キユーソー流通システムの売上高/事業内容/強みを物流業界経験者がわかりやすく解説します
キユーソー流通システムのキーワードは、共同物流と専用物流の2つです。
順に見ていきましょう。
(物流会社売上ランキング2021年版 20位)
キユーソー創栄会の輸送網を強みとする共同物流
外販比率は9割以上
キユーソー流通システムは1966年にキユーピーの倉庫部門が独立して誕生した会社です。
キユーソーはキユーピー倉庫の略です。
創業当初はキユーピー製品の取り扱いが中心でしたが、1980年代から冷蔵食品や冷凍食品の共同配送を核とする外販を強化した結果、2020年にはキユーピー依存率は6.5%まで下がっています。
物流子会社の優等生と言えるでしょう。
共同配送と相性の良い食品業界
食品の配送先は、店頭で売られる商品の場合、食品系の卸売会社かチェーンストアの物流センターです。
どこも似たような配送先なので、共同配送に馴染みやすいと言われています。
また、商品価格があまり高くないため、物流コストに敏感です。
これも、物流は共同化してコストを下げようという誘因になります。
また食品は取り扱い温度で常温、定温、冷蔵、冷凍の4温度帯に分けられます。
定温はあまり馴染みがないかもしれませんが大体10~20℃の間で、チョコレートやワインなどはこの温度帯で保管します。
常温であれば、物量も物流会社の選択肢もそこそこありますが、定温/冷蔵/冷凍ではそうでないため、益々共同物流に馴染みやすいと言えます。
キユーソー創栄会による輸送ネットワークが原動力
キユーソーはそれを追い風にうまく成長してきたと言えますが、その原動力となったのがキユーソー創栄会です。
キユーソーは現在、一日約3,500台のトラックを走らせていますが、それらを自社ですべて手配するには相当の資金が必要です。
ましてや、冷蔵冷凍機付きの車両であれば尚更です。
キユーソー創栄会には約70社のトラック会社が加盟していて、全国をカバーしています。
また共同物流向け物流センターも在庫型、トランスファー型含めて100か所以上あります。
トランスファー型とは、商品を在庫せずに積み替えだけ行う物流センターのことです。
荷主にとっては保管料を取られないというメリットがある反面、顧客から遠い場所に在庫があるために配送リードタイムが長くなるというデメリットがあります。
しかし、日本は国土が狭く道路網も発達しているため、リードタイムが長くなるといっても知れています。
余程大きな販売量でない限りは、トランスファー型で十分という荷主は沢山います。
そのような荷主向けにもキユーソーはサービスメニューを用意しています。
それがキユーソースルー便です。
小口の低温輸送サービスといえば、宅配便会社のクール便がありますが、キユーソースルー便はクール便と通常のキユーソー便の間を狙ったニッチサービスといえます。
キユーソースルー便もクール便と同じように料金表があります。
違いは、クール便がヤマトや佐川などの一つの会社で完結するサービスであるのに対して、キユーソースルー便は70社の共同体である点です。
全国に散らばる顧客をキユーソーがすべて開拓するのは現実的でないため、顧客開拓は70社がそれぞれ行います。
その時、定価よりも値引きして販売することは認められています。
しかし、集荷料、幹線輸送料、配達料の取り分(コスト)は決まっているため、値引きし過ぎると手元に一円も残らなくなってしまいます。
とはいえ、この業界は価格競争が厳しいので、キユーソースルー便で赤字でも他に付随してくる仕事とのトータルで利益が残れば良いという思惑も働きます。
実際、このような営業もされているようです。
近年は利益率低下が課題
キユーソーの共同物流事業は売上の約2/3を占めています。
2017年ごろまでは営業利益も2/3くらいだったのですが、2020年度には売上は2/3くらいをキープしているのに、営業利益は1/3くらいまで減少しています。
ドライバー不足による人件費の高騰やコロナの影響もあると思われますが、徐々に減少していることから上記のような値引き販売も影響しているのかもしれません。
3温度帯対応が強みのチェーンストア向けの専用物流
キユーソーのもう一つの柱が専用物流事業です。
ここには、コンビニ向け、ドラッグストア向け、食品スーパー向け、外食チェーン向けの専用物流センター運営が含まれます。
このようなチェーンストアでは、個々の店舗にそれぞれの業者から納品してもらうよりも、複数店舗向けの商品をまとめて物流センターに納品してもらってから、自分たちで各店舗向けに配送する方が効率的です。
そのための物流センターは、チェーンストアが自分たちで建設して運営するのではなく、物流業者や卸売会社がまとめて請け負うのが普通です。
キユーソーは低温物流の倉庫の運営能力に長け、強力な配送ネットワークも擁しているため、低温の物流センター、もしくは3温度帯、4温度帯の物流センターを任される機会が多くなります。
専用物流事業は、ここ数年、売上約500億円、営業利益約15億円で安定しています。
顧客が大手チェーンストアですので、適正料金収受がしやすく、利益面では共同物流事業より安定したビジネスなのだと思われます。
まとめ:高い参入障壁もデフレに勝つ利益率向上なるか
食品メーカーの物流戦略には、最近2つの流れがあります。
一つは、物流子会社を売却して物流専業業者にアウトソースすること、もう一つは共同物流です。
今年初め、キユーピーはキユーソーの株式を一部売却し、連結子会社から持分法適用関連会社にしました。
キユーソーもその流れの上にあるのかもしれません。
しかし売上に占めるキユーピーの比率が6.5%まで減っていて、既に親離れできているキユーソーにとっては、逆に経営の自由度が広がるチャンスなのだと思われます。
冷蔵、冷凍用の倉庫やトラックへの投資額は常温のそれと比較して遥かに大きく、参入障壁が高いため、今後寡占化が進む流れにも乗れるでしょう。
競争激化で利益率が下がっている共同物流事業ですが、今が正念場なのかもしれません。