トラック運送の燃料サーチャージの計算方法

2021年6月12日

日本では燃料価格が高騰しても荷主に価格転嫁できないトラック業者が沢山います。

燃料価格は経営努力ではどうにもならないことで、船会社や航空会社だって燃料サーチャージとして転嫁するのが当たり前なのに日本だけなぜ?と思ってしまいますが、個人の力ではどうにもできず仕方ありません。

 

このようにガラパゴス化している日本に対して、海外ではトラック運送でも燃料調整条項を契約時に取り決めておくのが一般的です。

それは合理的でいいのですが、残念なことに調整式に疑問を持つことが少なくありません。

見積り価格にどうしても目が行ってしまい、燃料調整式はおまけくらいにしか思っていないからでしょうか?

でも、将来、燃料価格が大幅に変動すると利益に大きな影響が出てしまいます。

今回はアジアの某国で実際にあった事例を基に、燃料調整式を数学で読み解きます。

これを読めば、あなたも次回の契約更新時に燃料調整式を変えたくなるでしょう。

 

燃料価格が下落すると物流会社はウハウハ

ここでは分かり易いように燃料価格を円換算して話しを進めていきます。

某国では、輸送契約時に下記の燃料調整式を入れるのが一般的です。

 

Q=P*(100-(A-B)*0.3)/100

A:基準となる燃料価格(円/L)

B:先月平均の燃料価格(円/L)

P:基準燃料価格時の運賃(円)

Q:今月の運賃(円)

 

大体どこの会社でも燃料価格が1円下がるごとに運賃を0.3%下げ、逆に燃料価格が1円上がるごとに運賃を0.3%上げるという調整の仕方をしていました。

この国は日本と比べて人件費はかなり安く、トラック購入価格はやや高く、燃料代は同じくらいです。

従って原価に占める燃料代の割合は50%くらいを占め、車両費が20%くらい、人件費が10%くらいになるのが一般的です。

このような原価構成の会社が、燃料価格が下がると利益がどのように変わるかシミュレーションしてみましょう。

 

本社費用は原価の10%、燃料の基準価格は90円/Lとします。

下表は燃料価格が75円/L、60円/L、45円/Lに下落した場合のシミュレーション結果です。

このシミュレーションの中で特別な計算をしているのは、赤枠で囲んだ箇所だけです。

 

燃料価格75円の時の売上=118円*(100-(90-75)*0.3)/100=112円

燃料価格60円の時の売上=112円*(100-(75-60)*0.3)/100=107円

燃料価格75円の時の売上=107円*(100-(60-45)*0.3)/100=102円

燃料価格75円の時の燃料代=50円/90円*75円=42円

燃料価格60円の時の燃料代=42円/75円*60円=33円

燃料価格45円の時の燃料代=33円/60円*45円=25円

 

シミュレーション結果から、燃料価格が下がれば下がるほど利益率が高くなることが分かります。

特に燃料代が半分になると、利益率は約2倍になります。

物流会社、儲けすぎですね。

ウハウハになる理由は、原価に占める燃料代の割合が高いため、もっと運賃を下げられるはずなのに、運賃の下げ(調整割合)が少なすぎるからです。

 

燃料価格が上昇すると物流会社は赤字

以上は荷主にとっての弊害ですが、物流会社にとってはもっと大きな弊害があります。

もし燃料価格が上がると、今度は物流会社の利益は減る一方で、しまいには赤字になってしまうからです。

こうなる理由も、原価に占める燃料代の割合が高いため、もっと運賃を上げられるはずなのに、運賃の上げ(調整割合)が少なすぎるためです。

 

実態に合わせた燃料調整式はこうなります

物流会社の利益を変えないようにするためには、どのような調整式にすべきか計算してみましょう。

2008年に日本の国土交通省から「トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン」が出されていますが、距離制運賃の場合の調整式は次式のように書かれています。

トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン

燃料代は

燃料代(円)=走行距離(Km)÷燃費(Km/L)×現在の燃料価格(円/L)

で計算できますので、燃料調整率は

燃料調整率(%)=燃料サーチャージ額÷燃料代=燃料価格上昇額÷現在の燃料価格×100

で計算できます。

従って、燃料価格が90円/Lから1円/Lだけ上昇した場合の燃料調整率は下記のようになります。

燃料調整率(%)=1÷90×100=1.1%

 

さて先ほどのシミュレーションでは、燃料価格が基準価格の90円/Lの時の原価構成は下記のように仮定していました。

つまり運賃(=売上)に対する燃料代の割合は、50÷118で42%です。

ということは、燃料代が1.1%変わると、運賃は1.1%×42%=0.46%の影響を受けるということになります。

つまり、

燃料価格が1円/L上昇 ⇒ 燃料代が1.1%上昇 ⇒ 運賃は0.46%上昇

ということですので、燃料価格が1円上昇するごとに運賃を0.46%上げ、逆に1円下落するごとに運賃を0.46%下げるべきなのです

 

すると下図のように、燃料価格によらず物流会社の利益はほぼ一定になります。

実は、0.3%の約1.5倍も調整しないといけなかったということです。

 

まとめ

以上のようにこの燃料調整式は実態に即していないと思うのですが、不思議なことにこの国ではこの調整の仕方が一般的です。

参考までに、この調整式が前提としている原価構造を計算してみましょう。

 

運賃(売上)に占める燃料代の割合をR%とすると、

1.1%×R=0.3%

ですので、Rは27%となります。

 

この27%という数字は日本の物流会社なら妥当性がありますが、この国では妥当とは思えません。

勿論、市場の燃料価格が大幅に下落すれば27%という数字も妥当性を持ってきますが、基準となっている燃料価格はむしろ高い水準です。

なのに、なぜこの調整式が広く採用されているのでしょうか?

 

もしかすると、この燃料調整式を最初にこの国で導入した会社がとても従業員に優しい会社だったのかもしれません。

高い給与を払い、立派な本社ビルを持っていたのでしょうか。

このように本社コストが高かった会社だったのであれば、27%という数字は頷けます。

 

しかし仮にそうであっても、自分の会社がそのような原価構造でないのなら、自社に見合った燃料調整式にすべきでしょう。

さもなければ燃料価格高騰時に経営が傾いてしまいます

 

一方、荷主会社の立場からすると理にかなっているとも言えます。

燃料価格高騰時には運賃が上がって物流コストが上がってしまいますが、この調整式だとあまり上がらないため助かりますね。

一方、燃料価格下落時には何の経営努力もせずに物流コストが下がりラッキーな状況ですから、運賃の下がり方が小さくても許容できるのです。

もしかすると、燃料調整式が理にかなっていないことは荷主様はとっくにお見通しかもしれませんね。

燃料価格下落時にウハウハしつつも顔に出さない物流会社は、実は荷主の手の上で転がされているだけなのかも。。。