物流拠点集約で在庫削減できるのか?|【分散の加法性】を使ってわかりやすく検証!

2021年7月30日

「複数の倉庫を1つに集約して、在庫削減と物流コスト削減を同時達成しましょう!」

物流会社や物流コンサルタントがよく使う営業トークです。

しかし、倉庫集約によって本当に安全在庫は削減できるのでしょうか?

また、どのくらい削減できるのでしょうか?

「それはケースバイケースです。データをいただければ分析します!」

でもデータを出したのに、何日待っても何%削減できるという明確な回答はありません。

営業マンも困っているのです。

 

これもスーパーのレジ待ち問題と同じで、「平均」だけ見ていても解決できません。

分散」で考える必要があります。

>> 分散の使い方【レジ待ちから学ぶ】

 

どういうことか見ていきましょう。

 

安全在庫の計算式

物流センターで持つべき安全在庫は、ごくごく簡単には次式で計算できます。

安全在庫=標準偏差*安全係数

>> 安全在庫の計算式と意味をわかりやすく解説

 

これには少し補足が必要です。

安全在庫商品アイテムごとに、厳密に言うとSKU(Stock Keeping Unit)ごとに計算しないと意味がありません。

先の式にある「標準偏差」とは、各商品アイテムごとの毎日の需要数(売上数)を過去何日分か集めたとして、その複数のデータから計算した標準偏差ということです。

 

例えば、商品Aの過去30日間の需要が

10,12,20,15 …. ,8

だったとすれば、このデータから標準偏差を計算します。

つまり、商品アイテムごとに標準偏差を求め、それに安全係数をかけたものが安全在庫になります。

 

モデル化

まずは問題をモデル化します。

物流センターNあり、これを1か所に集約するケースを考えます。

N個の物流センターを物流センター1、物流センター2、、、物流センターNとします。

またすべての物流センターは同じ商品を在庫しているとし、そのうちの商品Aについてだけ考えると、集約前は次のように表せます。

 

そして集約後は次のように表せます。

 

この中の「」をこれから計算していきます。

 

集約後の需要平均

物流センター1の集約前の需要平均は、次のように計算されます。

(x11+x12+x13+ … +x130) / 30 = μ1

同様に物流センター2の集約前の需要平均は、次のように計算されます。

(x21+x22+x23+ … +x230) / 30 = μ2

よって物流センターNの集約前の需要平均は、次のように計算されます。

(xN1+xN2+xN3+ … +xN30) / 30 = μN

 

一方、集約後の需要平均は次のように計算できます。

{(x11+x21+x31+ … +xN1) + (x12+x22+x32+ … +xN2) + … + (x130+x230+x330+ … +xN30)} / 30

= {(x11+x12+x13+ … +x130) + (x21+x22+x23+ … +x230) + … + (xN1+xN2+xN3+ … +xN30)} / 30

= (x11+x12+x13+ … +x130) / 30 + (x21+x22+x23+ … +x230) / 30 + … + (xN1+xN2+xN3+ … +xN30) / 30

= μ1+μ2+…+μN

 

よって、集約前後で需要平均は変わりません

 

集約後の需要分散

物流センター1の分散が、

V(x11,x12,x13, … ,x130)  = V(X1) =σ12

物流センター2の分散が、

V(x21,x22,x23, … ,x230)  = V(X2) =σ22

・・・

物流センターNの分散が、

V(xN1,xN2,xN3, … ,xN30)  = V(XN) =σN2

なので、分散の加法性より、N個の物流センターを全部併せた分散は、

V(X1 + X2 + … + VN) = σ12+ σ22 + … + σN2

になります。

【参考】

分散の加法性を平均値に適用する

 

平方根を取ると、集約後の標準偏差は、(σ12+ σ22 + … + σN2)になります。

よって、集約後は次のようになります。

 

集約前後の平均、分散、安全在庫をまとめると、このようになります。

 

まとめ

以上の結果を使って、4つの物流センターを集約した場合の安全在庫の削減率を計算してみます。

ケース1は4つのセンターで分散が等しい場合、ケース2はそこそこ違う場合、ケース3は大きく異なる場合にしてみました。

 

ここから分かることは2つあります。

一つ目は、集約前の各センターでの需要の分散が等しい場合に最も在庫削減率が大きくなり、分散の差が大きいほど、集約後の在庫削減率は小さくなることです。

 

二つ目は、集約前の各センターでの需要の分散が等しい場合、安全在庫の削減率はもともとのセンター数の平方根になることです。

4つのセンターを集約すると1/√4=1/2倍2つのセンターでは1/√2倍になります。

 

以上のように、物流センター集約により需要の「平均」は変わりません。

センターを集約したところで、消費者の購買数は変わらないので当たり前です。

 

しかし、「分散」は小さくなります。

その結果、安全在庫も減ることになります。

 

この例からも、「平均」だけで判断するのは片手落ちで、「分散」が重要ということが分かります。