【ルーレットの赤黒ベットで勝てる確率は?】理論値をマルコフ連鎖で計算

2024年3月12日

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ルーレットの赤黒ベットは当たる確率がほぼ50%です。

Aさんは1枚のチップが20ドルのカジノで100ドル分、つまり5枚のチップを購入しました。

Aさんはルーレットの赤黒ベットでチップを毎回1枚ずつ賭け、200ドル、つまりチップが10枚になったら現金化して利益を確定するつもりです。

この時、Aさんが予定通り200ドルを得られる確率は何%でしょうか?

 

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ルーレットの赤黒ベットとは?

ルーレットにはまたは黒色で塗られた1から36までの数字の他に、緑色で塗られた00があり、玉が落ちる場所が合計で38か所あります。

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これはアメリカンルーレットと呼ばれます。

これとは別にヨーロピアンルーレットと呼ばれる00がないタイプのルーレットもあります。

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今回はアメリカンルーレットとして話しを進めます。

1から36までの数は赤もしくは黒色ですが、赤色も黒色も18個の数字があります。

赤黒ベットとはプレーヤーは赤もしくは黒に賭けるので当たる確率は50%に思えますが、緑色の0と00が曲者で、プレーヤーはここには賭けられません

従って当たる確率は

18÷38=0.474

と50%より少し低い確率になります。

逆に外れる確率は

20÷38=0.526

と50%より少し高い確率になります。

 

ルーレットで勝てる確率をマルコフ連鎖で計算

状態遷移図を描く

手持ちのチップの枚数を状態とすると、状態遷移図は次のように書くことができます。

 

気を付けるべきは10です。

まず手元に1枚しかチップがない場合を考えてみましょう。

この場合、外れると0枚になります。

外れる確率は52.6%なので1から0に遷移する確率は52.6%で、0に遷移したら破産でゲーム終了なのでどこにも遷移しません。

つまり0から0に遷移する確率は100%です。

 

また、手元に9枚のチップがある場合には当たると10枚になります。

当たる確率は47.4%なので9から10に遷移する確率は47.4%で、10に遷移したら利益を確定させてゲーム終了なのでどこにも移動しません。

つまり10から10に遷移する確率は100%です。

 

このように次にどこにも遷移しない状態を吸収状態(absorbing state)といいましたね。

またその他の状態、すなわち1から9の状態は吸収状態に遷移する可能性があるため、すべて一時的(transient)です。

従って、このマルコフ連鎖は吸収マルコフ連鎖(Absorbing Markov Chain)です。

 

遷移確率行列を書く

次に、このマルコフ連鎖の遷移確率行列を書いてみましょう。

今の状態を縦軸(行)に、次の状態を横軸(列)に書いて、その交点に遷移確率を書くと次のようになります。

 

吸収マルコフ連鎖に定式化する

次にこの遷移確率行列を吸収マルコフ連鎖の定理が使えるように並び順を変えます。

そのためには一時的な状態(Transient statesを先に、吸収状態(Absorbing statesを後に書きます。

 

そして、行/列ともに「一時的な状態」と「吸収状態」で区切って、4つの部分行列に分けます。

これで部分行列Q、R、Iができたので、

(Ⅰ-Q)-1R

を計算すれば、その行列の(i,j)成分が「一時的な状態」iから「吸収状態」jへ遷移する確率になります。

【吸収マルコフ連鎖】2か月遅延の売掛金が回収不能になる確率は?

 

100ドルを200ドルに増やせる確率の理論値

この定理を使って、Aさんが200ドルを得られる確率はどのように求められるのでしょうか?

Aさんの元手は100ドル、つまりチップ5枚なので、最初の状態iは5です。

知りたいのは、そこから200ドルに増える確率、つまりチップが10枚になる確率なので、遷移先の状態jは10ですね。

そしてこのj=10の状態は、この先どこにも遷移しない吸収状態です。

 

一方、

(Ⅰ-Q)-1R

を計算すると各行列成分は次のようになります。

 

知りたいのは5の状態から10の状態に遷移する確率ですから、この赤色で囲んだ成分の値です。

Excelで(Ⅰ-Q)-1Rを計算すると次のようになります。

横に長くなるので2つに分けて書きます。

 

クリックすると拡大します。

 

これで求まりました。

手持ち資金100ドルでルーレットの赤黒ベットをして200ドルまで増やせる確率は37%です。

3回に2回くらいは元手の100ドルをすべて擦ってしまうということです。

 

100ドルを400ドルに増やせる確率の理論値

ここからは応用問題です。

Aさんが欲張って400ドルに増えるまで賭け続ける場合の成功率はどれくらいでしょうか?

その場合は次のように計算できます。

行列が大きくなって更に横に長くなるので、4つに分割します。

 

 

 

クリックすると拡大します。

 

これで求まりました。

手持ち資金100ドルでルーレットの赤黒ベットをして400ドルまで増やせる確率は10%未満しかありません。

大きく稼ぎたい人は、軍資金を多く用意しましょうということです。

 

シミュレーションでも検証できる

「本当にその確率になるの?」

と疑い深い人のためにPythonを使ってシミュレーションしました。

興味のある方は読んでみて下さい。

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