物流自動化の効果とは

2021年6月13日

スーパーのレジで「あれ、なんか安いな」と思ったことありませんか?

レシートをチェックしたら、1個打ち漏れていました。

ほとんどの人はラッキーと思っておしまいでしょう。

でも逆に1個多くレジ打ちされていたら、普通は文句言いますよね。

 

レジの方々からすると多めにレジ打ちするリスクの方が、少なすぎるよりもはるかに大きいわけです。

きちんと統計を取ったら、過少レジ打ちの間違いの方が、過大よりもはるかに多いことでしょう。

物流の現場でも同じようなことが起こります。

人は易きに流れるもの、物流自動化の隠れた効果を紹介します。

 

人件費削減効果では投資額を回収できないケース

貨物には水のような重いものから綿のように軽いものまで様々です.

ですから、輸送料金を決める時には重量とサイズの両方を見て決定します。

しかし、重量とサイズとでは物差しが違うため、そのまま比較できません。

そのため、サイズから容積重量を算出して、重量と比較できるようにします。

容積重量の算出方法は輸送モードにより大体決まっていて、次のようになっています。

 

陸上輸送

容積重量(kg)=縦(m)×横(m)×高さ(m)×280

海上輸送

容積重量(kg)=縦(m)×横(m)×高さ(m)×1,000

航空輸送

容積重量(kg)=縦(cm)×横(cm)×高さ(cm)÷6,000

 

このようにサイズを容積重量に換算後、重量と比較して大きい方を取って運賃を請求します。

この時、重量は秤で測れば簡単です。

しかし、サイズは直方体のように測り易い貨物ならまだしも、ゴルフバックのように凹凸の激しい貨物は人手で測るのに手間がかかります。

これを何とか自動化できないものでしょうか?

この際、投資採算性を評価するのに、人件費の削減額だけで投資額(自動化機器の購入価格)を何年で回収できるかという指標をよく使います。

しかし残念ながら、このサイズを測定するという行為はそれほど時間を要する作業ではありません。

ですので、余程稼働率が高くない限りは人件費の削減費だけでは減価償却費に負けてしまいます。

 

例えば次のようなケースです。

輸送会社AのM支店は、重量と容積重量の大きい方を取って輸送料金を決めています。

月間の発送件数は平均3,000件です。

そして貨物サイズを計測するのに、1貨物当たり約1分かかっています。

倉庫スタッフの人件費の平均給与が月額30万円だとしますと、1か月の人件費削減効果は62,500円にしかなりません。

もしこの自動化機器の購入価格が400万円ですと、投資を回収するのに64か月必要で、減価償却期間の60か月を超えてしまいます。

つまりこのケースでは、もっと他のメリットがないと自動化機器に投資することはできないのです。

 

見方を変えれば優良投資案件に様変わり

考えられる他のメリットとして、自動化することによる測定精度の向上があります。

人手による場合は、人によって測定値がばらつきます。

しかしそのばらつきが、大きめに測定してしまう場合と小さめに測定してしまう場合が同じくらいの確率なら、顧客への請求額には大した影響はありません。

 

ところが実際に統計を取ってみると、小さめに測定してしまう確率の方がはるかに大きく、測定値としては全体で3%の差があることが分かりました。

これは、小さめに測定しておけば顧客から文句を言われることがないからだと考えられます。

 

この会社では小口貨物を主体に取り扱っており、5kgまでの貨物が全体の80%を占めます。

また5kgまでは0.5kgごとに1,200円運賃がアップし、5kgを超えると0.5kgごとに600円運賃がアップします。

この場合、3%小さく測定することによって、顧客への請求額にどのくらいの影響があるのか調べてみましょう。

 

例として容積重量の真値が3kgの貨物を考えてみましょう。

これを人手で測定すると3%小さく測定してしまうのですから、2.91kgになります。

ということは、人手で測定して2.91kg~2.99kgになる貨物は、正確に測れる機械があれば1,200円多く請求できるということです。

2.91kg~2.99kg の貨物が2.5kg~3.0kgの貨物に占める割合は9%になります。

つまり、2.5kg~3.0kgの貨物のうち9%は1,200円多く請求できることになります。

 

また5kgの貨物で月間件数3,000個の80%を占め、5kgまでは重量レンジが9段階あるため、均等に分布していると仮定すれば、2.5kg~3.0kgのレンジには月間267個の貨物があることになります。

従って267個の9%である24個は、1,200円多く請求できますので、月間28,800円多く請求できます。

 

同様に他の重量レンジについても計算してみると、下表のようになります。

つまり月間合計で635,000円の売上増のメリットがあることになります。

先ほどの人件費削減分62,500円と比べると、10倍も多くのメリットがあるのです。

そして両者併せたメリットで計算すると、なんと設備投資額400万円がたったの半年で回収できるという優良投資案件になったのです。

 

まとめ

以上、不良案件に見えた自動化投資が、見方を変えれば優良案件に様変わりする事例を紹介しました。

単に人件費の削減効果だけでなく、このように売上増による効果の方がはるかに大きくなる場合があります。

しかも測定値の誤差がたったの3%でこれだけの効果ですから、身の回りにも同じような事例が眠っているかもしれません。

 

またこのような事例では、人間の「人は易きに流れるもの」という心理が絡んでいるケースが少なくありません。

顧客に文句を言われたくないがために安全策を取ってしまう例としては、倉庫に入荷する貨物のサイズを測る作業もあります。

また、倉庫からの出荷検品においても、多めに出荷する分には顧客は文句を言わないので、多めの出荷はスルーしてしまうかもしれません。

 

このような工程を自動化する場合には、予想以上のメリットがあるかもしれませんので、今一度見直してみると良いかもしれません。