ハマキョウレックスの売上高/事業内容/強みを物流業界経験者がわかりやすく解説します

2024年3月9日

ハマキョウレックスのキーワードはコスト管理手法M&Aの2つです。

順に見ていきましょう。

物流会社売上ランキング2021年版 29位)

 

当ページのリンクには広告やプロモーションが含まれています。

高利益率の物流センター事業を支える独自のコスト管理手法

ハマキョウレックスの前身は1971年に浜松で設立され、現在の社名に変わったのは1992年です。

1997年には東証一部に上場しています。

 

事業内容は3PL(サードパーティロジスティクス)特別積合せ貨物輸送ですが、ハマキョウレックスの強みは何と言っても優れたコスト管理手法です。

それを象徴する有名なキーワードとして日計収支アコーディオン方式日替わり班長制度が知られています。

 

日計収支

日計収支とは、月に一度しか収支が分からなければ年に12回しか対策する機会がありませんが、毎日収支が分かれば365回対策できるという考え方です。

とはいっても、まともにやっていては時間がかかりすぎてかえってコスト増になってしまいますので、実際はほとんどの項目は日割りの按分を使った概算だそうです。

それでも毎日やることによって相対的な比較はできますし、何より現場にオーナー意識を持たせて、問題を早期に発見できるという意味合いが大きいのだといえます。

 

アコーディオン方式

アコーディオン方式とは、日々の物量の増減に合わせてスタッフの数もアコーディオンのように調整することを言います。

物流センターの物量というのは前日の夕方近くにならないと確定しないことが多いのですが、そこからパートさんに電話して調整するのです。

過去データから大体の物量予測は付きますので、調整といっても微調整です。

ですが、少しでも余剰人員がいるとすぐに赤字になってしまうような現場では重要です。

ここにも日計収支が生かされているといえます。

 

日替わり班長制度

日替わり班長制度とは、毎日日替わりで現場の班長さんを交代させる制度です。

これも現場のスタッフ(多くはパートさん)一人ひとりにオーナー意識を持たせるための施策です。

 

ハマキョウレックスは2002年中国上海に、アパレル製品を検品するための検品センターを立ち上げました。

1990年代までは中国、日本の両方で検品するのが普通だったのですが、中国の生産品質が上がってきたこととコスト削減のため、2000年ごろを境に中国だけで検品を済ますのが主流になってきました。

その流れに対応するためハマキョウレックスも2002年に自社の検品センターを上海に立ち上げたのです。

始めは小規模だったため日本人ですべて監督できたのですが、規模が拡大してくるとそうも行かなくなってきました。

そこで日本でやっていた日替わり班長制度を導入してみたのですが、最初の頃はなかなか受け入れてもらえなかったそうです。

これは中国に限らず日本以外の国ではほとんどそうではないかと思いますが、決められた時間内に作業が終わらなくても、さっさと家に帰ってしまうスタッフがほとんどです。

中には生活のために残業代を稼ぎたいがために遅くまで働いてくれるスタッフもいますが、時間内になんとか終わらそうという意識はありません。

彼らからすれば、早くやっても遅くやっても給料は同じですから、ゆっくり長時間やる方が稼げるからです。

しかし、辛抱強くやっているうちに日替わり班長制度も受け入れられるようになり、その結果、顧客のことを考えて進んで残業をしてくれるスタッフが増えたとのことです。

 

ハマキョウレックスは2010年にはバングラデシュにも検品センターをオープンさせていますが、ここでも日替わり班長制度を導入しているそうです。

 

積極的なM&A

小が大を飲み込んだ近物レックス

ハマキョウレックスはM&Aを積極的に活用しながら売上を拡大させてきました。

2004年には近畿日本鉄道から近鉄物流を買収し近物レックスとしました。

それまでハマキョウレックスは3PL事業しかやってきませんでしたが、特別積合せ貨物輸送業の中堅企業で、自分の会社より売上高の多い近鉄物流を買収したのです。

赤字企業で、黒字化には5-6年を要したようです。

 

この大型買収によりハマキョウレックスの自己資本比率18%まで低下しました。

しかしその後、近物レックスの立て直しが進展し、2015年には40%まで回復しました。

その間、M&Aに慎重になっていましたが、2015年からは毎年のようにM&Aをしています。

 

事業再建型から事業拡大型へ

近物レックスまでは事業再建型でしたが、2015年以降は3PL事業の商材やエリア拡大を意図したものが中心となっています。

その結果、2015年度に470億円だった3PL事業の売上が2020年度には715億円に、物流センターの数も87から128まで増えています。

売上構成比では、3PL事業と特別積合せ貨物輸送事業の割合が2015年度はほぼ1:1だったのが、2020年度には3:2まで3PL事業が伸びています。

 

自社物流センターも拡大中

このように3PL事業拡大のために積極投資を続けていますが、M&Aだけではなく自社物流センターへの投資にも積極的です。

これには理由があります。

ハマキョウレックスは浜松が地盤で、3PL事業の顧客も関東から近畿のエリアに集中しています。

そのため、万が一自社センターに空きができたとしても、近隣の賃借センターから顧客を移すことが可能です。

実際、自社センターより賃借センターの方がだいぶ多いため、まだまだ自社センターに投資する余地があるといえます。

 

3PL事業の営業利益率11%を超えており、業界屈指の高い競争力を武器に今後も積極投資を続けていくものと思われます。

 

まとめ:徹底的なコスト管理手法で脅威の営業利益率11%超え

ハマキョウレックスの3PL事業は日計収支アコーディオン方式日替わり班長制度などに代表される独自のコスト管理方式により、高い競争力を維持しています。

2004年に買収した近物レックスの再建も終わり、今後はEC物流におけるラストワンマイルを担うための様々な投資を行っていくことを2023年度までの中期経営計画で表明しています。

また得意の3PL事業においても、新規自社センターの新設の他、既存センターにおける自動化ロボットへの投資など、積極投資を続けていく計画です。

毎年15の3PL案件獲得を掲げており、ここ数年はほぼその通り実行していますので、今後の成長力にも期待が持てます。