物流企画に求められるスキルとやりがい

2021年6月16日

物流企画に求められる役割の重要性がますます高まってきています。

昔の物流企画は、どちらかと言うと物流業者を叩いていかに安い料金を出させるかで評価されていました。

今はもうそのやり方は通用しません。

物流業者からソッポを向かれてしまいます。

合理的な物流ネットワークにして、いかに物流自体を減らすかという工夫が問われる時代になったのです。

 

実際、物流コストの削減余地は多くの会社で残っています。

また、物流会社にいては携われないような上流企画業務でありながら、物流会社で働いた者にしか知りえない知識を生かすチャンスも多々あるため、物流会社からの転職先としてもお薦めです。

私自身も物流会社から商社のロジスティクスマネージャーに転職した経験がありますが、短期間で成果を残しやすいと感じました。

そのような物流企画のやりがいや求められるスキルについて解説していきます。

 

物流企画の仕事は難しい(はず)

物流企画では、メーカー/商社/小売りなどの荷主企業の物流部門において物流ネットワークの設計を行う部門ですので、物流業界の中でも最上流の仕事と言えます。

それでは物流ネットワークの設計とは、どのようなことをするのでしょうか?

 

大雑把に言うと、物流センターの配置と広さを決めて、そこに出入りする輸送の輸送モードを決めることです。

ここでいう物流センターとは、在庫型センターだけでなく、在庫を置かずに荷揃えをするだけの通過型センターも含みます。

 

実は物流ネットワークの最適化というのは、とてつもなく難しい問題です。

まず、顧客の位置や物量が常に変わらないという会社は滅多にないと思いますので、そのたびに最適な物流ネットワークは変わるはずです。

しかし、物流センターというのはそんなにしょっちゅう動かせるものではありませんので、将来を見込んだ概算で決めているのが実情です。

 

物流センターの広さもそうです。

物量に応じて賃借する倉庫面積を機動的に増やしたり減らしたりすることは困難ですので、倉庫スペースには常に余裕を持たせるしかありません。

また、物流センターの必要な広さは、在庫管理(在庫コントロール)の方法によって全く変わってきます。

数理的な方法によって適正在庫にコントロールできている会社は少なく、大抵は目標在庫日数をザクッと決めるだけのコントロールをしています。

それだけでも担当者によって在庫量が変わってくることは想像がつくでしょう。

例え数理的な方法により適正在庫にコントロールしていても、発注間隔を変えたり、発注リードタイムが変わることによっても、容易に在庫量は変わってしまいます。

【参考】

発注間隔を1日短くすれば、どれだけ在庫削減できるのか?

リードタイムを1日短くすれば、どれだけ在庫削減できるのか?

 

例えば、ある商品を仕入れるのに週3日の発注で、発注から3日のリードタイムがかかっていたとします。

ところが、もっと安い仕入れ先が見つかり、毎日発注できて、リードタイムも2日に短縮できたとします。

このケースでは、場合によっては在庫量を半分近くに減らせます。

 

このように、最適な物流ネットワークというのは常に変動しますので、今の物流ネットワークが最適ということはまずありません。

 

また、このような条件の変動を別にして、仮にすべての条件が固定だと仮定しましょう。

そうだとしても、最適物流ネットワークを数理的に求めることは、組み合わせの数が膨大なため、とてつもない労力を要します。

どれくらいの労力かと言いますと、場合によってはスーパーコンピュータを使っても何百年もかかるくらいです。

ですので、数学的にロジカルに求めたと言っても、実際には近似計算で妥協しているにすぎません。

 

物流企画に必要なスキルとは

このように物流ネットワークを最適化することはとても難しいのですが、どのようなスキルが求められるのでしょうか?

物流センターのコスト構造や、輸送モードによる料金体系の違いなどの基本的な物流知識があることは当たり前として、数学スキルはあった方が良いでしょう。

 

例えば、物流センターの広さをどのように決定するかを考えてみます。

最も重要になってくるのは在庫量をどう見積もるかです。

まず安全在庫はアイテムごとの毎日の出荷量データから統計的に求めます。

【参考】

安全在庫の計算式と意味をわかりやすく解説

しかし、これはあくまでも日々の出荷量の変動を吸収するためのバッファーにすぎません。

別に、発注してから次の発注をするまでの期間に出荷されるであろう量を加える必要があります。

発注間隔が3日であれば、その間の出荷予測量を加えるのです。

ここでも過去データからどのような考え方で予測出荷量を求めたかが、別の人が見ても分かるようにロジカルに式で残しておく必要があります。

【参考】

適正在庫の計算式をわかりやすく解説

 

このようにしてセンターに置く在庫量を求めた後は、それを置くのにどのくらいのスペースが必要かを見積もる必要があります。

パレットに載せてパレットラックに保管するのであれば、各アイテムがパレットに何箱載せられるかのデータを基にパレット数を割り出します。

次に、何段のパレットラックにするかを決定する時には、倉庫の天井高の仮定を置いた上で、フォークリフトのマスト(最大何mまで貨物を持ちあげられるか)の違いによる価格差なども考慮した方が良いでしょう。

【参考】

倉庫レイアウトの設計方法【平置き】

倉庫レイアウトの設計方法【パレットラック】

 

また保管エリア以外に荷捌きエリアの広さを決定する際も同様です。

入出庫頻度や量の仮定を置いて、後で誰が見ても分かるように計算根拠を残しておく必要があります。

この入出庫頻度や量は、発注の仕方によっても変わってきますので、保管量を決めた時の仮定と矛盾のないようにしておかないといけません。

 

また輸送コストの見積りにおいても然りです。

物流センターに入荷するための輸送の量や頻度は発注の仕方の影響を受けます。

ここでも保管量を決めた時の仮定と同じにして輸送コストを見積もる必要があります。

このように数学で論理的に考えることが、物流ネットワークの設計、ひいては物流企画の業務には重要になってきます。

 

物流企画後のキャリアの描き方

このように物流企画の仕事は否が応でも数学で論理的に考えるスキルが身に付きます。

また、物流の最上流の業務を経験できますので、その後のキャリアの選択肢が広がります。

 

物流会社は顧客が設計した物流ネットワークの一部だけ、例えば物流センターだけとか、ある区間の輸送だけを請け負うというだけでは、他社との差別化ができないため生き残るのが難しい時代になってきました。

そのため、顧客から物流データを開示してもらい、自分達の物流アセットを有効活用した物流ネットワークを提案することで、他社との単なる価格競争に陥らないような提案をすることに益々注力するようになっています。

これは3PL(サードパーティロジスティクス)と呼ばれています。

これらの提案を作ることは、荷主企業の物流企画の業務そのものですね。

ですので、荷主会社で物流企画を経験した人は、物流会社からすると喉から手が出るほど欲しいのです。

更に、その会社が自動車業界医薬品業界などの規模が大きく、業界特有のノウハウが必要な業界に属していれば、その業界のエキスパートとして益々求められるでしょう。

 

同じような文脈で、物流コンサティング会社への転職も有利です。

 

また外資系ブランド会社のロジスティクス/SCMマネージャーへの転職もし易いでしょう。

 

このポジションは物流に詳しい物流会社が有利なようにも思えますが、荷主会社で物流企画を経験した人の方が上流業務ができるということで求められるケースが多いのです。

求人によっては、物流会社からの応募を明確に断っている求人もあります。

どうしてもその会社に入りたいのであれば、物流会社からでも応募できる荷主会社の物流部門もそれなりにありますので、一旦そのような会社を挟んでチャレンジしてみるのも手でしょう。

 

物流企画を経験することは後々のキャリア形成に大いに役立ちますので、大変お薦めの職種です。。