【4通りの負の二項分布の使い方】具体例でわかりやすく解説します。

2022年11月5日

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4通りある負の二項分布

負の二項分布には4通りのパターンがありますが、すべて同じことを言っているのだということを前回の記事で解説しました。

パターン1)k回成功するまでの試行回数xの確率分布

パターン2)k回成功するまでの失敗回数rの確率分布

パターン3)r回失敗するまでの試行回数xの確率分布

パターン4)r回失敗するまでの成功回数kの確率分布

「負の二項分布」の4通りの定義を具体例を使ってまとめて解説する決定版

今回は例題を解きながら、更に理解を深めていきます。

 

4通りの負の二項分布の使い方の具体例

パターン1)k回表が出るまでの試行回数xの確率分布

【例題1―1】

ここにジョーカー抜きのトランプカード52枚があります。

この中から1枚ずつ引いて、ジャック(11)を2枚引くのに必要な試行回数の確率分布を求めましょう。

但し、引いたカードはデックの中に都度戻すとします。

 

解法1-1

1デックには52枚のカードがあり、その中にジャックは4枚あります。

従って、ジャックを引く確率は

4÷52=7.7%

です。

 

負の二項分布の表記では試行回数をx成功回数をk失敗回数をrとしましたね。

ジャックを引くことを成功とすると、この問題はk回成功するまでの試行回数xの確率分布を求める問題です。

ですからパターン1です。

 

パターン1の公式は

でしたので、これにp=0.077、k=2を代入すると、

f(x) = (x-1)!/(x-1-(2-1))!(2-1)!×0.0772×(1-0.077)(x-2)

となります。

nCkn!/(n-k)!k!で計算できるのが分からない人は、次の記事を読んでみて下さい。

二項分布の公式の意味とExcelでグラフを描く2通りの方法を実演

 

これはExcelで次のように計算できます。

 

グラフにするとこうなります。

 

ジャックを2枚引くには13回、または14回カードを引く可能性が一番高いことが分かります。

 

【例題1―2】

某国には掘れば大油田が見つかる可能性があるエリアがあります。

しかし掘り当てられる確率は30%です。

3回の掘削で最初の油田が見つかる可能性は何%でしょうか?

また3回以内の掘削で油田が見つかる可能性は何%でしょうか?

 

解法1-2

これは少し引っ掛け問題っぽいですが、1回成功するまでの試行回数xの確率分布を求める問題です。

そして出来上がった関数f(x)のxに3を代入すれば、3回目の試行で初めて成功する確率が計算できます。

p=30%、k=1を公式に代入すると、

f(x) = (x-1)!/(x-1-(1-1))!(1-1)!×0.32×(1-0.3)(x-2)

となります。

Excelで計算すると次のようになります。

 

3回目ピッタリに最初の油田が見つかる確率は14.7%、3回目以内に油田が見つかる確率

65.7%になりました。

 

パターン2)k回成功するまでの失敗回数rの確率分布

【例題2―1】

新婚の田中さんは2人の女の子が欲しいと思っています。

2人目の女の子が生まれるまでに、2人の男の子を授かってしまう確率は何%でしょうか?

男女が生まれる確率は半々とします。

 

解法2-1

田中さんにとって、女の子を授かるのが成功、男の子は失敗です。

とすると、2回目の成功までに2回失敗する確率を求める問題なので、パターン2です。

パターン2の公式は下記でした。

 

これにp=0.5、k=2を代入すると、

f(r) = (2+r-1)!/r!(2+r-1-r)!×0.52×(1-0.5)r

となります。

パターン1と違って、失敗回数rの関数であることに注意です。

Excelで計算すると次のようになります。

 

2人目の女の子が生まれるまでに、2人の男の子を授かってしまう確率は約19%になりました。

ところで、1人または2人の男の子を授かってしまう確率は約44%です。

これは多くの人の直観に反するのではないでしょうか?

2人の女の子が生まれるのと、2人の男の子が生まれる確率は半々なのだから、50%と思いますね。

しかし、女の子と男の子は双子でない限り、同時には生まれません。

2人目の女の子が生まれた時点でゲーム終了ですので、それまでに2人の男の子が生まれる確率は少し低くなるのです。

 

【例題2―2】

あるトラックメーカーの新品タイヤの欠陥率は5%と言われています。

22輪のダブル連結トラックを1台購入して、最大2本のタイヤに欠陥がある確率は何%でしょうか?

 

解法2-2

欠陥率5%ということは良品率95%です。

従ってこの問題は、22回成功するまでに1回または2回失敗する確率を求めることと同等で、パターン2になります。

先の公式にp=0.95、k=22を代入すると、

f(r) = (22+r-1)!/r!(22+r-1-r)!×0.952×(1-0.95)r

となります。

これをExcelで計算すると次のようになります。

 

最大2本のタイヤに欠陥がある確率は56%もあることが分かります。

ちなみにグラフにするとこうなります。

 

パターン3)r回失敗するまでの試行回数xの確率分布

【例題3―1】

某物流会社での下請け管理規定では、貨物のピックアップ時間に3回遅刻したら契約を解除することになっています。

某下請け会社の過去の遅刻率は3%です。

この下請け会社が100回の配車で契約解除になっている可能性は何%でしょうか?

 

解法3-1

下請け会社の遅刻率は3%ですので、遅刻しない率(成功確率)は97%です。

この問題は、3回失敗するまでの試行回数xの確率分布を求める問題と同等で、パターン3になります。

パターン3の公式は以下の通りでした。

この式にp=0.97、r=3を代入すると、

f(x) = (x-1)!/(3-1)!(x-1-(3-1))!×0.97(x-3)×(1-0.97)3

となります。

Excelで計算すると次のようになります。

 

これをグラフにするとこうなります。

 

100回目の配車で3回目の遅刻をする確率は約.7%です。

求めたいのは1回目から100回目までの配車で3回目の遅刻をする確率の累計です。

これを求めると58%になります。

 

パターン4)r回失敗するまでの成功回数kの確率分布

【例題4―1】

競馬好きの田中さんは今年大きく負け越してしまい、あと5回負けたら今後一切競馬をやらない約束を奥さんとしてしまいました。

田中さんがあと10回以上勝てる確率は何%でしょうか?

過去の勝率は60%です。

 

解法4-1

まず、5回失敗するまでに成功する回数kの確率分布f(k)を求めます。

そして出来上がったf(k)にk=0~9を代入して、f(k)の累計値を求めます。(Σk=0-9f(k))

更に1からその値を引けば、5回失敗するまでに10回以上成功する確率を求められます。

パターン4の公式は以下の通りでした。

 

これに、p=0.6とr=5を代入すると、

f(k) = (k+5-1)!/(5-1)!(k+5-1-(5-1))!×0.6k×(1-0.6)5

となります。

成功回数kの関数になっていることに注意です。

Excelで計算すると次のようになります。

 

田中さんが残り9回以内しか勝てない確率は72%です。

従って、あと10回以上勝てる確率は28%になります。

ちなみに、残り勝てる回数の確率分布は次のようになります。

 

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