フォワーダーの各国法人間での国際輸送費の請求フローはどうなっているのか?

2022年11月6日

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意外と複雑な各国間の請求フロー

前回の記事(フォワーダーの各国法人間でのプロフィットシェアはどうやっているのか?)で、国際輸送では複数国法人間の共同作業になるため、各国の取り分を決めるプロフィットシェアのルールが必要になることを解説しました。

フォワーダーの各国法人間でのプロフィットシェアはどうやっているのか?

そして、その類型として

  1. 粗利益を折半する方法
  2. 業務負荷に応じて利益配分する方法

の2種類に大きく分けられることもお話ししました。

 

今回はそれぞれの方法における各国間の請求フローについてみていきます。

顧客への請求や船社からの仕入れをどの国でするかによって

  1. マスタープリペイド/ハウスプリペイド
  2. マスターコレクト/ハウスコレクト
  3. マスタープリペイド/ハウスコレクト
  4. マスターコレクト/ハウスプリペイド

の4種類のパターンがあります。

フレイトプリペイドとコレクトとは?マスタB/LとハウスB/Lそれぞれについて解説

この中には結構複雑な請求フローもありますので、順に見ていきましょう。

 

粗利益を折半するプロフィットシェアでの請求フロー

顧客への売値が300ドル、船社からの買値が200ドルで粗利益が100ドルの場合、各国の取り分をどのような請求フローで確定させるかを見ていきます。

 

マスタープリペイド/ハウスプリペイドの場合

この場合は積み地国法人が船社からスペースを200ドルで仕入れて、それを顧客に300ドルで売るので、手元に100ドルの粗利益が残ります。

このうちの半分である50ドルをプロフィットシェアとして揚げ地国法人に送金すれば完了です。

 

マスターコレクト/ハウスコレクトの場合

この場合は揚げ地国法人が船社からスペースを200ドルで仕入れて、それを顧客に300ドルで売るので、手元に100ドルの粗利益が残ります。

このうちの半分である50ドルをプロフィットシェアとして積み地国法人に送金すれば完了です。

 

マスタープリペイド/ハウスコレクトの場合

この場合は少し複雑です。

船社への200ドルの下払いは積み地国で行う一方、顧客からの売上金300ドルは揚げ地国に入るため、粗利益100ドルがどちらの法人にも残らないからです。

このような場合には、営業して顧客を獲得した国の法人に一旦売上とコストを集めます。

例えば揚げ地国法人が獲得した顧客であれば、揚げ地国法人に売上とコストを集めます。

売上金は顧客から入金されるからいいのですが、コストの200ドルは積み地国法人が支払っています。

ですので、揚げ地国法人から積み地国法人に200ドルを支払うことにより、揚げ地国法人のコストにします。

すると揚げ地国法人で粗利益が100ドル残りますので、このうちの半分をプロフィットシェアとして積み地国法人に送金します。

まとめると次のようになります。

 

逆に積み地国法人が獲得した顧客であれば、積み地国に売上とコストを集めますので、次のような請求フローになります。

 

積み地国から揚げ地国に対して50ドル、揚げ地国から積み地国に対して300ドルの債務ができますが、相殺してネット金額の250ドルを揚げ地国から積み地国に送金することになります。

 

マスターコレクト/ハウスプリペイドの場合

この場合も顧客を獲得した国に売上とコストを集めます。

揚げ地国が獲得した顧客であれば、次のような請求フローになります。

 

逆に積み地国が獲得した顧客であれば、次のような請求フローになります。

 

業務負荷に応じて利益配分するプロフィットシェアでの請求フロー

次にもう一つのプロフィットシェアのやり方である、業務負荷に応じて利益配分する方法における請求フローを見てみましょう。

このやり方は、積み地国と揚げ地国の業務負荷に応じて取り分を配分することと、案件を獲得した国に営業インセンティブを支払うことに特徴がありました。

従って、案件獲得国は始めからはっきりさせておく必要があります。

 

以下の例では、プロフィットシェアの配分比率は

案件獲得国:積み地国:揚げ地国=2:6:2

とします。

 

マスタープリペイド/ハウスプリペイドの場合

この場合は積み地国に売上とコストが立ち、粗利益の100ドルが手元に残ります。

まず積み地国が獲得した案件である場合は、この中から揚げ地国に20%支払うだけです。

 

次に、揚げ地国が獲得した案件である場合を見てみましょう。

まず積み地国にある売上とコストを、すべて揚げ地国に集めます。

すると粗利益100ドルが揚げ地国に残りますので、この中から積み地作業料として60%を積み地国に支払います。

まとめると次のようになります。

 

一方、案件獲得国がどこであるにも拘わらず、売上とコストは常に積み地国に集めるという考え方もあります。

その方が、案件ごとに売上とコストが集まっている国を探す手間が省けるためです。

売上とコストが集まっているということはその案件の採算性が分かりますので、常に積み地国に売上とコストが集まっていれば、グローバルで収益管理をしたい場合には積み地国のデータ、つまり輸出データだけを見れば済むことになり都合が良いのです。

マスタープリペイド/ハウスプリペイドの場合は元々積み地国に売上とコストが集まっていますので、揚げ地手数料を20%、営業手数料を20%揚げ地国へ支払えば完了です。

 

マスターコレクト/ハウスコレクトの場合

この場合は揚げ地国に売上とコストが集まっていますので、揚げ地国が案件獲得国であれば、粗利益100ドルの中から積み地作業料として60ドルを積み地国へ支払えばOKです。

 

しかし、グループのポリシーとして収益管理をやり易くするために積み地国に売上とコストを集めるということにするならば、次のような請求フローになります。

 

もし積み地国が案件を獲得したのであれば、次のような請求フローになります。

 

マスタープリペイド/ハウスコレクトマスターコレクト/ハウスプリペイドの場合

これらの場合についても、案件獲得国積み地国のどちらかに売上とコストを集めた上で、必要な手数料を相手国に支払うという点は同様ですので省略します。

 

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