【ディシジョンツリー分析】テスト販売にかけるコストはいくらが妥当か?

2023年10月18日

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物流会社Aでは、既存顧客向けに提供している物流可視化システムをアップグレードして、SCMシステムとして外販することを計画しています。

経営陣は3PLから4PLに脱却するための切り札と考えているものの、システムアップグレードにかかるコストは5億円で、成功する確率は全く未知数で50%と見ています。

しかし、もしプロトタイプのシステムを作ってテスト販売して評判が良ければ、このSCMシステムは100%成功すると確信しています。

逆にテスト販売の評判が悪ければ、SCMシステムが成功する確率は10%と見ています。

テスト販売が成功する確率も全く未知数で50%です。

SCMシステムが成功すれば10億円の売上が見込め、成功しなければ売上は2億円しか見込めません。

プロトタイプを作ってテスト販売するのにかけられるコストはいくらまでが妥当でしょうか?

 

このような意思決定はディシジョンツリーを使えば合理的にできます。

ディシジョンツリーは説明するよりも実際にやってみる方が理解しやすいので、一緒にやってみましょう。

 

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ディシジョンツリーで表現する

上の状況では、自分で決定できることできないことがあります。

テスト販売をするか?しないか?

本販売をするか?しないか?

は自分で決定できることです。

一方、

テスト販売が成功するか?失敗するか?

本販売が成功するか?失敗するか?

は自分で決定できません。

自分ではコントロールできないことです。

 

ディシジョンツリーでは自分で決定できることは決定ノード■、自分でコントロールできないことは可能性ノード●で表し、下記のように表現します。

 

◀は終点で、この場合は9つあります。

それぞれの終点では、コストをいくら費やして売上がいくら上がったか、つまり利益が確定します。

例えば一番上の終点では、テスト販売する⇒成功する⇒本販売する⇒成功するという経路をたどっています。

今、テスト販売にかかるコストはいくらが妥当かを知りたいのでこれをx円とすると、

テスト販売する(x円のコスト)⇒成功する⇒本販売する(5億円のコスト)⇒成功する(10億円の売上)

となり、-x円-5億円+10億円の利益が上がったことがわかります。

 

上から二番目の終点では、

テスト販売する(x円のコスト)⇒成功する⇒本販売する(5億円のコスト)⇒失敗する(2億円の売上)

ですので、-x円-5億円+2億円の利益になります。

他の終点についても同様に利益を計算すると、次のようになります。

 

後にわかりやすいように、4つの可能性ノードに番号を振ってあります。

 

可能性ノードの期待金額価値を求める

このようにディシジョンツリーを描いた後は、終点から頭に向かって金額価値を逆算していきます。

この計算の仕方には大きくわけて2種類あります。

可能性ノードの計算と決定ノードの計算です。

まずは可能性ノードの計算方法から見ていきましょう。

1番の可能性ノードから行きます。

 

このノードでは、本販売が成功する場合と失敗する場合、それぞれの利益額を表しています。

成功する確率は100%、失敗する確率は0%なので、期待値

1*(-x-5億+10億)+0 *(-x-5億+2億)

=-x+5

と計算することができます。

従って、この可能性ノード1には-x+5億円の期待金額価値があることがわかります。

わかりやすいように、下記のようにノード1の上に期待金額価値を書き入れておきます。

 

もう一つ、2番の可能性ノードについても計算してみましょう。

 

同じように期待値の計算をすると、次のようになります。

0.1*(-x-5億+10億)+0.9 *(-x-5億+2億)

=-x+2.2

従って、この可能性ノード2には-x+2.2億円の期待金額価値があることがわかります。

同様に計算すると、可能性ノード3には1億円の期待金額価値があります。

 

これで最初のディシジョンツリーは、次のように短くなりました。

 

決定ノードは最大価値を選ぶだけ

次に決定ノードについても、まとめていきます。

決定ノードでは金額価値が高い方を選ぶだけですので、そのように単純に判断するだけで大丈夫です。

例えば一番上の決定ノードでは、-x+5億と-xを比べると前者の方が明らかに大きいことがわかります。

2番目の決定ノードでも、明らかに-x+2.2億の方が-xより大きいですね。

一番下の決定ノードはもっと明らかで、0より1億の方が大きいに決まってますね。

従って、次のようにまとめられます。

 

すべてのノードの価値を求める

次に出てくるのは可能性ノードなので、先にやったやり方で期待金額価値を求めると次のようになります。

 

最後に決定ノードが一つ残りました。

2つの値-x+3.6億1億はどちらが大きいでしょうか?

それは変数xの大きさ次第ですね。

 

テスト販売の期待価値を求める

テスト販売する方が金額価値が高い、平たく言えばテスト販売する方がお得になる条件は、

-x+3.6億>1

です。

 

ここで思い出して下さい。

変数xはテスト販売するための費用です。

ですからこの不等式をxについて解けば、テスト販売する方がお得になるようなテスト販売のコストが求まりますね。

これを解くと、

x<2.6

です。

つまり、テスト販売の費用が2.6億円以内に収まるならばテスト販売はすべきということがわかるわけです。

 

まとめ

  1. ディシジョンツリーは大きく可能性ノード決定ノードから構成される
  2. 知りたい金額をxと置いて、各終点における金額価値を計算する
  3. 始点に向かって金額価値を逆算していく
    1. 可能性ノードは確率から期待金額価値を計算する
    2. 決定ノードは金額価値が高い方を選ぶ
  4. 最初の決定ノードでxの不等式ができるので、それを解けばxが求まる