帰り荷が見つかるまで待てる日数を一次方程式でシミュレーションする方法

2023年10月12日

トラック輸送業者において、帰り荷の確保は利益率改善に大きく貢献します。

しかし折角帰り荷が見つかっても、貨物をピックアップするために長い時間待つのでは片荷で帰った方がいいかもしれません。

それでは、どのくらい待たされるのなら片荷で帰った方が得なのでしょうか?

この問題を中学校で習った一次方程式で解いてみたいと思います。

 

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帰り荷が見つかる日数により粗利益は異なる

前提条件

ここでは問題を単純化するために、次のような状況を想定します。

  1. 自社トラックで輸送を行い、帰り荷がない場合、一泊二日かかりコストは7万円
  2. 片道輸送の場合の粗利益率は20%
  3. 復路の途中で他社の貨物をピックアップして戻ってくる場合、帰り荷の輸送料金は往路の50%に割り引くが、コストは片荷で戻ってくる場合と変わらない
  4. トラック輸送コスト全体の25%が燃料費、40%が人件費、20%が車両費

 

すぐに帰り荷が見つかった場合の粗利益

この場合、帰り荷が見つからず片道輸送だけをする場合の売上は

70,000円÷80%=87,500円

となりますので、粗利益は

87,500円-70,000円=17,500

となります。

 

もし帰り荷がタイミング良く見つかって、帰り道にピックアップして戻ってこれば、売上は

87,500円+87,500円÷2=131,250円

です。

帰り道の道中で帰り荷をピックアップできれば、追加燃料代も無視できますので、コストは70,000円で変わりません。

従って粗利益は

131,250円-70,000円=61,250

となります。

 

1日待って帰り荷が見つかった場合の粗利益

さて、ここで帰り荷がすぐにピックアップできず、1日待たないといけないケースを考えてみましょう。

この場合、燃料代は変わりませんが、人件費は1日分余計にかかってしまいます。

通常でしたら一泊二日で戻ってこれるところが、二泊三日になってしまいますので、人件費は1.5倍かかります。

 

車両費も同様です。

通常は減価償却費2日分だけを負担すればよかったところが3日分負担することになりますので、1.5倍かかります。

その他コストも同様に1.5倍かかると考えられます。

 

つまり、仮定では燃料費が全体コストの25%ですので、残りの75%は1.5倍かかるのです。

言い換えると、全体コスト70,000円の75%の0.5倍が余計にかかるということになります。

 

一泊二日で帰り荷を載せて帰ってきた場合の粗利益が61,250円でしたから、1日待って帰り荷を載せて帰ってきた場合の粗利益は,

61,250円-70,000円* 75% * 0.5=35,000

となります。

粗利益は減りますが、片荷で帰ってきた場合の粗利益が17,500円ですので、1日待ってでも帰り荷を載せてくる方が、片荷で帰ってくるよりマシということになります。

 

帰り荷が見つかるまで待てる最大日数を一次方程式で解く

それでは何日まで待てるのでしょうか?

こういう問題を一次方程式で解くには、X日待てるとします。

すると、X日待って帰り荷を載せて帰ってきた場合の粗利益は次のように計算できます。

売上・・・131,250円(何日待とうが変わりません)

燃料費・・・70,000円* 25%=17,250円(何日待とうが変わりません)

その他費用・・・70,000円*75% +70,000円*75% ÷2 *X日(2日で70,000円の25%なので、2で割ってからXを掛けます)

粗利益・・・131,250円-17,250円-(52,500円+26,250円*X日)

 

これが 片荷で帰ってきた場合の粗利益17,500円と等しくなるのですから、

131,250円-17,250円-(52,500円+26,250円*X日)=17,500円

を解けばよいことになります。

 

この一次方程式を解くと、

X=1.7

となります。

つまり、1日待っても片荷で帰ってくるよりマシだが、2日待たされるくらいなら片荷で帰ってくる方が得ということです。

 

人件費の安い国では長い日数を待てる

さて、このように一次方程式できれいに解けましたが、1日まで待てるというのは普遍の法則でしょうか?

勿論、違います。

 

先ほどの例では、トラック輸送コスト全体の25%が燃料費、40%が人件費、20%が車両費と仮定していました。

もし、トラック輸送コスト全体の50%が燃料費、10%が人件費、15%が車両費でしたらどうなるでしょうか?

ありえない仮定と思われるかもしれませんが、そうでもありません。

東南アジアのように人件費が安く、燃料費が相対的に高い国では、このようなコスト構造になるのが普通です。

 

それでは、そのような国では何日まで帰り荷を待てるのでしょうか?

先ほどと同様に貨物を待つ日数をX日とすると、帰り荷を載せて帰ってきた場合の粗利益は次のように計算できます。

売上・・・131,250円(何日待とうが変わりません)

燃料費・・・70,000円* 50%=35,000円(何日待とうが変わりません)

その他費用・・・70,000円*50% +70,000円*50% ÷2 *X日(2日で70,000円の50%なので、2で割ってからXを掛けます)

粗利益・・・131,250円-35,000円-(35,000円+17,500円*X日)

従って一次方程式は

131,250円-35,000円-(35,000円+17,500円*X日)=17,500円

となり、Xについて解くと

X=2.5

となり、2日まで待てることになります。

つまり、このようなコスト構造の国では1日多く待てるわけです。

 

まとめ

帰り荷を載せるために1日待つことは、一見、損のような感じがしますが、そうとも限らないことが一次方程式を解くことによって示せました。

今回は一番単純な例で計算しましたが、このやり方は色々な応用も可能です。

 

例えば、自社トラックが1日待つことによって、その分の輸送ができなくなり機会損失が発生する場合は、どのような一次方程式になるのでしょうか?

この場合、自社トラックの代わりに傭車で対応して、傭車の粗利益率も同じ20%であれば、方程式の左辺に粗利益額がプラスの数値で入りますので、もっと長く待てることになります。

 

また粗利益率が高ければ更に長く待てることも、この方程式から示すことができます。

これらのことは長年経験を積んでいれば、何となく感覚で分かるかもしれません。

しかし、何日まで待てるという具体的な数字を確信を持って言うことまでは難しいでしょう。

数学はこのような場面でも役に立つのです。

 

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