容積重量の換算方法が違うのはなぜ?トラック/航空/海上貨物別に解説
容積重量とは?
輸送料金は実重量だけでは決まりません。
綿のように軽い貨物でスペースを取られてしまっては、物流会社が損してしまうからです。
そのため、1m3(立法メートル)を何kgと見なすかを物流会社で決めています。
これを容積重量と言います。
トラック/航空/船舶輸送で異なる容積重量の換算方法
しかし、容積重量の決め方は、トラック/航空/海上貨物で異なります。
トラック貨物・・・1m3を280kgと見なす
航空貨物・・・1m3を167kgと見なす
海上貨物・・・1m3を1,000kgと見なす
なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか?
それは、それぞれの輸送手段の最大積載重量と最大積載容量を見れば分かります。
トラック貨物における換算方法の根拠
まずはトラックのデータから調べてみましょう。
産業廃棄物 収集運搬車両 台数一覧表 に各種トラックの最大積載重量と荷台の内寸が載っています。
荷台の上がオープンですと高さによって積む量が違ってしまいますので、コンテナトラックのデータを参考にします。
それぞれのトラックの積載比重(kg/m3)を計算すると、次のようになります。
平均を取ると、352 kg/m3になります。
つまり全部の貨物が、1m3当たり280kgであれば、満載しても積載重量をオーバーしないことになります。
13tコンテナ車では280 kg/m3以下ですが、トータルで考えて280 kg/m3なら許容できるということです。
航空貨物における換算方法の根拠
航空貨物の容積重量の計算方法には2種類あります。
- 容積重量(kg)=縦(cm)×横(cm)×高さ(cm)÷6,000 (cm3/kg)
- 容積重量(kg)=縦(cm)×横(cm)×高さ(cm)÷5,000 (cm3/kg)
IATA(国際航空運送協会)では前者を採用しており、こちらが一般的です。
しかし、DHLやFedExでは後者を採用しています。
DHL >> DHL | DHL Expressの容積重量計算 | 日本語
FedEx >> 貨物の梱包方法|FedEx 日本
これを1m3当たりの重量(kg)に変換すると、
100cm×100cm×100cm÷6,000 cm3/kg=1,000,000cm3÷6,000 cm3/kg=167kg
となります。
トラックの場合より、軽い貨物を前提にしていることが分かります。
では、実際の貨物機の貨物スペースはどうなっているのでしょうか?
日本貨物航空|航空機・ユニット – NCAに貨物機の最大積載重量と貨物室容量のデータが載っています。
トラックの場合と同様に、積載貨物の比重を計算してみると次のようになります。
IATAの基準が167 kg/m3ですので、貨物スペースいっぱいに積めると積載重量をややオーバーしてしまいます。
しかし、実際はスペースいっぱいには積められずにデッドスペースができますので、重量オーバーになることはないと考えられます。
また、航空貨物は旅客で余ったベリースペースを使って運ぶこともあります。
この場合は、貨物便よりもやや大きな比重の貨物を載せられますので、トータルで考えても167 kg/m3の前提にしておけば問題ないわけです。
海上貨物における換算方法の根拠
船の大きさはトン数で表します。
トンと聞くと重さの単位に思えますが、単位はm3で容積を表します。
そして次の式で定義されます。
トン数 = (0.2 + 0.02log10V)・V ・・・ 式1
V:船内の囲まれた部分の全容積(m3)
また、船全体の大きさを総トン数で表し、貨物スペースの大きさを純トン数で表します。
これに対して、船の重さは排水量で表し、単位はt(正確にはt重)です。
なぜこのような表し方をするのかと言うと、アルキメデスの原理より、船の重量と船が押しのけた水の重量が一致するためです。
そして排水量には次の3種類があります。
- 満載排水量
貨物や燃料などを満載している状態での排水量(満載状態での船全体の重さ)
- 軽荷重量
貨物や燃料などがない状態での排水量(船自体の重さ)
- 載荷重量
積載できる貨物や燃料などの総重量(満載排水量-軽荷重量)
そして、普通の貨物船における概略数値は下記の通りです。
日本財団図書館(電子図書館) 初級講習用指導書(電気装備概論編)より抜粋
このうち、載荷重量を純トン数で割れば、船で積める貨物の比重が求まります。
しかし、純トン数は実際の容積に係数をかけて変換した数値です。
まずは式1の関係を使って、純トン数62を実際の容積に換算する必要があります。
式1より、
62=(0.2 + 0.02log10V)・V
ですので、これをVについて解くと、
V=250m3
となります。
従って、船で積める貨物の比重は
150,000kg÷250m3=600 kg/m3
となります。
これは、トラックや飛行機の貨物比重よりだいぶ高くなっています。
しかし、船会社は1m3を1,000kgと見なして集荷していますので、貨物全部が1,000 kg/m3の比重ですと、重量オーバーになってしまいます。
でも大丈夫なようになっているのです。
この料金体系が適用されるのはLCL(Less than Container Load)と言って、コンテナ満載にならない少量貨物に限られます。
ほとんどの貨物はFCL(Full Container Load)で、それらは比重が500 kg/m3以上にはならないようになっています。
なぜなら、コンテナを港へ運んだり、港から運び出す時には、トラックを使う必要があり、道路交通法の規制によって縛られているためです。
これは道路の強度や、トラックの最大積載重量の制約を受けるためです。
そのため、トータルで600 kg/m3を超えることは、まずないのです。
工学的に説明する
以上、最大積載重量と最大積載容量から考察してきましたが、工学的に考察することもできます。
まず、トラックの場合、ディーゼルエンジンの熱効率はせいぜい40%です。
走っているとエンジンが熱くなったり、温かい排気ガスが出たりするのは、そうやって熱がムダに外に逃げているためです。
このように、重たいものを運ぶための仕事量、つまりエネルギーは熱効率に制約されます。
トラックを走らせるためには、そのために必要なエンジンを始めとする機構が必要で、それらを除いて貨物を載せられる重量やスペースは自ずと絞られてしまいます。
どのメーカーが造っても大きな違いはありません。
熱効率は技術の進歩により少しずつは良くなっていますが、劇的に変わることはないのです。
航空機も同じです。
ジャンボ機は全長70m、全幅65mくらいあり、重さは180tもあります。
どうしてこんな重い物体が飛ぶのか不思議に思いますが、これを全長10cmに縮めたとすると、重さ0.5gになります。
これは紙飛行機と同じくらいだそうです。
つまり、何も不思議なことはなくて、空を飛ぶ物体というのは皆このくらいの大きさと重さの比率になるということです。
そこから飛行機を飛ばすために必要なエンジンなどの機構を差し引けば、貨物を載せるスペースと重さの比率は皆似たようなものになってしまうのです。
その点、船舶は有利です。
水の浮力を利用できるからです。
アルキメデスの原理により、原理的には水と同じ比重の貨物、つまり1,000 kg/m3の貨物を載せられます。
船を形作る鉄や、動力源となるエンジンなどの機構を差し引いても、600 kg/m3という重たい貨物を積むことができるのは、浮力の支えがあるからだと言えます。
国際貨物の99%以上が船で運ばれているというのも、頷けますね。
この原理を利用した航空運賃を賢く節約する方法について、【比重と運賃負担力】海外通販で買うとお得な商品は何か考察してみたで解説しています。