物流センターにおけるPLCの活用事例|シーケンス制御から無線LAN通信まで

2023年10月13日

PLC(Programmable Logic Controller)は電気配線を簡単にし、仕様変更にもソフトの変更で簡単に対応できます。

また各所に散らばったPLC同士を通信させることにより、異なる機器間で信号をやり取りしたり、データの一元管理も可能になります。

そのようなPLCが、物流センターのどういう所で活躍しているのか見ていきましょう。

 

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搬送コンベアにおけるシーケンス制御

トラックから降ろした貨物を入庫作業場へ移動したり、逆に出庫作業場からトラックの荷積み場に移動したりするのに、電動ローラが用いられることがあります。

そして、電動ローラの前後には大抵の場合、バッファスペースとしてフリーローラが取り付けられます。

 

フリーローラ1上に置かれた貨物は、後から来る貨物により押されてセンサー1の位置まで来ます。

その時、センサー2の位置に前の貨物がなければ、電動ローラ1がOnしてセンサー2の位置まで動かします。

更にセンサー3の位置にも前の貨物がなければ、電動ローラ2がOnしてセンサー3の位置まで動かします。

 

この場合、3つのセンサーからのOn/Off信号が入力、2つの電動ローラへ出すOn/Off信号が出力となります。

3つの入力信号のOn/Offの組み合わせにより、2つの出力信号をOn/Offさせますので、ラダー回路で簡単に表すことができます。

PLCが最も得意な分野と言えます。

 

搬送エレベータにおけるシーケンス制御

多層階の物流センターにある貨物用搬送エレベータにもPLCが使われています。

  1. 3階にいるあなたが1階へ降りるために「⇩」のボタンを押す
  2. エレベータが3階に移動するためモータがOnになる
  3. 3階に着いたらモータがOffになる
  4. 扉が開く
  5. タイマーで5秒経った、もしくはあなたが「閉」ボタンを押したら扉が閉まる
  6. 1階に移動するためモーターが作動する

 

この場合、「⇩」や「閉」のボタン3階に着いたことを検知するセンサーからの信号がOn/Offの入力信号としてPLCに入り、内部タイマーのカウントデータも併せてモータをOnさせるかOffさせるかを判断します。

これもPLCが得意とするところです。

 

自動倉庫におけるシーケンス制御

自動で空いているロケーションに棚入れしてくれ、出庫する時にも自動でピッキングして手元まで運んでくれる自動倉庫があります。

 

PLCは何がどこのロケーションに保管されているかとか、同じ商品が複数のロケーションにある場合、どれを優先して出庫すべきかなどの判断は苦手です。

そのような苦手な判断は、WCS(Warehouse Control System)などの上位システムに任せます。

そして、何をどこのロケーションから出庫しなさいという指示をもらった上で、モータを動かして狙ったロケーションから商品を取り出してくるという部分だけをPLCが担います。

PLCは予め決められた手順を忠実に実行することが得意だけれども、自分で判断することは苦手な指示待ち君なのです。

【PLC入門】電気配線を簡単にしてシーケンス制御をソフトで実現する

 

そのように言うとあまり優秀でない制御機器のように聞こえますが、高度なこともやっています。

例えば、貨物をピッキングして戻ってくるまでの時間は、自動倉庫の生産性に大きく影響

します。

そのため、ロケーションの間を移動するスタッカークレーンはなるべく速く動くことが求められます。

しかしあまり速すぎると目的の位置でピタッと停止することが難しくなります。

そのため、目標ロケーションの手前のギリギリの場所で減速させるような制御を、センサーを付けたりPLC内で距離を計算したりして行っています。

 

冷凍冷蔵倉庫におけるフィードバック制御

冷凍倉庫や冷蔵倉庫はエアコンと同じで、室温を設定値にいかに早く、かつ省エネルギーで追従させるかが性能を左右します。

そのためにはPLCが得意なシーケンス制御だけでは不十分で、フィードバック制御が必要になります。

フィードバック制御とは、この場合だと、室温と設定値の差を見ながらエアコンのモーターを強めたり弱めたりすることです。

 

そのためによく採用されるのがPID制御という方式です。

PIDとはProportional(比例)Integral(積分)Differential(微分)の略です。

室温と設定値の差(比例)だけでなく、どのくらいの速さで室温が設定値に近づいているか(微分)とか、室温と設定値の差が小さくなってからどれくらい時間が経っているか(積分)も考慮しながらモーターの強弱を制御します。

 

モーターを強めたり弱めたりするのにインバータを使います。

モーターを強めるとは、回転数を上げることなのですが、回転数は周波数で決まってしまいます。

東日本は50ヘルツ、西日本は60ヘルツですね。

この周波数を変えるのは結構面倒で、一旦交流を直流に変え、改めて希望する周波数の交流に変えないといけません。

発電や送電の原理、三相電源のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。

東日本と西日本の間で電気を融通し合う時はこのように面倒なことをやっているのですが、それを個々の機器単位でできるようにするのがインバータです。

最近のエアコンはインバータ付きが主流ですが、このような面倒な仕組みをエアコンに付けるために値段も高くなります。

でも、その分、温度制御の性能が良くなったり、省エネにもなるので、消費者から指示されているのです。

インバータがないと、室温が設定値に近づいてきたらモーターをOffにして、離れてきたらOnにするというOn-Off制御になってしまい、設定値からの誤差が大きくなったり、頻繁にモーターをOn-Offすることで電気も多く消費することになります。

 

このようなPID制御は本来PLCの苦手とすることなのですが、とても需要の高い制御方式なので、専用のモジュールを付けることにより実現可能になっています。

つまり、PLC一つでシーケンス制御もPID制御も自由に組み合わせられるので、冷蔵冷凍倉庫の制御でもよく使われています。

 

搬送ロボットにおけるシーケンス制御と無線LAN通信

最近は物流センターの中で貨物を運ぶロボットが見られるようになってきました。

テレビやYouTubeで、アマゾンの物流センターの中を棚を持ち上げながら動き回るロボットを見たことがある人もいるのではないでしょうか。

 

これらのロボットにもPLCが搭載されていて、センサーからの入力信号を処理して、走るスピードや方向を出力として制御すると同時に、無線上位システムと信号をやり取りしながら全体の調和を取っています。

 

例えば、3階にある貨物を1階にロボットで運ぶ場合、ロボットが3階の搬送リフト前に到着したとしましょう。

ロボットは搬送リフトの「⇩」ボタンを押すことができませんので、その代わりに搭載されているPLCから上位システムに信号を送ります。

搬送リフトも別のPLCで制御されていますので、上位システムからリフトのPLCに次のような信号を送ります。

ドアを開けなさい

⇩(10秒後)

ドアを閉めなさい

1階に行きなさい

ドアを10秒間開けなさい

 

このように移動型ロボットが普及してくると、物流センターのいろいろな所にあるPLCが上位システムと無線LANで通信することが当たり前になっていくでしょう。