摩擦力/仕事/エネルギーの関係をわかりやすく解説【エネルギー保存則の導出】

2023年10月13日

前回の記事で、トラックの制動距離を下記の式から求めました。

トラックの制動距離に重量は関係するのか?【エネルギー保存則だけでは不十分!?】

½mv2=μmgL

μ:タイヤと路面の摩擦係数

L:制動距離(m)

m:トラックの質量(kg)

v:トラックの速度(m/s)

g:重力加速度(9.8m/s2

 

そもそも、なぜこの式になるのでしょうか?

もう少し詳しく解説します。

 

仕事=力×距離

下記の記事で物体に加速度を与えるのが「」で、単位はN(ニュートン)、1Nは次のように定義されることを解説しました。

質量1kgの物体に作用して1m/s2 の加速度を生じさせる力

床荷重の単位はkg/m2?N/m2?皆が間違えるようになった経緯から解説

 

この「力」に距離をかけたものが「仕事」です。

そして、1Nの力で1m動かした仕事を1 J(ジュール)と定義します。

1 J=1N×1m=1kg×1m/s2×1m

 

 

摩擦力は力の一種

ツルツルの平面の上では、物体がよく滑ります。

例えば、氷の上を滑るカーリングの石です。

 

しかし、道路の上では同じ石でもあまり滑りません。

 

これを、氷は摩擦係数が小さく、道路は摩擦係数が大きいと言います。

物理の記号ではμ(ミュー)で表します。

 

また、物体の重さによっても、滑り易さは違います。

重い方が滑りません。

言い換えると、重い物体の方が摩擦力が大きいのです。

 

つまり、摩擦力は摩擦係数μと物体の重さに比例します。

式で書くとこうです。

F=μmg

F:摩擦力

μ:摩擦係数

m:物体の質量

g:重力加速度

 

そして、力に距離をかけたものが仕事ですから、L(m)滑ったらμmgL の仕事をしたことになります。

 

エネルギー保存則の導出

エネルギー=仕事

動いている物体が他の物体にぶつかると、その物体を動かします。

つまり、仕事をさせます。

つまり、動いている物体は、他の物体に仕事をさせる能力を持っているわけで、その能力を「エネルギー」と言います。

このエネルギーは物体の質量に比例し、動いている速度の2乗に比例することが知られています。

そして½mv2のように表されます。

他の物体に仕事をさせる能力がエネルギーですので、仕事とエネルギーは同じです。

 

速度の変化はエネルギーの増減

粗い床の上に物体を滑らすシーンを考えてみましょう。

その物体を放った瞬間の速度は、段々と減速していきますね。

放った瞬間の速度をv1、a秒後の速度をv2、a秒でL m滑るとしましょう。

物体の質量はmとします。

 

エネルギーは

½mv12½mv22

だけ減少しますね。

 

摩擦力による仕事

また、このエネルギーの減少は、摩擦力によって負(マイナス)の仕事をされたからと考えることができます。

摩擦力による仕事は

μmgL

です。

 

2つはイコール

従って、

½mv12½mv22=μmgL

が成り立ちます。

 

v2がゼロ、つまり物体が止まったとすると、

½mv12=μmgL

となり、これが冒頭の式になるのです。