10%の確率で獲得できる営業案件が30件ある時、3件取れる確率は何%?
負の二項分布を使える具体例
物流会社Aは東南アジアに現地法人を開設しようとしています。
年商5億円の案件を3件獲得することが条件です。
既に年商5億円を見込める案件を30件リストアップしており、各案件を獲得できる確率は10%です。
この稟議は通るでしょうか?
負の二項分布とは?と式の導出
同じことを繰り返し行うとき,k 回成功するまでの試行回数が従う分布を負の二項分布と言います。
これは次のように考えることができます。
確率 p で成功するような試行を繰り返し行うとします。
k 回成功するまでに x 回の試行が必要となる確率は、x-1回でk-1回成功した後のx回目に成功する確率なので、二項分布の式から、
= x-1 C k-1 p k (1-p) x-k
となり、これが負の二項分布の式になります。
負の二項分布を具体例に適用する
冒頭の例に当てはめてみましょう。
1件の案件を獲得できる確率が10%で、3件の案件を獲得(成功)しなければいけないので、p=0.1、k=3です。
エクセルで計算すると、このようになります。
これをグラフにするとこのようになります。
20件くらいの案件にアプローチしたところで、3件獲得できる確率が一番高くなっていることが分かります。
30件の潜在顧客がいますので、稟議通りに実現できそうな感じがします。
負の二項分布の累積確率分布はExcel関数で計算できる
しかし、これは確率密度であって、確率ではありません。
20件アプローチした段階での獲得確率を求めるには、横軸の0から20までを積分する必要があります。
これは負の二項分布の累積確率分布と呼ばれ、エクセル関数に用意されています。
NEGBINOM.DIST(失敗数 , 成功数 , 成功確率 , FALSE)・・・確率
NEGBINOM.DIST(失敗数 , 成功数 , 成功確率 , TRUE)・・・累積確率
この関数を使うと、次のように計算できます。
累積確率をグラフにすると、こうなります。
これによると、20件の案件にアプローチしても、3件獲得できる確率は32%しかありません。
もし経営陣が80%以上の確率を求めるのでしたら、42件の案件にアプローチする必要があります。
潜在顧客リストには30件しかありませんので、この稟議は却下されるでしょう。
まとめ
今回は
k回成功するまでの試行回数が従う確率分布
として負の二項分布を定義しましたが、この他にも3つの定義があります。
これだけ色々な定義がある確率分布は珍しく、これが負の二項分布の理解を難しくしていると言えます。
他の定義式については、こちらでまとめて解説しています。
「負の二項分布」の4通りの定義を具体例を使ってまとめて解説する決定版
また、4種類の負の二項分布の使い方については、こちらで解説しています。
【4通りの負の二項分布の使い方】具体例でわかりやすく解説します。
ところで、なぜこのような結果になってしまったのでしょうか?
30件の案件があり、10%の確率で獲得できるのでしたら、それだけで3件は獲得できると思ってしまいます。
しかし確率論では、これだけでは不十分です。
たかが10%の成功確率では、不確実性が大きいと判断するためです。
試しに成功確率が50%だと、累積確率分布はこのようになります。
先ほどのグラフと比べて、急激に立ち上がっていることが分かります。
成功確率が50%あれば、不確実性が小さくなるためです。
このように平均値だけで判断するのは片手落ちです。
不確実性は分散、またはその平方根である標準偏差で表されます。
分散や標準偏差が大切な理由がこの例からも分かります。
標準偏差がばらつきを表すのに丁度いい理由をわかりやすく解説します。