保管コストの削減方法

2021年6月12日

日本では3期制で保管料を請求されるのが一般的です。

初めての人には分かりづらく、なぜこんな請求の仕方をするのだろうと思ってしまうのですが、昔から延々と続いている慣習です。

 

以前の記事で、貨物の入出庫のサイクルが10日周期でないと、期によって物流会社が得したり、荷主会社が得したりと、勝ち負けができてしまうことを紹介しました。

【参考】

3期制のメリットと交渉ポイント

 

つまり、入出庫サイクルが10日周期でないと合理性がありません。

勿論、3期制で請求されるよりも、1日単位で請求してもらう方が荷主会社には有利です。

しかし、それでも物流会社が3期制にしたいと言う場合は仕方ありません。

そのような場合に、荷主会社が上手に保管コストを削減する方法を、数学的に考察してみます。

 

3期制保管料の計算式

3期制は決められた10日間(1期)のうちに、1日でも倉庫に貨物があれば、10日間の保管料を請求される方式です。

簡単に保管料を計算するには、次の式を用います。

1期あたりの保管料=(前期末保管在庫数+当期入庫総数)×保管料単価 ・・・ 式1

 

1期の間にいつ入庫しても10日分の保管料を請求されますので、このような式になります。

出庫した個数は関係ありません。

次の期の「前期末保管在庫数」に反映されるからです。

 

3期制と1期制で比較してみる

月を3期に分けて請求する方式を3期制と言いますが、1月を1期として請求する方式を1期制と言います。

この場合、1日でも倉庫に貨物があれば30日分の保管料を請求されますので、当然、荷主会社にとっては不利になる方式です。

3期制よりも不利になります。

まずは、1期制と3期制を比べて、なるべく荷主会社が不利にならない方法を考えてみましょう。

 

前月末の在庫数をN個とします。

また、最初の10日間の入庫数をI1、出庫数をO1とします。

そして、次の10日間のそれをI2、O2、更に次の10日間のそれをI3、O3とします。

 

この時、3期制の場合の請求額は、式1から次のようになります。

{ N + I1 }×保管料単価 + { (N + I1 – O1) + I2 } ×保管料単価 + { (N + I1 – O1 +I2 – O2) + I3 }×保管料単価 ・・・ 式2

 

一方、1期制の場合の請求額も、式1を使うと次のようになります。

( N + I1 + I2 + I3 )×保管料単価×3 ・・・ 式3

 

1期制の保管料単価を3期制のそれの3倍と仮定して、最後に3を掛けています。

 

普通は1期制の方が3期制より請求額が高くなりますが、同じになる条件を求めたいので、式2=式3より、

{ N + I1 }×保管料単価 + { (N + I1 – O1) + I2 } ×保管料単価 + { (N + I1 – O1 +I2 – O2) + I3 }×保管料単価

= ( N + I1 + I2 + I3 )×保管料単価×3

 

の方程式を解けば良いことになります。

そしてこの式を変形すると、次のようなシンプルな式になります。

2 ( O1 + I3 ) + I2 + O2 = 0

 

左辺の変数(O1 , O2, I2 , I3 )は入出庫数ですので、ゼロ以上の整数です。

従って、これらの変数が4つともゼロである時に限り、この式が成り立ちます。

この式は、1期制と3期制の請求額が等しくなる条件でしたね。

つまり、下の図で赤丸した変数がゼロになれば、1期制と3期制の請求額が等しくなります。

見方を変えれば、1期目の入庫数と3期目の出庫数は、いくらであろうとも関係ないとも言えます。

つまり、最初の期に入庫して、それが最後の期まで出庫しないのであれば、3期制と1期制の請求額は等しくなります。

 

そして、この式にはもう一つの示唆があります。

もう一度、この式を見てみましょう。

2 ( O1 + I3 ) + I2 + O2 = 0

O1とI3に2が掛かっていますね。

これは、この4つがもしゼロでないならば、O1とI3の影響はO2とI1の影響の2倍あるということです。

もう少し噛み砕くと、最初の期に出庫があるか、最後の期に入庫があると、3期制と1期制の請求額の差はより大きくなってしまいます。

 

一般化してみる

以上を1期制とn期制との比較に一般化してみましょう。

 

この図より、n期制の場合の請求額は次のようになります。

{ N + I1 }×保管料単価 + { (N + I1 – O1) + I2 } ×保管料単価 + { (N + I1 – O1 +I2 – O2) + I3 }×保管料単価 ・・・ + { (N + I1 – O1 +I2 – O2 ・・・ +In-1 – On-1 ) + In }×保管料単価 ・・・ 式3

対して、1期制の場合の請求額は次のようになります。

( N + I1 + I2 + I3 ・・・ +In )×保管料単価×n ・・・ 式4

 

式3=式4として、式を整理すると、

(n-1) (In + O1 ) + (n-2) (In-1 + O2 ) + ・・・+ I2 + On-1 = 0

となります。

 

これから次のことが分かります。

  1. 最初の期の入庫と最後の期の出庫以外の入出庫数がゼロならば、1期制とn期制の請求額は同じになる
  2. 1以外の場合は1期制の方が請求額が大きくなるが、その影響は(In + O1)、(In-1 + O2)、・・・(I2 + On-1 )の順に比例的に小さくなる

 

つまり、最初の期に出庫があることと、最後の期に入庫があることが一番良くありません。

次に良くないのは、2番目の期に出庫があることと、最後から2番目の期に入庫があることです。

一番影響が小さいのが、2番目の期に入庫があることと、最後から2番目の期に出庫があることです。

そして、最初の期の入庫数と最後の期の出庫数は、影響しません。

以上のことが導かれました。

 

まとめ

一般化した方程式は、1期制とn期制の比較でしたが、これはnを10とすれば、3期制と日割り制の比較になります。

日割り制とは、保管料を1日単位で請求する方式です。

1日しか保管していなければ1日分、2日保管していれば2日分請求するということです。

海外ではこの方式が一般的です。

 

この日割り制で請求してもらうのが荷主会社としては一番いいのですが、どうしても3期制でないと嫌だと物流会社が言う場合に、少しでも損しない方法を考察してきました。

それは、

  1. できるだけ10日間の期の最初の方で入庫し、最後の方で出庫すること
  2. 逆に、期の最初の方で出庫し、最後の方で入庫するのは避けるべし。さもなければ、損は比例的に大きくなる

という、言われてみれば当たり前の結果になったのでした。

 

入出庫のタイミングを自らコントロールするのは中々難しいと思いますが、期の区切り方を入出庫のタイミングに合わせるくらいの交渉はしてみてはいかがでしょうか。