【荷主/物流会社別】保管料の交渉方法|請求体系の違いによる損得を理解する
物流会社は保管料を固定で請求したい
倉庫の保管料金にはいろいろな課金体系があります。
倉庫が常に満杯に近い状態であるのが物流会社にとっては理想ですが、そんなに都合の良い顧客は滅多にありません。
倉庫がスカスカになって利益がなくなるリスクを抑えるために、物流会社はなるべく固定料金で保管料を収受しようとします。
それに対して荷主会社は、空いているスペースについては保管料を支払いたくありませんので、保管料はなるべく変動料金にしようと考えます。
(多少割高になってもいいから予算オーバーにならないように保管料を固定化したいと考えるサラリーマン思考の荷主会社もいます)
変動請求と固定請求の間にある様々な保管料の請求体系
そして、変動料金制の中にもどの期間単位で考えるかにより、いくつかの種類があります。
一番短いのは日単位制で、それに続いて週単位制、3期制(10日単位)、2期制(15日単位)、1期制(1か月単位)などがあります。
週単位制ですと、1週間のうち1日でも保管していれば1週間分の保管料金を取られてしまいますので、荷主会社としては日単位で請求されるのが一番いいのですね。
でも通常は、週単位など期間が長くなるほど1日当たりに換算した保管料は安くなりますので、入出庫の頻度が少なければ期間が長い方が得になる場合もあり得ます。
では具体的に何を物差しに判断すれば良いのでしょうか?
その仕組みについて物流会社の方が上手だと、荷主会社を出し抜くことができて利益率が上がります。
逆に荷主会社の方が上手だと、物流会社をうまく使ってロジスティクスコストを下げられます。
ではその仕組みを数学で読み解いていきましょう。
請求体系の違いによる損得を理解する
ここでは日単位制と週単位制で比較してみます。
日単位制では、ある日に1個入庫して、同じ日にその貨物が出荷されたら1日分の保管料を請求します。
週単位制で同じ状況だったら、1週間分の保管料を請求します。
物流会社から見ると週単位制が有利、荷主会社から見ると日単位制が有利です。
そのため、そのギャップを埋めるために、週単位制の料金を日単位制の料金の7倍にするのではなく、ある程度割り引く必要があります。
そうでなければ、荷主会社は絶対に週単位制なんて選びません。
それではどれくらい割り引くか?
ここで物流会社、荷主会社双方の腕前が試されます。
まずは極端な例を考えてみます。
日単位制での一日当たりの保管料は1箱10円、週単位制での一週間当たりの保管料が1箱70円とします。
土曜日に140箱入庫して、次の週の金曜日にすべて出庫された場合
日単位制での請求額=140箱×10円/箱・日×7日=9,800円
週単位制での請求額=140箱×70円/箱・週×1週=9,800円
と請求額は同じになります。
次に土曜日に140箱入庫して、その日のうちにすべて出庫された場合
日単位制での請求額=140箱×10円/箱・日×1日=1,400円
週単位制での請求額=140箱×70円/箱・週×1週=9,800円
となり、週単位制の請求額は7倍も高くなります。
ですから、荷主会社は自社の在庫の動き方をきちんと把握して、それに見合った割引率を要求しないといけません。
土曜日に140箱入庫して、その日から1週間に渡って一日20箱ずつ均等に出荷された場合
日単位制で請求する場合は、土曜日に出庫する20箱は1日だけ保管、日曜日に出庫する20箱は2日間保管、月曜日に出庫する20箱は3日間保管、、、となりますので、日単位制での請求額は次のようになります。
日単位制での請求額=20箱×10円/箱・日×1日+20箱×10円/箱・日×2日+20箱×10円/箱・日×3日+20箱×10円/箱・日×4日+20箱×10円/箱・日×5日+20箱×10円/箱・日×6日+20箱×10円/箱・日×7日=5,600円
これに対して週単位制の場合には、土曜日に出庫する20箱も日曜日に出庫する20箱も、、、すべて1週間分の保管料を請求できますので、下記のようになります。
週単位制での請求額=20箱×70円/箱・週×1週×7=9,800円
その差は1.75倍にまで縮まります。
なお、この1.75倍というのは、入庫された貨物が1週間に渡り均等に出荷される場合は、いつでも成り立ちます。
その意味するところは、日単位制での一日当たりの保管料が10円である場合、週単位制での保管料は
10円/箱・日×7日÷1.75=40円/箱・週
まで割り引いて、やっと等価ということです。
ということは、荷主会社が出庫傾向について物流会社に何も情報を与えない場合には、物流会社としては均等に出庫されると考えるのが妥当ですので、この料金が最も妥当ということになります。
土曜日に140箱入庫して、土日は出荷なし、月曜日に10箱、火曜日に10箱、水曜日に20箱、木曜日に60箱、金曜日に40箱というように、木曜日に出荷のピークがある場合
日単位制で請求する場合は、月曜日に出庫する10箱は3日間保管、火曜日に出庫する10箱は4日間保管、水曜日に出庫する20箱は5日間保管、木曜日に出庫する60箱は6日間保管、金曜日に出庫する40箱は7日間保管、となりますので、日単位制での請求額は次のようになります。
日単位制での請求額=10箱×10円/箱・日×3日+10箱×10円/箱・日×4日+20箱×10円/箱・日×5日+60箱×10円/箱・日×6日+40箱×10円/箱・日×7日=8,100円
これに対して週単位制の場合の保管料は、先ほどと同じ9,800円です。
その差が1.21倍にまで縮まります。
つまり、週単位制での保管料金は、
10円/箱・日×7日÷1.21=58円/箱・週
が妥当ということになり、先ほどの40円より高くなります。
ということは、荷主会社は木曜日に出荷のピークがあるという出庫特性を物流会社に言わない方が安い料金を提示してもらえるということです。
荷主の保管料交渉方法
もっとも、これは物流会社がこの理屈を分かっていればという仮定のもとでの話しです。
実際は分かっていない場合がほとんどですので、荷主会社側としての料金交渉は次のようにするのがお薦めということになります。
- 出庫特性については物流会社から聞かれるまで言及しない
- もし物流会社が40円/箱・週以上の料金を提示してきたら、上記のロジック(1週間に渡り均等出庫される場合の割引率は1.75倍になる)を示して値下げ交渉する
- もし物流会社が出庫特性を聞いてきたら、商品によってばらつきがあるので良く分からないので、均一出庫を前提にしてはどうかと提案する
- もし出庫のピークが入庫日に近い日(入庫日が土曜日であれば日曜日や月曜日)にあれば、荷主会社としては日単位制にする方が得なので週単位制は断る
物流会社の保管料交渉方法
逆に物流会社側としては、下記のような戦略がお薦めです。
- 出庫特性は曜日変動があるのが普通なので、荷主会社が教えてくれるまでしつこく聞く
- 教えてくれなければ、できるだけ割引率が小さくなるような出庫特性を仮定する
- もし出庫のピークが入庫日に近い日(入庫日が土曜日であれば日曜日や月曜日)でも、管理の手間が少なくなる等いろいろな理由を付けてでも週単位制を薦める
まとめ
いかがでしたでしょうか?
たかが保管料ですが突っ込み処は結構あります。
週単位制での割引率は30%違うと、保管料金は約23%も違ってきます。(1÷1.3=0.77)
相手の手の内を読んで、ずる賢く交渉しましょう。