3期制のメリットと交渉ポイント

2021年6月12日

前回の記事では週単位の保管料が出荷特性によって大きく変わってくることを解説しました。

【参考】

倉庫コストの削減方法

 

またその理屈を逆手に取って、荷主会社、物流会社それぞれの立場で料金交渉を有利に進めるためのテクニックを紹介しました。

今回はそれを3期制や1期制にまで拡張して、更に深堀りしていきます。

この記事を読み終える頃には、貨物の出荷特性に応じた料金体系に変えたくなるでしょう。

 

出荷パターン別に調べてみる

倉庫保管料における3期制というのは、1か月を1~10日、11~20日、21日~月末の3つの期間に分けて、それぞれの期間に1日でも貨物が入荷すれば10日間保管したものとみなして保管料を請求するやり方です。

前回の記事で触れた週単位制で、期間を7日間から10日間に変えただけとも考えられます。

 

従って、その性質も週単位制と基本的には同じです。

入荷した貨物がすべて10日後に出荷されれば、3期制で請求される保管料と日単位制で請求される保管料は同じになりますが、入荷したその日に出荷されれば3期制で請求される保管料は日単位制で請求される保管料の10になります。

また入荷した貨物がその後10日間に渡って均等に出荷される場合には、3期制で請求される保管料は日単位制で請求される保管料の1.82になります。(週単位制では1.75倍でした)

 

では入荷した貨物がその後20日間に渡って均等に出荷される場合はどうでしょうか?

これは次のように計算できます。

 

200箱入荷して、それが20回に分けて出荷されるものと仮定すると、

日単位制での請求額=10箱×10円/箱・日×1日+10箱×10円/箱・日×2日+20箱×10円/箱・日×3日+....+10箱×10円/箱・日×20日=21,000

 

これに対して3期制の場合には、初日から10日間の間に出荷される100箱には10日間の保管料を、11日目から20日目までに出荷される100箱には20日間の保管料を請求できますので、

3期制での請求額=100箱×100円/箱・期×1期+100箱×100円/箱・期×2期=30,000

となります。

その差は1.43にまで縮まります。

 

ちなみに、入荷された貨物が30日間に渡って均等に出荷されたとすると、その差は1.30と更に縮まります。

これは考えてみれば当たり前のことで、保管期間が長いほど10日間の影響が薄まりますので、3期制と日単位制での請求額の差が小さくなります。

ここまでは直観でも想像がつくことですが、更に面白い性質があります。

 

下の表を見て下さい。

これは4つの出荷パターンを示した表で、先ほどの例で20日間に渡って均等に出荷されるパターンはケース3に当たります。

驚くことに、これらの4つのパターンでは、すべて3期制での請求額は日単位制での請求額の1.43になります。

これは何を意味しているのでしょうか?

 

実はケース1とケース4にその意味が凝縮されています。

ケース1では10日間の期の終わりと始まりに同数の出荷があります。

ケース4では10日間の期の真ん中に同数の出荷があります。

そしてケース2はケース1の拡張系、ケース3はケース1及び4の拡張系ということができます。

つまりこのように期の周期に同期した出荷パターンであれば、すべて同じ倍率になるのです。

 

これは保管期間を30日間に拡張しても同じです。

下表のすべてのパターンにおいて、3期制での請求額は日単位制での請求額に対して同じ倍率になります。

違うのは20日間だと1.43倍であったのが、30日間だと1.30になる点だけです。

但し気を付けないといけないのは、期の周期に同期した出荷パターンであっても、偏っていてはいけないことです。

 

下の表を見て下さい。

上の出荷パターンでは期の中央に左右対称に出荷があります。

一方、下の出荷パターンでは期の後半に出荷が偏っています。

このような場合には1.43倍にはなりません。

計算すると1.07になることが分かります。

期の後半に出荷が偏っているということは、日単位制での請求額に近づくので倍率が小さくなるのです。

(期の最終日に100箱が出荷される究極のパターンでは倍率が1倍になることを思い出して下さい)

 

まとめ

ここまで分かったことを整理すると次のようになります。

  1. 期の周期と同期した左右対称の出荷パターンの場合は、出荷量の大きさに関わらず同じ倍率になる
  2. 期の周期と同期していても、期の後半に偏った出荷パターンの場合は倍率が小さくなり、期の前半に偏った出荷パターンの場合は倍率が大きくなる(しかし倍率は変動せず安定した値になる)
  3. 保管期間が長くなるほど倍率は小さくなる

つまり3期制というのは、出荷パターンが10日間周期でないと合理性がないということです。

多くの会社では週単位の出荷パターンになっていますが、その状況で3期制を採用すると、倍率が安定しないため、請求保管料の変動が大きくなります

請求保管料とは荷主にとってはコスト、物流会社にとっては売上ですので、その時々で両者の間に勝ち負けができてしまいよろしくありません。

にも拘わらず日本では昔からそうしているからという理由だけで、3期制を採用しているケースが少なくありませんね。

出荷パターンが月単位の周期になっているケースは多いため、その場合は1期制は理にかなっていますが、保管期間(在庫日数)が短い場合は荷主会社にとって不利になります。

(但しきちんと倍率を計算した上で、その倍率に応じた割引を受けられれば問題ありません)

 

海外では合理的な考え方をしますので、週単位制で保管料を請求することはあっても、まともな荷主は3期制ではまず納得しないでしょう。

以上を考慮すると、荷主会社としての戦略は次のようになります。

  1. 出荷パターンが週周期なのに3期制を薦める理由を問いただし、日単位制を要求する
  2. それでも3期制を薦めてくるなら、均一出荷パターンの場合の倍率で日単位制保管料を割り引くことを要求する

例)20日間の均一出荷の場合の倍率は1.43倍なので、日単位制の保管料が1日10円であれば、10円/日×10日÷1.43が3期制の保管料となる

 

逆に物流会社にとっての戦略は次のようになります。

  1. 日本では3期制が普通だし、お互い管理の手間を少なくできるメリットもあるという理由で3期制を薦める(苦しい言い訳だがこれしかない)
  2. 均一出荷パターンの場合の倍率はかなり高いので、これを荷主会社に開示するのは得策でない。適当に1.2倍くらいの倍率で割り引いて様子を伺う。もしくは日単位制の場合の保管料を開示しなければ、倍率の話題になることもない

 

「騙すな、ごまかせ」

ですね。

でも数学スキルのある荷主はごまかせないのです。