【分散の重要性がわかる具体例!】スーパーの一列待ちの効果を検証する
「分散」の重要性がわかる具体例~スーパーの一列待ち~
スーパーのレジ待ちは、時に客をイライラさせます。
それぞれのレジに1列ずつ並ぶのがいいのでしょうか?
それとも、まとめて1列に並んで、空いたレジから順に進んでいく方がいいのでしょうか?
その答えは「平均」で考えると、いつまで経っても分かりません。
「分散」で考える必要があります。
どういうことなのか、以下解説します。
「平均」で考えると何も変わらない
ここで一つ仮定を置きます。
それは、それぞれのレジに別々に並ぶ場合、どのレジに並んでも待ち時間は同じという仮定です。
待つのが大好きという客はいないでしょうから、皆、抜け目なく空いた列を選んで並ぶ結果、どのレジに並んでも一緒とするのです。
レジごとに並ぶ場合に、あなたの前に並んでいる人をP人、レジの数をRとすると、次のようになります。
一方、まとめて1列に並ぶ場合は次のようになります。
レジでの処理時間は客ごとに異なります。
そこで、客は全部でP×R人いて、それぞれの客には1からP×Rまでの背番号が付いていると想像します。
そして、背番号iの客の処理時間をTiとします。
また、Tiは平均Tavg、分散σ2の正規分布に従うとします。
レジごとに並ぶ場合、あなたはどのレジに並んでも待ち時間は同じですので、レジ1の列に並びます。
すると、待ち時間はTavg×Pになります。
一方、まとめて1列に並ぶ場合の待ち時間はTavg×P×R÷R=Tavg×Pとなります。
つまり、平均待ち時間で比較すると、両者差がないことになります。
「分散」で考えると違いがわかる
次に待ち時間の分散を比較してみましょう。
別々のレジに並ぶ場合は、1レジ当たりの処理時間は
T1+ T2+・・・+ TP
ですので、分散は
V(T1+ T2+・・・+ TP)
= V(T1)+ V(T2)+・・・+ V(TP)
になります。
V(Ti)はすべてσ2ですので、Pσ2になります。
一方、まとめて1列に並ぶ場合は、1レジ当たりの処理時間は
(T1+ T2+・・・+ TP×R) / R
ですので、分散は
V{(T1+ T2+・・・+ TP×R) / R}
= V(T1/R)+ V(T2/R)+・・・+ V(TP×R/R)
= (1/R2)V(T1)+ (1/R2)V(T2)+・・・+ (1/R2)V(TP×R)
= (1/R2){V(T1)+V(T2)+・・・+V(TP×R)}
= (1/R2) P×Rσ2
= P/Rσ2
となります。
つまり、まとめて1列に並ぶ方が、分散が1/R倍だけ小さくなります。
分散の平方根が標準偏差なので、標準偏差で比べると√(1/R)倍小さくなります。
例えば、レジが4台あるとします。
レジごとに並んだ場合は、1列に並んだ場合に比べて、待ち時間の分散が4倍、標準偏差が2倍になります。
下の図は、待ち時間の平均が15分の場合の比較です。
レジ待ち時間は両方ともばらつきますが、レジごとに並ぶと大幅に遅れる可能性があるということです。
逆に、大幅に早まる可能性もあるということにもなります。
つまり、レジごとに並ぶのは当たり外れが大きいギャンブルです。
そしてギャンブルに負けた客がイライラすることになります。
1列待ちには、そのようなギャンブル敗者を出さない効果があると言えます。
安全在庫への分散の応用例はこちらをご参考まで。
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