて解説していきます。

 

ロジスティクスエンジニアの仕事の特徴

ロジスティクスエンジニアの求人情報に書いてある職務内容を見てみると、物流センターのレイアウト設計設備導入計画の策定オペレーションフローの設計作業改善などとなっています。

メーカーでいうと、工場にあるエンジニアリング(工務)部門や、本社や技術センターにある設備投資計画を企画する部門の仕事に似ています。

 

工場エンジニアと比べると「広く浅く」

概ねこのイメージで間違っていませんが、私の経験で言いますと、メーカーは狭く深くであるのに対して、ロジスティクスでは広く浅くになってくると思います。

メーカーは一般的に物流会社より機械化が進んでいます。

これは、メーカーでは1つの生産ラインで製造される商品アイテム数が限られているため、自動化機器への投資対効果が高いことがあります。

 

また、メーカーでは一旦生産計画を立てれば、後は自分のペースで生産を進められます。

明日どのくらいの発送依頼が来るか分からない物流会社と比べて、自動化機器への投資がし易いのです。

自分のペースで生産を進められるということは、作業分析をしてムダな動きを排除したり、作業方法を標準化するといったインダストリアルエンジニアリング(作業改善、IEとも言う)の活用に適しています。

これらの事情から、メーカーでは設備エンジニアにしても、インダルトリアルエンジニアにしても、やることが多く専門性も深いため、担当者が分かれることが多くなります。

 

それに対して物流会社では、一部の大型物流センターを除けば、それほど高度な機械が導入されているわけではありません。

また、メーカーのように作業者の精緻なモーション分析をして、ムダのない作業方法を標準化したとしても、大抵はムダ骨に終わります。

貨物の形状はバラバラですし、センターに入ってくる貨物の量やタイミングを物流会社がコントロールすることは通常できません。

ある作業で3秒のムダ取りをしたとしても、1分の待ち時間で簡単に相殺されてしまうのです。

つまり、インダストリアルエンジニアリングを適用できる範囲がメーカーより狭くなります。

従って、物流会社のロジスティクスエンジニアは、設備エンジニアリングとインダストリアルエンジニアリングを一人で兼務することが多くなります。

 

工場エンジニアより業務範囲は広い

このことをどう捉えるかはその人次第です。

管理人はメーカーのエンジニアからロジスティクスエンジニアへ転身しましたが、業務範囲が飛躍的に広がったためモチベーションが上がりました。

メーカーで設備投資をする際には、工務部門だけではなく、生産部門、技術部門、本社などと管理職レベルで何度も打ち合わせが必要です。

そこで将来の需要予測や技術動向を基に投資対効果が検討された後に、現場のエンジニアが動くことになります。

 

ところが管理人がメーカーから最初に転職した外資系物流会社では、新しい物流センターをどこの県に新設するということは上で決定されていましたが、投資対効果を計算して予算を立案することから始まり、センターの立地選定、センター内レイアウト設計、設備選定/調達オペレーションフロー設計、IT導入まですべて一人で仕切ることを求められました。

技術的な難度はメーカー時代と比べて低いものの、メーカーにいれば後10年は待たなくてはできないような意思決定ができるようになったのです。

 

勿論、このような意思決定は重要事項ですので、それをサポートするためのマニュアルは充実しています。

例えば、投資対効果を計算するためのエクセルシートは、膨大な数値データを入力しないと先に進めないようになっています。

誰が意思決定をしても同じ結果になるように、客観的な数値データで条件を記述することが求められているのです。

 

ロジスティクスエンジニアに必要なスキル

数学スキルで差がつく

ロジスティクスエンジニアに絶対必要なのは数学スキルです。

何も投資対効果を計算することだけがロジスティクスエンジニアの仕事ではなく、一部に過ぎませんが、このエクセルシートを埋めることは誰にでもできるわけではありません。

現に、この外資系物流会社の同じ部門の人でも、ちゃんと埋められる人は限られていました。

 

例えば、エクセルシートの中に次のような項目があるとしましょう。

Process X (during peak hours)

Incoming number of cartons:         A

Footprint per carton:   B

Time window:   C

Standard processing speed:  D

Number of staffs:   E

Process Y (during peak hours)

Time window:   F

Standard processing speed:  G

Number of staffs:   H

Buffer area:   I

 

プロセスYはプロセスXの次のプロセスで、その間はローラーコンベアでつながれているとします。

一日で最も忙しいピークタイム時にプロセスXに入ってくるカートン数をAに入力します。

曜日によっての変動もあるのが普通ですので、最も忙しい曜日の平均データを取るとよいでしょう。

 

そして、カートンの断面積の平均値をBに入力します。

カートンの大きさのデータはセンターに受け入れ時に図っていますので、過去データから平均値をとります。

 

次に、ピークタイムの時間帯をCに16:30~18:00のように入力します。

すると、この会社ではグローバルに標準作業のスピードが決められている(D)ため、必要スタッフ数が自動で計算されます(E)。

同様にプロセスYについても必要なスタッフ数が自動計算されます(H)。

 

ところがスタッフ数(EやH)は整数でないといけませんので、XとYの両プロセスで処理されるカートン数はどうしても差が出てきます。

その場合、前のプロセスの処理カートン数の方が少ないと、後のプロセスで手待ちができてしまいます。

ですので、前の処理カートン数の方が多くなるように、必要なスタッフ数EとHは自動計算されるようになっています。

 

その結果生じた処理カートン数は前プロセスと後プロセスの間に滞留します。

ですので、その滞留を受け入れるだけのスペースがローラーコンベア上になければなりません。

そしてそのスペースがIに自動計算されるようになっています。

 

この理屈が分かると、どのくらいの幅のローラーコンベアをそのくらいの長さ購入すればよいのかが分かるのですが、分かっていないと経験と勘でこれを決めることになってしまいます。

 

このような視点でこのエクセルシートを眺めると、必要にして十分な数値データを集めることを求めており大変よくできたシートであることがわかります。

しかし、意味を理解しないでいると、適当なデータを入力して適当な計算結果になってしまったり(garbage in garbage out)、折角計算された意味あるデータを見逃したりすることになるのです。

 

モノの流れを数式で表現できる力が大事

そして、このような場面で必要になるのが数学スキルなのです。

ロジスティクスエンジニアに必要なのは、難しい力学計算電気回路を理解することではなく、モノの流れを分かり易い数式で表現することと言っても過言ではないでしょう。

その意味では理系である必要はなく、世の中の仕組みを式でモデル化する数理を扱う経済学の方が近いかもしれません。

 

ロジスティクスエンジニアのキャリアプラン

会社によってロジスティクスエンジニアリングの定義は異なる

このようにロジスティクスエンジニアリングの仕事は数学スキルが嫌でも身に付きますので、その後のキャリア選択にも幅が出てきます。

会社によって業務内容に差がありますが、通常は物流センターのオペレーションや輸送の改善など下流系の業務がロジスティクスエンジニアリングの対象となります。

物流ネットワークや在庫コントロールの適正化などの上流系業務は、物流企画の業務範囲となるケースが多いですが、会社によってはこれらの業務もエンジニアリングに含めることもあります。

物流企画ってどうなのよ?業務内容/必要なスキル/キャリアプランについて

 

人によっては荷主企業では物流企画と呼び、物流会社ではロジスティクスエンジニアリングと呼ぶのだという人もいます。

管理人が物流業界に入った20年前には、エンジニアを募集していた物流会社は4大インテグレータであるDHLFedExTNTUPSくらいしかありませんでした。

日本の物流業界では最近できた職種ですので、人によって会社によって定義は様々です。

応募する前に確認することをお薦めします。

 

ソリューション開発/SCMコンサルタント/物流企画が視野に

さてその後のキャリアの選択肢ですが、物流会社でロジスティクスエンジニアリングを経験すれば、それは大抵の場合、ソリューション開発にも関わることになりますので、次の物流会社ではもう少し幅を広げて、物流ネットワーク最適化などの上流系業務を含めたソリューション開発のポジションを狙えると言えます。

勿論、SCMコンサルタントも視野に入るでしょう。

物流会社から荷主企業を狙うのでしたら物流企画が狙い目ですので、そこで上流系業務の企画を経験すれば、物流業界で職に困ることはないでしょう。

 

ロジスティクスエンジニアに必要とされる、モノの動きを数字でモデル化して考えるセンスは、これからの日本の物流業界にとって益々重宝されるようになっていくはずです。

チャンスがあれば是非経験してみることをお薦めします。

 

製造業から物流業へのエントリーポジションとして最適

またロジスティクスエンジニアは、管理人もメーカーから初めて物流業界に転職して最初に就いたポジションですが、メーカーのエンジニアから物流業界にキャリアチェンジを図る人にとっては、エントリーポジションとして狙い目です。

【物流×理系】理系にこそお薦めの物流業界、その理由をまとめてみた。

 

とはいえ、先にも書きましたように求められるのはモノの動きを数字でモデル化して考えるセンスで、微分積分や行列などの高度な数学は全く必要としません。

文系でも、数学スキルがある人にはお薦めのポジションです。