すべての品目について一律に在庫日数を決める在庫管理がアバウトすぎる理由

安全在庫は需要のばらつきを吸収する在庫なので、需要の大小とは無関係です。

そのため、余り売れない商品の方が、よく売れる商品よりも多くの安全在庫が必要になることがあります。

また、在庫は安全在庫だけではありません。

需要予測在庫もあり、こちらは需要の大小リードタイムに左右されます。

このように在庫量の設定は数学的なアートですが、すべての品目で一律に在庫日数を設定するやり方で済ませてしまっている会社が少なくありません。

今回は、もうそれはやめにしましょうという話しです。

 

商品AとBの需要データは下記の通りです。

これは実例です。

 

商品Bの方が2倍くらいよく売れています。

ですので、この会社がもし3日分の在庫になるように在庫補充をしていたら、商品Bは商品Aの2倍の在庫が必要になります。

 

ここで安全在庫を計算してみましょう。

安全在庫の定義と計算方法については、こちらで解説しています。

【それは安全在庫じゃありません】正しい定義と計算方法を整理する。

 

安全在庫=標準偏差×安全係数

ですので、まず安全係数を決める必要がありますね。

今回は許容欠品率1%とすると、安全係数は.33になります。

安全在庫の計算に必要な安全係数の二通りの求め方をわかりやすく解説!

後は標準偏差を求めるだけで計算できます。

計算すると、

商品Aの安全在庫=826×2.33=1,924

商品Bの安全在庫=808×2.33=1,884

となります。

このように商品Bの方が標準偏差が小さい(需要のばらつきが小さい)ため、安全在庫は少なくて済みます。(2倍多く売れているけれど、、、)

需要が安定しているなら、保険として持っておく安全在庫は少しでいいということです。

 

求めた安全在庫を図示すると、次のようになります。

【商品A】

 

【商品B】

 

このように安全在庫は、純粋に標準偏差(ばらつき)だけで決まります。

しかし、在庫は安全在庫だけではありません。

上の図でいうと、安全在庫は平均から上の部分だけです。

下の部分、つまり平均は需要予測在庫といいます。

これら2つを合せたものが合計在庫です。

【商品A】

 

【商品B】

 

このように合計在庫で見ると、商品Bの方が多くなります。

それでも約1.35倍ですので、2倍にはなりません。

 

さて、先ほど需要平均のことを需要予測在庫といいましたが、正確にはリードタイムが1日の場合の需要予測在庫です。

なぜなら、この平均は1日当たりの需要の平均ですので、1日分の予測在庫と見なせるためです。

従って、リードタイムが2日の場合の需要予測在庫は、需要平均の2倍となります。

安全在庫と併せてグラフで描くと、次のようになります。

【商品A】

 

【商品B】

 

両商品とも合計在庫は増えますが、商品Bの方が増え方が大きいため、商品Aの在庫の約1.55倍にまで差が広がります。

このようにリードタイムが長くなると、需要予測在庫はそれに比例して増えるため、よく売れる商品ほど合計在庫は増えることになります。

 

以上をまとめると次のことがいえます。

  1. 安全在庫は需要の大小(平均)には関係なく、需要のばらつき(標準偏差)だけで決まる。
  2. 需要予測在庫需要の大小(平均)とリードタイムで決まる。
  3. 従って、合計在庫(在庫補充目標量)は需要のばらつき需要の大小リードタイムの3つを考慮すべきである。

 

すべての商品について一律に在庫日数を設定するやり方がアバウトすぎる理由がここにあります。

数学的に決めたって、当たらないものは当たらない

その通りだと思います。

しかし、当たらなかったのなら、その原因を調べて改善することができます。

一律にエイヤで決めていては、いつまで経っても改善できません。