【バックスクリーン3連発】ポアソン分布で伝説が生まれた確率を計算してみた
滅多に起こらない事象はポアソン分布に従う
ポアソン分布は滅多に起こらない事象の確率分布を表します。
例えば下の図は今年都内で発生した交通事故死者数の月別データですが、毎月平均10人の方が亡くなっていることが分かります。
東京都内の交通人身事故発生状況|警視庁 より抜粋
では、毎日の死者数はどんな確率分布になるでしょうか?
1人のこともあれば0人のこともあるでしょう。
中には2人の日もあるかもしれません。
ポアソン分布によって、それぞれの人数になる確率を計算できます。
これは、結構凄いことですね。
1日当たりの交通事故死者数であろうと、コールセンターに30分当たりにかかってくるコール数であろうと、売れ行きの悪い商品の1日当たりの販売数であろうと、事象に拘わらず同じ式で計算できるのですから。
売れ行きの悪い商品の販売数予測にポアソン分布を適用する事例については、こちらのサイトを参照下さい。
【ポアソン分布の使い方】在庫管理への適用方法を具体例で解説します。
伝説のバックスクリーン3連発もポアソン分布に従うかを検証する
今回は更に全く関係のない事象にポアソン分布を適用してみます。
1985年の阪神タイガース優勝、阪神ファンなら生まれていなくても知っているでしょう。
このシーズン、チーム本塁打数は219本でした。
2021年の最多チーム本塁打数は巨人の169本でしたが、これは143試合の結果です。
1985年は130試合でこの数ですから、143試合に換算すると240本以上打ったことになります。
中でも4月17日に巨人槇原から放ったバックスクリーン3連発は、伝説として今も語り継がれています。
今回は、この伝説が生まれた確率をポアソン分布を使って計算してみます。
やり方としては、2段階で行います。
まず、ホームランが出る確率分布がポアソン分布に従うのかどうかを検証します。
検証後、そのやり方を応用してバックスクリーン3連発が起こる確率を計算します。
1試合当たりのホームラン数はポアソン分布に従うか?
1試合当たりのホームラン数を集計する
この年、阪神は219本塁打を放ちましたが、1番真弓34本、3番バース54本、4番掛布40本、5番岡田35本の4人で163本を放ちました。
そこで、この4人の毎試合におけるホームラン数を調べ、その確率分布をポアソン分布で近似できるかどうかを調べてみました。
データソースは下記のサイトを参照させていただきました。
まず、このデータを元に、毎試合の4人のホームラン数を調べました。
(真弓が開幕8試合中、6試合でホームランを打っていたのには驚きました)
これを元に1試合で放ったホームラン数ごとの出現回数を数えると、次のようになります。
更に出現回数を比率で表すと、次のようになります。
これをグラフにするとこうなります。
ポアソン分布に当てはめる
次に、これらの分布をポアソン分布で再現できるかどうかを調べたいわけです。
ポアソン分布の公式は下記の通りでした。
ある期間にλ(ラムダ)回起こる事象がある時、同じ期間にx回起きる確率の分布をポアソン分布と言い、次式で表されます。
f(x) = λx e–λ / x!
そこで、まずは4人のλを計算してみましょう。
1試合で放ったホームラン数をλとします。
真弓:34÷130=0.26
バース:54÷130=0.42
掛布:40÷130=0.31
岡田:35÷130=0.27
合計:163÷130=1.25
あとは、知りたいホームラン数をxに代入すれば、1試合でそのホームラン数を放つ確率が計算できます。
Excelで次のように計算できます。
実績とポアソン分布は一致する
先ほどの実績と比べるために、並べて比較してみましょう。
ほぼ一致していますね。
特に4人の合計で比べると、1ポイント以内の誤差しかありません。
ホームラン数はポアソン分布に従うことが分かりました。
バックスクリーン3連発が起こる確率
1試合に3人が揃ってホームランを打つ確率
それではバックスクリーン3連発の確率を求める前に、まず1試合でバース、掛布、岡田が揃ってホームランを打つ確率を求めてみましょう。
先ほどの結果から、各打者が1試合で1本以上のホームランを打つ確率はバース:34%、掛布:26%、岡田:24%です。
1試合に3人が揃ってホームランを打つ確率はこれらの同時確率ですので、
34%×26%×24%⋍2.1%
です。
実際、この年3人が揃ってホームランを放ったのは、もう1試合ありました。
3者連続ホームランが出る確率
しかし、これだとバースが1打席目、掛布が2打席目、岡田が3打席目でホームランを放つのも含まれてしまいますので、期間を変えます。
どういうことかと言うと、こういうことです。
ポアソン分布では「ある期間に起こる平均回数」をλとして、これを分布の形状を決める唯一のパラメータとします。
今までは「ある期間」を1試合としていましたが、1打席とします。
こうすることにより、同じ打席で同時にホームランを放つ確率を求めることができます。
この年の各打者の打席数は、ウィキペディアに載っていた各年成績の「打数」を参照しました。
バース:497打席
掛布:476打席
岡田:459打席
その結果、例えばバースが1打席でホームランを打つ確率は、
54÷497=11%
になります。
これをλとしてポアソン分布に当てはめて計算してみると、次のようになります。
よって、バックスクリーン3連発が起こる確率は、
9.75%×7.73%×7.07%=0.05%
と計算できました。
考察
意外と高い確率ですね。
約2,000打席待てば1回起こる確率です。
年間約500打席なので、4年に1度くらいは起きる確率です。
現に6年前の1979年にも起こっています。(掛布-スタントン-ラインバック)
ただ、これはこの年のバース-掛布-岡田くらい打てばの話しです。
実際はこんなに強力なクリーンアップが揃うこと自体が奇跡ですので、滅多に起こることではありません。
現実には2011年5月3日の鳥谷-新井-ブラゼルによる「26年ぶりのクリーンアップ3連発」まで待たねばなりませんでした。
(クリーンアップ以外の3連発は除く)