ロジスティード(元日立物流)の売上高/事業内容/強みをわかりやすく解説します
日立物流のキーワードは、3PLとスマートロジスティクスの2つです。
順に見ていきましょう。
(物流会社売上ランキング2021年版 5位)
(3PL世界売上ランキング2021年版 18位)
日本における3PLの最大手
3PLとは?
3PLとはサードパーティロジスティクス(3rd Party Logistics)の略です。
ではファーストパーティとセカンドパーティはどこなのだ?
という疑問を持ちますが、これには諸説あります。
日本通運ではファーストパーティはメーカー、セカンドパーティは問屋や小売、サードパーティは物流事業者であるとしています。
一方、Wikipediaでは次のように定義しています。
ファーストパーティ:地域限定で輸送や倉庫などの単一機能を提供する業者(メーカーもトラックや倉庫などのアセットを持っていればファーストパーティになれる)
セカンドパーティ:全国レベル、もしくは国際的にサービスを提供する物流事業者
サードパーティ:セカンドパーティの機能に加えて、荷主のシステムとリンクさせてオーダーメイドのサービスを提供する物流事業者
>> Third-party logistics / WIKIPEDIA
日通の定義だと物流事業者はすべて3PL事業者になってしますので、Wikiの定義が正しいような気がしますが、よく分かりません。
(でも多くのバズワードでそうであるように、3PLという言葉も欧米生まれですので、英語版Wikiが正しいのかもしれません)
一般的には、トラック輸送だけとか海上輸送だけというように、輸送だけを請け負う場合は3PLとは言わず、倉庫(物流センター)業務も含めて請け負う場合に3PLと言っているようです。
倉庫業務だけ請け負って、倉庫からの配送は別会社に任せる場合も3PLに含めている会社が多いようです。
このように3PLとそうでない業務の線引きが曖昧なので、3PLの売上ランキングも怪しいものですが、日立物流は3PL国内No.1と言われています。
消費財メーカーやリテール向け3PLに強み
日立物流は1980年代にアパレル向けに3PL事業を始めたと言われていますが、本格展開し始めたのは2000年前後です。
1998年にアディダス、2002年にイオンの店舗向け物流センター業務を請け負ってから、大型の案件を次々に獲得しています。
日立の冠が付いているので家電物流に強そうなイメージですが、業界内ではアパレル、トレタリー、医薬品、食品の3PLに強いイメージが定着しています。
また日立物流はこれら3PLの荷主の貨物をベースカーゴとして、アパレル、医薬、家電分野での共同物流も積極的に推進しています。
ロジスティクスの理系集団
日立物流の3PLの特徴といえば、エンジニアリング力とシステム力でしょう。
物流センターの設計や改善などを手掛けるロジスティクスエンジニアが200人以上もいるそうです。
日本の物流事業者としては異例の規模です。
また物流センターの自動化やIoTによるデータ収集、AIの活用を進めるためのR&Dセンターもあり、さながら理系集団といったところです。
日立物流は大型の物流センターを多数運営していて、実地でトライアンドエラーを繰り返せるため、自動化やロボット技術で次世代の物流を創っていきたいと考えている人にはうってつけの職場でしょう。
システム面では、母体がAIや数理解析技術に長けているだけあって、倉庫管理システム(WMS)にもそれを適用しているようです。
大型の物流センターを多数運営しているだけに、人の動きを数理的に解析して最適化する機能が備わっているのだと思います。
ロボットと人が自然に融和して働ける環境を目指していくのでしょう。
日立物流の代名詞であるスマートロジスティクス
スマートロジスティクスからLOGISTEEDへ
日立物流といえばスマートロジスティクスというくらい、業界ではよく知られたキャッチフレーズです。
2018年にはそれを発展させた新しいコンセプト「LOGISTEED」を打ち出しています。
これはLogistics、Exceed(超える)、Proceed(進む)、Succeed(成功する)、Speed(スピード)を融合させた造語で、スマートロジスティクスをコアとしつつ協業領域を広げることで、新たな成長へとつなげるというコンセプトです。
具体的なサービスとしては、スマートウェアハウスとSCDOS(Supply Chain Design & Optimization Services)が肝のようです。
スマートウェアハウス
物流のシェアリングサービス
スマートウェアハウスの中心は、2019年に稼働した春日部のEC物流向けシェアリング自動倉庫です。
マルチテナント型倉庫では各EC事業者の保管スペースは壁や金網で区切られています。
しかしここはシェアリング倉庫というだけあって、異なるのEC事業者の商品が同じスペースで保管されています。
何がメリットかというと、物量の波動を吸収しやすいのです。
どの会社の貨物でも季節によっても、曜日によっても、時間帯によっても忙しい時とそうでない時があります。
複数の会社が集まるとその波動が均されます。
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しかしマルチテナント型倉庫のようにスペースが区切られていると、人員を融通し合うことはできますが、スペースは融通し合えません。
折角、同じ施設に入居しているのにもったいないのです。
このようにシェアリング倉庫はマルチテナント型倉庫の発展形です。
徹底した自動化
もう一つの特徴は72%の自動化率です。
EC物流は小口の注文が多いため、注文の商品を取り出すピッキングに一番時間がかかります。
大型の物流センターになるほど探すのが大変ですが、これは倉庫管理システム(WMS)で指示を出せば何とかなります。
しかし、保管場所まで歩く時間はかかります。
これを解決するには、ゴルフカートのような乗り物で素早くスタッフを移動させるか、目的の商品を乗りものに載せてスタッフの手元まで持ってくるか、2通りの方法があります。
アマゾンでもそうですが、世界の潮流は後者です。
なぜなら、スタッフが手元に来た商品を出荷箱に入れている間に、違うロボットが次に必要な商品を取りにいけるからです。
前者のやり方だと、ゴルフカートに乗っている時のスタッフは暇になってしまいますので。
また梱包用カートンをオーダーメイドで自動で作ってくれる機械も入っています。
普通は何種類かあるカートンサイズから選んで梱包しますが、これだとカートンが大きすぎる可能性があります。
宅配便はカートンサイズで料金が決まりますので、EC事業者か消費者のどちらかが損することになります。
この機械では出荷商品のサイズに合わせてジャストフィットのカートンを自動作成してくれるので安心です。
ジャストフィットとはいっても、隙間に緩衝材は必要です。
そのような緩衝材を自動封入してくれる機械も入っています。
その他、納品書を自動封入してくれたり、宅配便の送り状を自動貼り付けしてくれたりと、全体の72%が自動化されているそうです。
先ほど、倉庫スペースのシェリングにより繁閑の波動が均され、作業量を平準化できると言いました。
自動化されている工程は、稼働していようとしていまいと、機械の減価償却費は固定です。
そのためにも平準化は必要なのです、
SCDOS(Supply Chain Design & Optimization Services)
日立物流のHPによれば、SCDOSは可視化、分析、シミュレーションの3つに分かれます。
可視化
可視化は社内外に散らばっているデータを一元化して、ロジスティクスの状態が一目で分かるように可視化することです。
通常、生産や販売のデータは一元化されています。
しかし、物流は生産や販売の一機能ですので、生産や販売のデータに紛れています。
また、物流業者など外部業者とのやり取りもデータ化されていないことが多いため、物流データは社内外に散乱しているのです。
これらのデータをシステム同士でデータ連携したり、データファイルとしてシステムにインポートしたりして一元化しましょう、そうすれば次の分析やシミュレーションにつなげられますよ、そのためのお手伝いをさせて下さいということです。
分析
次の分析は、適正在庫分析、貨物トラッキング、物流コスト分析の3つに分かれます。
適正在庫分析では、販売状況と在庫量を比較してSKUごとに適正在庫を維持できているか、もしできていないのであれば、発注頻度やロットサイズを見直せばどう改善できるか、一緒に考えますよということです。
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貨物トラッキングは、複数のフォワーダーのシステムとデータ連携して、今タイの倉庫に入庫して検品中とか、船に乗せたとか、輸入通関が終わったとかいうトラッキング情報を見れるようにすることです。
また、輸出入にはインボイス、パッキングリスト、BL、原産地証明書など様々な貿易書類があり、修正も日常茶判事です。
そのため、時に修正版が添付されているメールを見落としてしまったり、どれが通関に使った最終版なのか分からなくなってしまいます。
そうならないように、クラウド上のデータで管理することも含まれます。
また、通常、一つのBLの中には沢山のSKUが含まれます。
貨物量の多い荷主では、BLも沢山あるので、ある商品が納期に間に合うか知りたいという場合に、どのBLにその商品が含まれているのか分からなくなることがあります。
そうならないように、SKU単位でもトラッキングできるようにしますよということです。
物流コスト分析では、SKUごとにドアツードアの物流コストを分析します。
生産委託先の工場から日立物流タイの物流センターまではトラック輸送、そこで何日か保管した後、コンテナに積めて港にトラック輸送して輸出通関、そこから船に載せて、、、というようにいくつもの段階を経ますが、それぞれの段階での料金体系は異なります。
例えば、生産委託先から物流センターまでのトラックは15m3でいくら、保管料は1m3でいくら、輸出通関料は1BLでいくら、、、という具合です。
そのためSKU単位の物流コストは単純な足し算では求められません。
しかし、荷主会社は採算管理のため、それを知りたい場合があります。
そこでそれをシステムで自動計算しましょう、また物流コストが最小になるようなロットサイズや輸送頻度(発注間隔)を一緒になって考えますよというサービスです。
シミュレーション
最後はシミュレーションです。
分析が日々のオペレーションレベルでの最適化を支援するサービスであるのに対して、シミュレーションは中長期的な意思決定を支援するサービスです。
どこにどれくらいの在庫を置いて、その間をどんな輸送手段で、どのくらいの頻度で輸送するかを決定することを、物流ネットワークの設計と言います。
これは荷主の物流企画でやることですが、ここで誤った判断をすると日々のオペレーションをどんなに一生懸命やっても取り返せません。
この意思決定を支援するのが、ここでいうシミュレーションの内容です。
具体的には、顧客の位置とか販売量、要求リードタイム、工場や調達先の位置などを考慮しながら、数理的に最適な物流ネットワークを求めます。
いくら最適な在庫拠点が見つかっても、そこで適正在庫管理ができていなければ無意味ですので、適正在庫管理をする前提で在庫量や輸送頻度/量を仮定しながら数理計算を行います。
適正在庫を維持するための発注数の決め方をわかりやすく【定期発注方式の場合】
物流ネットワークの選択肢は事実上無限にありますので、かなり条件を絞らないと最適化計算はできません。
まともに全部計算するなら、量子コンピュータの実用化を待たないといけなくなってしまいます。
日立物流にはこのノウハウがあるので、一緒に考えますよというサービスです。
>> 最適化の事例はこちら
まとめ:理系集団による日本のロジスティクス変革に期待
日立物流は3PLの国内最大手で豊富な請負実績をバックに、アパレル、医薬、家電などで共同物流を推進しています。
また多数のロジスティクスエンジニアを抱え、物流センター設計や改善能力に長けている他、ロボットやIoT、AIを活用した自動化のR&Dも強力に推進しています。
実証研究ができる現場を多く抱えることから、研究のための研究に終わらず、どんどん実用化しています。
またスマートロジスティクスのコンセプトの下、サプライチェーン全体の可視化や、適正在庫を軸にしたコスト削減のためのコンサルティング、また中長期的な物流ネットワークの最適化支援など、SCMコンサルティングでも差別化しようとしています。
理系で物流業界への就職を考えている人にとっては外せない会社でしょう。
文系の人にとっても、物流には興味はあるんだけど経験と勘と度胸の世界はちょっと、、、という人にはとても良い会社だと思います。