マスターB/L、ハウスB/L、ダイレクトB/Lの違いと見分け方について解説

2023年10月13日

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世界の大手3PLは皆フォワーダー

自社では輸送機関を持たずに、他社のものを利用して輸送サービスを提供している会社を利用運送業者と言いますが、中でも海上輸送や航空輸送での利用運送業者はフォワーダーと呼ばれます。

いわば人のふんどしで相撲を取るようなビジネスですが、世界のトップ3PL企業はほとんどがフォワーダーで占められています。

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やはり足の長い国際物流では、それだけ運賃も高く取れることが効いています。

また貨物量が多いほど仕入れ値が下がり競争力が高くなるため、昔からやっていてコツコツと取扱量を増やしてきた老舗の大手による寡占化が進む業界であるともいえます。

 

このように国際物流ではよく登場するフォワーダーですが、物流会社でもフォワーディングを手掛けている会社は一握りなので、どういう仕組みなのかよく分からないという人も多いと思います。

また国際ビジネスを手掛ける荷主にとっても、フォワーダーとは付き合いがあるけれども業界用語がよく使われるし何だかよくわからない料金も請求されるし、伏魔殿のように感じている方も多いのではないでしょうか。

海上輸送でも航空輸送でも仕組みは同じですが、今回は少し複雑な海上輸送で説明します。

海上輸送におけるフォワーダーはNVOCC(Non Vessel Operating Common Carrierとも呼ばれます。

 

マスターB/L、ハウスB/Lとは?

ハウスB/Lはフォワーダーが発行

宅配便を頼むと貨物と引き換えに送り状が発行されますが、海上輸送ではB/L(Bill of Lading;船荷証券)が発行されます。

宅配便では荷受人は送り状を見せなくても貨物を受領できますが、海上輸送では基本B/Lと交換しないと貨物を受領できないという違いはあります。

また、B/Lは裏書によって転売が可能という有価証券としての側面も持ちます。

人のふんどしで相撲を取るフォワーダーも、顧客の貨物を受領したらB/Lを発行します。

これをハウスB/Lといいます。

 

マスターB/Lは船社が発行

一方、人のふんどしで相撲を取るフォワーダーは自分では貨物を運ぶ船を持っていませんので、船会社に貨物を持ち込みます。

この時、貨物と引き換えに船会社からフォワーダーにB/Lが発行されます。

これがマスターB/Lです。

 

フォワーダーが存在する理由

なぜこのように人のふんどしで相撲を取るような会社が存在しているかというと、大口割引を得られることが一番の理由です。

フォワーダーは日々の営業活動で沢山の顧客の貨物を集めていますので、船会社に対して

「うちはこれだけ貨物を集めているんだからまけてね」

ということができます。

トヨタみたいに大きな会社になれば単独でそのような交渉を船会社とできますが、普通の会社は相手にされません。

ですので、フォワーダーに取られる手数料を含めてもフォワーダーを通す方が安くなりますし、そもそも中抜きして船会社と契約できる会社は限られます。

 

普段目にするのはハウスB/L

ということで、顧客にはフォワーダーからハウスB/Lが発行されますが、裏ではマスターB/Lが船会社からフォワーダーに発行されています。

但し、マスターB/Lはフォワーダー止まりで、顧客に渡されることは普通ありません。

普段目にするB/LはハウスB/Lです。

 

船会社と直契約する時はマスターB/Lだけ

一方、トヨタのような大きな会社は、自分たちで直接船会社と交渉する方がフォワーダーを通すより安くなるので船会社と直契約します。

この場合、顧客には船社から直接マスターB/Lが発行されます。

このB/LはダイレクトB/Lと呼ばれることもあります。

 

FCL/LCLでのフォワーダーの役割り

FCL/LCLとは?

船に載せるコンテナは基本40フィートコンテナと20フィートコンテナの2種類があり、前者は約60m3、後者は約30m3の貨物を積むことができます。

このコンテナを1個単位で借り切る輸送形態をFCL(Full Container Loadといいます。

しかし20フィートコンテナでも30m3のスペースがあり、荷主によってはこれでは大きすぎる場合があります。

そういう場合は複数荷主の貨物を1つのコンテナに混載します。

この輸送形態をLCL(Less than Container Loadといいます。

引っ越し荷物は夫婦2人だと大体5m3くらいの量なので、海外引越の場合は4世帯分くらいを20フィートコンテナに混載していることになります。

 

LCLにおけるフォワーダーの役割り

フォワーダーは船のスペースをバラ売りしているようなものなので、フォワーダーが複数の小口貨物を1本のコンテナにまとめて船社に委託するLCLの方がイメージし易いと思います。

この場合は、複数の荷主の貨物をフォワーダーの倉庫に持ってきて、コンテナに積めて貨物の明細をコンテナ単位で作るという付加価値をフォワーダーは付けています。

逆に輸入する時には、1本のコンテナに混載してある貨物を複数の荷主別に仕分けるという付加価値を提供しています。

 

FCLにおけるフォワーダーの役割り

これに対してFCLの場合には貨物を積んだコンテナを荷主から受けて船社に渡すだけですので、何の付加価値も付けていないように思えます。

しかしこの場合も、先に述べたようにフォワーダーを通す方が安くなるというメリットが荷主にはあります。

LCLの場合でも勿論このメリットはあります。

 

フォワーダーの商売を簡単にまとめると次のようになります。

 

マスターB/LとハウスB/Lの見分け方

マスターB/L

荷主が普段目にすることはありませんが、次のようになっています。

SHIPPER:積み地におけるフォワーダーの事務所、もしくは代理店

CONSIGNEE:揚げ地におけるフォワーダーの事務所、もしくは代理店

発行社:船社

(下記のB/LサンプルはHASCO JAPAN社のHPから引用させていただきました。https://www.hascojapan.co.jp/asp/newsitem.asp?nw_id=419

 

ハウスB/L

こちらが普段目にするB/Lで、次のようになっています。

SHIPPER:荷主が指定したシッパー

CONSIGNEE:荷主が指定したコンサイニー

発行社:フォワーダー

 

ダイレクトB/L

トヨタのような大企業が船社と直接契約する場合です。

フォワーダーの出る幕はなさそうに思えますが、海上輸送におまけで付いてくる通関や国内輸送等もまとめてフォワーダーが手配する場合は、次のようなB/Lをフォワーダー経由でやり取りします。

SHIPPER:荷主が指定したシッパー

CONSIGNEE:荷主が指定したコンサイニー

発行社:船社

 

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Posted by ロジギーク