【消費税】フォワーダーからの請求項目を課税/不課税/非課税/免税に分類

2024年5月18日

◆仕事や勉強の息抜きに。。。

なぜ消費税がかかる項目とかからない項目があるのか?

フォワーダーからの請求項目には、消費税がかかるものもあればかからないものもあります。

海上運賃に消費税はかからないことは聞いたことがあっても、通関料やTHCやD/O Fee等は迷う人も多いのではないでしょうか?

また同じ海上運賃でも、国外から国内の運賃と国外から国外の運賃とでは、消費税還付の可否に違いがあります。

海外では消費税の代わりに付加価値税(Value Added Tax:VATが課される国が多いですが、考え方は概ね同じです。

ですので、各請求項目について消費税がかかる/かからないの理由がわかっていれば、海外から請求される料金項目のチェックにも応用が効きます。

まずは消費税の基本的な仕組みから見ていきましょう。

 

消費税の仕組み

消費税とは消費した金額に応じて消費者に課される間接税です。

間接税とは、納税者(税金を税務署に収める人)と担税者(税金を負担する人)が異なる税金のことです。

つまり、消費者が負担する税金なのですが、税金を税務署に収めるのは別の人です。

「別の人」というのが、消費者にモノを売った小売業者だったらわかりやすいですね。

消費者は200円のものを買うと20円の消費税も一緒に小売業者に支払うので、小売業者が消費者の代わりに20円を税務署に納税してくれているのだと考えればいいからです。

しかし実際は小売業者だけでなく、原料を供給した業者も納税しています。

そして、その納税額は合計で20円になります。

これを図にすると次のようになります。

 

ジュース屋はみかん農家から100円でみかん(原料)を仕入れます。

この時、ジュース屋はみかん農家に10円の消費税も払います。

そしてジュース屋はみかんをジューサーにかけて、それを200円で消費者に売り、20円の消費税を消費者から徴収します。

この時点で、みかん農家は10円、ジュース屋は20円の消費税を預かっていることになります。

これらをすべて税務署に収めると合計で30円になり、納税しすぎです。

そこでよくよく考えると、みかん農家が既に10円の消費税を納税しているので、ジュース屋は20円から10円を引いた残り10円だけを納税すればいいことがわかります。

このように、預かった消費税から支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除といいます。

以上のように消費者が支払った税金を、サプライチェーンの各企業が代わりに税務署に納税するのが消費税の仕組みです。

海外の付加価値税(VAT)は、消費に課税するのではなく企業が生み出した付加価値に課税するという建前では異なりますが、仕入税額控除の考え方は同じです。

 

消費税の課税対象

消費税は日本国が課税している税金なので、国内の消費にしかかかりません。

正確には、

国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、役務の提供や外国貨物の引き取り

No.6101 消費税のしくみ – 国税庁 より抜粋

が消費税の課税対象です。

 

不課税/非課税/免税の違い

従って海外での買い物に課税されないのはもちろん、国内であっても上記の定義に該当しない寄付金や株式配当、保険金等にも課税されません。

このように上記の課税対象の定義から外れる取引を不課税取引といいます。

 

これに対して、本来は課税対象の定義に含まれるものの、課税対象になじまないものや社会政策的配慮から消費税を課税しない取引があり、これを非課税取引といいます。

課税対象になじまない取引の例としては、土地や有価証券の譲渡、保険料、行政サービスの手数料等があります。

また社会政策的配慮に基づいて課税対象から除外する取引の例としては、社会保険サービス、社会福祉サービス、教科書の譲渡等があります。

 

そして最後に国際物流に密接に関係してくるのが免税取引です。

商品の輸出や国際輸送、外国にある事業者に対するサービスの提供などのいわゆる輸出類似取引等が対象になります。

ここで少し疑問が湧かないでしょうか?

国外へ輸出するのだから、そもそも国内取引ではないだろ、つまり不課税なのではないかという疑問です。

 

しかし、消費税は国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等が課税の対象です。

そして譲渡等が国内で行われたかどうかの判定は、譲渡時における資産の所在場所で判定されます。

日本から輸出するということは、日本にあるモノを譲渡することなので資産の所在場所は日本になります。

ですので、輸出は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡」に当たりますが、実際に輸出取引であったことが証明できれば免税になります。

 

消費税還付にインコタームズは関係するのか?

以上が不課税/非課税/免税の違いですが、この違いは結構重要です。

なぜなら仕入れ時に支払った消費税を控除できるのは、課税取引か免税取引の時に限られるからです。

更に免税取引では買い手から徴収する消費税がない(0%消費税)ため、仕入れ時に支払った消費税は還付してもらえます。

不課税取引や非課税取引では消費税の還付はありません。

ですので、免税取引に当たるかどうかの判定は重要なのです。

 

実際、輸出取引であっても、免税取引に当たらない(消費税還付が認められない)と判定されるケースもあります。

よくある誤解が、インコタームズがEXWの場合には免税にはならず、消費税は還付されないという説です。

EXWとは売り手の軒先渡しで、そこから買い手に届けるまでのすべての物流費は買い手負担になるという条件です。

もし日本から国外へ輸出する場合、EXWだと商品の所有権が売り手の軒先、つまり日本で買い手に移転するため、国内取引に当たり、消費税の課税対象になるという主張です。

 

しかし、インコタームズで規定しているのは費用負担危険負担の分岐点だけで、所有権についてはノータッチです。

つまりEXWであっても、所有権が売り手の軒先で移転するとは限りません。

実際、EXWであっても、売買契約書に「所有権が移転するのは買い手の国でB/Lを買い取り後」のように、国外で所有権が移転することを明記してあれば消費税は還付されます。

もし「EXWだから消費税は還付されない」と諦めている場合には、所有権の移転場所を確認して税務署にチャレンジしてみましょう。

インコタームズと消費税の還付は関係ありません。

 

フォワーダーの請求項目を分類する

商品の輸出入をフォワーダーにお願いした場合、請求される項目には下記のようなものがあります。

  • 海上輸送費
  • 通関料
  • D/O Fee
  • DOC Fee
  • THC
  • デマレージ
  • ディテンション

これらが課税/不課税/非課税/免税のいずれに当たるのかを見ていきましょう。

 

海上輸送費

これは、

消費税法基本通達 7-2-1 輸出免税等の具体的範囲

(3) 国内及び国外にわたって行われる旅客又は貨物の輸送(国際輸送の一環として行われる国内輸送区間における輸送を含む。)

の「(国外から)国内にわたって行われる貨物の輸送」に該当するため免税になります。

この海上輸送費には基本運賃だけでなく、BAF (燃料費調整係数、Bunker Adjustment Factor)やCAF (通貨変動調整係数、Currency Adjustment Factor)等のサーチャージも含まれます。

 

ちなみに国外から国外への輸送は国外取引に該当するため、そもそも消費税の課税対象にならず不課税になります。

 

通関料

これは、

消費税法基本通達 7-2-13 指定保税地域等における役務の提供の範囲等

令第17条第2項第4号《輸出取引等の範囲》に規定する「指定保税地域…における輸出しようとする貨物及び輸入の許可を受けた貨物に係るこれらの役務の提供」には、指定保税地域等にある輸出しようとする貨物又は輸入の許可を受けた貨物に係る荷役、運送、保管、検数、鑑定、検量又は通関手続等の役務の提供が含まれる。

の「通関手続等の役務の提供」に該当するため免税になります。

 

D/O FeeとDOC Fee

フォワーダーは荷主から預かったB/Lを船会社に提示し、それと引き換えに船会社からD/O(デリバリーオーダー)を入手します。

D/O Feeとは船会社がD/Oを発行する手数料です。

フォワーダーからの請求があるケースもあります。

またDOC FeeとはDocumentation Feeとも呼ばれ、輸出の場合はB/Lの発行手数料、輸入の場合はA/N(アライバルノーティス)の発行手数料です。

 

これらも上記の「指定保税地域等にある輸出しようとする貨物又は輸入の許可を受けた貨物に係る荷役、運送、保管、検数、鑑定、検量又は通関手続等の役務の提供」に含まれると考えることもでき、実際、長年多くのフォワーダーは免税と解釈し、顧客から消費税の徴収を行っていませんでした。

しかし2014年の大阪国税不服審判所の判決にて、課税対象という判例が出ました。

これにより、2014年以降はすべてのフォワーダーが消費税を徴収するようになっています。

 

Doc Feeの詳細についてはこちらをご覧下さい。

Doc Feeって何?世界各国の料金相場もOrigin/Destination別に一挙公開

 

THC

THC(ターミナルハンドリングチャージ)の内容については、ターミナルハンドリングチャージって何?THCのことだけをまとめて解説を参照してみて下さい。

 

これも、

消費税法基本通達 7-2-13 指定保税地域等における役務の提供の範囲等

令第17条第2項第4号《輸出取引等の範囲》に規定する「指定保税地域…における輸出しようとする貨物及び輸入の許可を受けた貨物に係るこれらの役務の提供」には、指定保税地域等にある輸出しようとする貨物又は輸入の許可を受けた貨物に係る荷役、運送、保管、検数、鑑定、検量又は通関手続等の役務の提供が含まれる。

の「指定保税地域等にある輸出しようとする貨物又は輸入の許可を受けた貨物に係る荷役、運送、保管」に該当するため免税になります。

 

世界各国のTHCの料金相場については、こちらをご覧下さい。

ターミナルハンドリングチャージの相場はいくら?世界のTHCを徹底比較

 

デマレージ

輸入時に船から降ろされたコンテナは通関が終了するまでCY(コンテナヤード)に置かれます。

通常、コンテナは船会社の持ち物ですので、船会社は荷主になるべく早くコンテナを引き取ってもらいたいと思っています。

そのため、船会社や対荷主との力関係により設定は異なりますが、通常は1週間程度のフリータイムが設けられており、この期間を越えてCYからコンテナが引き取られない場合にはデマレージという名のペナルティが課されます。

 

このデマレージも「指定保税地域等にある輸出しようとする貨物又は輸入の許可を受けた貨物に係る荷役、運送、保管」に該当するため免税になります。

CYは指定保税地域等に含まれるからです。

 

ディテンション

輸入通関が完了してコンテナをCYから引き取った後、目的地で荷卸ししてから空のコンテナを再びCYに返却するまでの期間にもフリータイムが設けられています。

これは通常3~4日程度の場合が多いのですが、この期間を越えて返却が遅れると、今度はディテンションという名のペナルティが船会社から課されます。

このディテンションは指定保税地域外で発生する費用のため免税にはならず、課税になります。

 

不課税/非課税/免税を英語でいうと?

海外では消費税の代わりに付加価値税(VAT)が課される国が多いのですが、仕入税額控除の考え方は似ています。

そのため不課税/非課税/免税の考え方も同じで、英語では次のように呼ばれています。

不課税=untaxable

非課税=non-taxable

免税=tax exemptionもしくは0% tax