安全在庫の計算に必要な安全係数の二通りの求め方をわかりやすく解説!

2023年10月17日

安全在庫の計算式に出てくる安全係数許容欠品率によって決まります。

許容欠品率5%では安全係数1.65ですが、なぜそうなるのか?それ以外の許容欠品率ではどうやって安全係数を求めれればよいのか?について解説します。

求め方には、標準正規分布表から求める方法エクセル関数から求める方法の2通りあります。

以下、それぞれ見ていきましょう。

 

安全在庫における安全係数と許容欠品率との関係

在庫の役割は顧客が望む需要に対応することです。

顧客が何個を欲するかは分かりませんので、100%需要に対応できる在庫を持っておくことは無理です。

何%までならOKという許容範囲ということを決めておかなければなりません。

それが許容欠品率です。

通常、1~5%くらいに設定します。

 

顧客の需要は正規分布に従います。

消費の合計である需要は正規分布になることを中心極限定理で説明する

 

正規分布に従うということは、下記のように平均±2σ(標準偏差)の範囲に全データの95%が含まれます。

 

もう少し詳しくグラフを見てみましょう。

これは平均10、標準偏差1のグラフです。

顧客からの需要が毎日平均10個だけれども、11個の時もあれば、12個の時もあります。

でも10個になる確率が一番高く、12個になる確率はだいぶ低くなります。

図に書くと次のようになります。

 

つまり、在庫を12個持っておくことは、必要になる確率はあまり高くないけども一応持っておこうということです。

そして、この時の欠品率は2.5%になります。

なぜでしょうか?

 

平均±2σの範囲、つまり需要数が8から12個の範囲になる確率は95%です。

ということは、それ以外の山の裾野部分は両側併せて5%ですから、片側は2.5%になります。

よって、12個より多い需要が発生して欠品になる確率は2.5%というわけです。

この時、12個は平均+2σですが、この2のことを安全係数と言っているのです。

 

安全係数を標準正規分布表から求める方法

つまり安全係数とは、平均に加えて標準偏差何個分を上乗せするかを意味します。

統計学では、この標準偏差何個分かを表すのにzという変数を使います。

標準正規分布表に載っているzとはこの意味です。

>> 標準正規分布表

 

従って、安全係数は標準正規分布表から求められます。

注意する点は、この表は山の右半分しか対象にしていないことです。

 

下の図を見て下さい。

山の中心をゼロ(平均はゼロ)として、右側だけしか対象にしていません。

このようにすると、zの値がそのままσ(標準偏差)の何個分かを表すようにできて都合が良いのです。

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試しに先ほどの例で、z=2(標準偏差2個分)の場合を見てみましょう。

z=2.00ですから、2.0は縦軸で検索して、最後の小数点第2位だけを横軸で検索します。

すると、交わる点の数字は0.4772です。

つまり、平均からz=2(標準偏差2個分)までの間には全体の47.72%が含まれるということです。

平均以下には50%が含まれますので、平均+2σの在庫をもっておけば97.72%の需要がカバーされ、欠品する確率は2.28%(=50-47.72)になります。

 

従って安全係数を2にすれば、欠品率は2.28%になります。

 

次に、逆に欠品率を先に指定してから、安全係数を求めてみましょう。

例えば欠品率3%の場合はどうでしょうか?

在庫で需要の97%をカバーできれば良いので、47%(=97-50)がどこにあるかを調べます。

 

探してみると、46.99%が一番近そうです。

その時のzの値は1.88ですので、安全係数は1.88になります。

 

安全係数をエクセル関数で求める方法

確率のグラフには2通りあります。

確率密度関数累積分布関数です。

正規分布でお馴染みの釣鐘状のグラフは確率密度関数です。

これは横軸の数値になる確率を示しています。

 

これに対し累積分布関数は、横軸の値以下に何%のデータが含まれるかを示します。

 

2つのグラフを並べると次のようになります。

 

また横軸のzが1.3の時の累積確率は90%になりますが、それぞれのグラフでは次のように表されます。

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確率密度関数は分布の特徴を掴みやすい一方、縦軸の値に対して横軸の値が2つあるという性質があります。

それに対して累積分布関数は縦軸の値が決まれば、横軸の値が1つに決まるという特徴があります。

これは、累積分布関数には逆関数が存在するといいます。

 

この逆関数はエクセル関数にもあるので、一発で求まります。

NORM.INV(累積確率, 平均, 標準偏差)

 

例えば上のグラフを例にとると、累積確率は0.9ですから

=NORM.INV(0.9,0,1)

と入力すれば1.28が結果として表示されます。

 

平均と標準偏差は常に0と1を入力すればOKです。

累積確率とzの関係は平均や標準偏差に依らないため、いつも標準正規分布(平均=0、標準偏差=1)で計算すればよいのです。

 

最後に練習問題として許容欠品率1%の場合の安全係数をエクセルで求めてみましょう。

この場合、99%の需要をカバーできれば良いわけですから、累積確率99%に対応するzを求めます。

=NORM.INV(0.99,0,1)

とセルに入力すると2.33が表示されますので、安全係数は2.33になります。