【倉庫保管料のよくある間違い】なぜ保管料の計算に出庫量は関係しないのか?

2024年3月14日

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日本での倉庫保管料の計算には三期制がよく使われます。

三期制保管料の計算方法についてはネットにたくさんの解説記事があり、次のように書かれています。

 

保管料=(期末在庫量+期中入庫量)×保管料単価

 

でも、なぜこのような計算式になるのでしょうか?

なんで期中出庫量を引かないんだ。詐欺だ!

と思う荷主の方も多いと思います。

もしくは、

それが慣習なのだから仕方がない

と盲目的に従っている方もいるでしょう。

なぜ出庫量は関係ないのでしょうか?

本記事ではその疑問を解決します。

 

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保管料を在庫数のみから計算するのは間違い

在庫量は

期末在庫量=期首在庫量+期中入庫量-期中出庫量

で計算できます。

」は1日の場合もあれば、3日の場合や1週間等、いろいろ好きなように設定できます。

1期を10日としたのが三期制です。

1期を1日とした場合には、

夜の在庫量=朝の在庫量+その日の入庫量-その日の出庫量

ということになります。

例えば、次のようになります。

 

この時、よくある勘違いが、期末在庫量に保管料単価を掛けた値が保管料になると考えてしまうことです。

例えば保管料単価が10円/個・日だとすると、10日間の保管料は

保管料=10円/個・日×(610+550+・・・+500)個・日=56,500円

ということになります。

しかし、もし物流会社がこのように保管料を計算して荷主に請求していたら、その物流会社は利益を出すのに相当苦労することでしょう。

なぜでしょうか?

 

課金在庫量は在庫量+入庫量で計算する

正解は、次のように課金対象となる在庫量を計算します。

 

そして、10日間の保管料は次のようになります。

保管料=10円/個・日×(650+610+・・・+540)個・日=61,300円

 

さっきの計算より、約8%多くなりましたね。

違いは、課金在庫量を

課金在庫量=期首在庫量+期中入庫量-期中出庫量

で計算するか

課金在庫量=期首在庫量+期中入庫量

とするかの違いです。

 

「出庫したら在庫量が減るのに、それが保管料に反映されないのは不公平ではないか?」

「たくさん出庫した日とほとんど出庫しなかった日の保管料が同じなんておかしいだろ?」

という荷主の声が聞こえてきそうですが、これが正しいのです。

 

なぜ出庫量は関係ないのか?

テーマパークの1日券と同じこと

テーマパークに行くと、1日フリーパス券がありますね。

某テーマパークでは1万円で1日フリーパス券を販売しているとしましょう。

更に、このテーマパークは24時間営業していて、午前0時をまたいで入園していたら1日分の料金が加算されるとしましょう。

例えば1万円のフリーパスを買って14時に入園した人が、日をまたいで夜中の2時までいたら、退園時に1万円を追加で支払います。

 

このような状況下で、どのように入園料を計算するか考えてみましょう。

まず、午前0時時点で園内にいる人数分は入園料を確保できますね。

100人いれば、100万円は確定です。

あと、その日に入園してきた人数分も入園料を確保できます。

200人来れば200万円です。

合計、その日の入園料は300万円になりますね。

前の日から夜通しいた人のうち何人帰ったかとか、その日に入場してきた人のうちの何人がその日のうちに帰ったかということは関係ありません。

 

入庫量=入園者数で在庫量=園内の人数

これを先ほどの表で表すと、次のようになります。

 

保管料の考え方もこれと同じです。

入園者を貨物、テーマ―パークを倉庫と考えれば、入園料も保管料も同じように計算されます。

退園者数が入園料と関係ないように、出庫量は保管料と関係ありません

 

倉庫保管料の性質

動きが速い貨物の保管料は高くなる

とはいえ、感覚的には出庫量を引いた後の期末の在庫量が保管料と関係しているように思えます。

そこで、この感覚値と実際の保管料の比率が、貨物の動きの速さ(在庫回転率)によってどれくらい変わってくるかをシミュレーションしてみました。

スタートの在庫量は先ほどと同じで、入出庫量が5倍になった場合と10倍になった場合のシミュレーション結果は次のようになりました。

入出庫量が5倍になった場合

 

入出庫量が10倍になった場合

 

入出庫量が多くなるほど、感覚値と実際の保管料との差が広がりますね。

自社の貨物の在庫回転数が上がるほど、目に見える在庫量に比べて、物流会社から請求される保管料は割高に感じるようになります。

 

三期制の保管料は荷主が損をする

以上の保管料の計算方法は、1期が1日でも10日(三期制)でも15日(二期制)でも同じです。

では、1期の長さの違いによって保管料はどれくらい変わるのでしょうか?

先ほどの在庫回転数が中くらいの場合について、三期制になると保管料がどれくらい変わるのかを見てみましょう。

 

三期制の場合の課金在庫量=期首在庫量+10日間の入庫量

=500個+2,400個=2,900個

課金在庫量はこのように計算できますので、10日間の保管料単価が10円/個・日の10倍だとすると、

三期制の保管料=2,900個・10日×100円/個・10日=290,000円

という結構な金額になります。

 

ちなみにこれが日単位の保管料(1期が1日の場合の保管料)では、

日単位の保管料=10,650個・日×10円/個・日=106,500円 

となります。

 

三期制にすると保管料が3倍近くも!高くなってしまうのです。

この倍率は、在庫回転率が低いともっと小さくなり、高いともっと大きくなることは先に見た通りです。

いずれにしても、日単位の保管料に比べて三期制の保管料は確実に高くなります。

これは物流業者が少しでも儲かるようにするための知恵ですが、荷主の立場では注意した方がよいでしょう。

複数の物流業者から相見積もりをとっている場合、片方が日単位で、もう片方が三期制の場合、三期制の保管料単価は10日分の単価だからといって、それを10で割ったものと日単位の単価を比べてはいけません。

そうすると三期制の方が安いと勘違いしてしまいます。

自社の貨物の在庫回転率を考慮した保管料のシミュレーションが不可欠です。