トランコムの売上高/事業内容/強みを物流業界経験者がわかりやすく解説します

2024年3月9日

トランコムのキーワードは、求貨求車事業3PL事業の2つです。

順に見ていきましょう。

物流会社売上ランキング2021年版 22位)

 

◆仕事や勉強の息抜きに。。。

求貨求車事業のパイオニア。あえて全自動化しない独自モデル

トランコムは1959年に名古屋で創業してから、同地区で家電メーカーの共同配送事業を中心に営んでいました。

自社トラックを使った貨物運送事業が中心でしたが、2000年代前半に自社でアセットを保有しないアセットライトの方針に切り替えました。

ここまでは他の物流会社でもよくある話しですが、トランコムはトラックの空車情報と、それを必要とする荷主を結びつける求貨求車サービスを始めました。

 

開始当初は空車がある物流会社と、トラックが足りない物流会社間でのやり取りに使われていました。

これはトラック下請けの多重構造問題が絡んでいます。

どんなに大きな物流会社でも、すべてを自社トラックで賄える会社はどこにもありません。

トラック輸送量は日々の振れが大きいため、毎日安定している物量にだけ自社トラックを使って稼働率を上げ、上澄みの振れが大きな物量は傭車といって下請けに任せるのが普通です。

 

しかし、毎日仕事が来るのか来ないのか分からない状況では、下請け会社も常に空車を用意しておくわけにもいきません。

そのため、多数の下請け会社をまとめる水屋といわれるブローカーが、その間に入ります。

水屋というと何か怪しげなイメージがありますが、れっきとした貨物利用運送事業者です。

 

このような水屋が何人か間に入ることにより、どんどんピンハネされ、最終的にトラックで運ぶ人の実入りが少なくなってしまうのが下請けの多重構造問題です。

 

しかし最近はトランコムでも、メーカーなどの空車を探している荷主と空車があるトラック会社の直接マッチングがかなり増えているようです。

この点で、社会問題の解決に貢献しているといえます。

 

今の人たちは空車マッチングと聞くと、ウーバーのようにすべてITで自動化されていると考えるのではないでしょうか。

しかし、トランコムのやり方は半分IT、半分人手です。

 

トランコムには「アジャスター」と呼ばれる約500人の専任スタッフが、空車のマッチングを行っています。

パソコンのGPS画面上に空車とそれを求めている荷主の情報が一覧で表示され、アジャスターが空車を基点に移動距離や移動時間を入力すると、自動的に条件にマッチした荷主がピン表示されます。

さらにそのピンをクリックすると、その荷主の取引履歴貨物情報などが閲覧できるようになっていて、アジャスターがその中から最も適した荷主を探すことでマッチングを行っています。

 

最近はAIでいろいろなことができるようになってきていますが、アジャスターがやっている業務のうち、本当に人手でないとできない業務がどれだけあるのかは管理人には分かりません。

実際、AIを使って類似のサービスを始めているスタートアップも出てきています。

しかし、20年くらいかけて築き上げてきた全国13,000のトラック会社ネットワークは、そう簡単に真似できるものではないと思います。

この業界は人間のつながりが濃いので、優位性はまだまだ続くのかもしれません。

 

アセットライトで利益率も高い3PL事業

トランコムは2000年代前半にアセットライトの方針に切り替えましたが、それは物流センターについても同様です。

物流施設は賃貸する方針に切り替えています。

 

3PL(サードパーティロジスティクス)事業を自社のアセット(物流施設)で行うか、賃貸で行うか、どちらが有利ということは一概には言えません。

大手物流業者で営業力に自信があるのなら、自社アセットを持つ方がコスト的には有利になるケースが多いとは思います。

 

トランコムの3PL事業は年商550億円くらいで中堅ですが、営業利益率が8%以上で競争力は高いと言えます。

3PL事業では物流センターの運営力や改善力が重視されますが、売上規模ではセンター発着の輸配送の方が上回ることが多く、こちらも重要です。

これがトランコムの追い風になっていると思われます。

 

というのは、トラック運賃はバブル崩壊後、ずっとデフレの象徴的存在でした。

若年人口が減る中、ブラックと言われるトラックドライバーが急減して、2017年にヤマトがとうとう値上げに踏み切りました。

他の物流会社も値上げして、荷主も仕方ないねという雰囲気になっています。

 

そればかりか、

運びたいモノが運べない。荷主はトラックを手配できないし、トラック会社はドライバーがいない。

という段階まで進行しています。

いくら大手物流会社でも、簡単にはトラックを手配できない状況になっているのです。

 

そうなると、全国に13,000社のトラック会社ネットワークを持つトランコムには有利です。

常に膨大な空車情報を持っているのですから、いつでも自社の都合を優先できます。

 

また求貨求車事業は環境にも優しいのです。

何もしなければディーゼル燃料だけまき散らして空気を運んで帰るところを、社会的需要を満たすモノを運んで帰れるのですから。

 

このように今後益々深刻化するトラック不足について心配無用なトランコムに3PLを委託することは、

うちは環境に優しい物流でお客様にモノを提供していますよ

という世間へのアピールにもなり、一石二鳥なのです。

トランコムの3PL事業は、世の中の潮流に乗っていると言えます。

 

まとめ:社会問題解決の流れに乗るビジネスモデルに期待

トランコムが20年間に渡って築き上げてきた、13,000社のトラック会社ネットワークを裏付けとする求貨求車サービスは、今後益々深刻化するトラック不足環境問題を和らげるソリューションとして、価値が上がっていくと思われます。

その求貨求車サービスを優先的に活用できるトランコムの3PLサービスも、今後選ばれる可能性が高くなるでしょう。

 

またトランコムは2020年に、AI・ ロボティクス・IoTなど中国の先進技術を日本国内へ導入を行うChinoh.Ai と資本業務しました。

これにより物流センター内の自動化を進めて3PL事業の強化をしようとしています。

 

また2019年には、物流施設開発大手の日本GLPと傘下のモノフルと業務提携しています。

GLPが運営するマルチテナント型の物流施設で、トランコムの輸配送力を生かせると読んだのでしょう。

一棟借りでなく、マルチテント型の物流施設に入る荷主は、物量が大きくありません。

トラックを1台貸切るほどの物量がない荷主にとっては、同じ施設に入居する荷主と共同で輸配送したいというニーズがあります。

そこでも希望するサイズのトラックを、しかも帰り荷が欲しいトラックを機動的に手配できるトランコムは魅力的です。

 

このように、求貨求車サービスを今後発展が期待できる3PLサービスに最大限活用しようとしている戦略に一貫性があり、今後益々注目です。