【商業貨物とは?】ハンドキャリーで旅具通関する方法をわかりやすく解説
前回の記事では海外旅行へ行ったついでに買い物をして、スーツケースに入れて携帯品として持ち込んだり、嵩張るものについてはお土産屋さんから国際宅配便やEMSで別送品として送る場合の免税枠についてのお話しをしました。
【携帯品/別送品の簡易税率】海外旅行で買うとお得な商品はこれだ!
基本的に20万円の免税枠がありましたが、これは個人使用目的で持ち込む場合に限られます。
持ち込んだ商品を販売する場合、その商品は商業貨物といわれ免税枠は異なってきます。
このような商業貨物を旅客が手荷物扱いで輸出入することをハンドキャリーといいます。
そしてハンドキャリーの通関方法は旅具通関といわれ、一般的な貿易で行われる一般通関とはやり方が異なります。
今回は、輸入販売を行っている法人や個人事業主がどのように旅具通関をやっているのかを見ていきましょう。
旅具通関とは?
旅具通関とは初めて耳にする人が多いと思いますが、実はほとんどの人は経験済みです。
海外からの戻りの飛行機の中で客室乗務員からベージュ色の紙「携帯品・別送品申告書」が配られますね。
ほとんどの人は表の欄で「いいえ」を6回チェックして署名したものを空港から出る最後の税関検査台で渡して、税関職員から一言二言質問されるだけでそのまま入国できます。
これは、
「携帯品はすべて個人使用目的で、商業貨物でもなければ、他人から預かった荷物をハンドキャリーしているわけではありません。荷物の金額も20万円以内と少額で、もちろん輸入禁止品も含まれていません」
と申告しているからです。
この申告が疑わしいと思われる人はスーツケースを開けてチェックされますが、その他大勢の人はそのままお咎めなく通されます。
これが正に旅具通関です。
今一度、申告書「携帯品・別送品申告書」を見てみましょう。
6つチェックした「いいえ」のうち、⑤と⑥を見て下さい。
携帯品・別送品申告書 – 税関 より抜粋
この2つのうちどちらかを「はい」にチェックすると商業貨物と見なされます。
すると、裏面(B面)にも荷物の内容を記入しなければならず、以下の章で説明するような税関職員への申告が必要になってきます。
旅具通関の免税枠
まず最初に旅具通関の免税枠を見ておきましょう。
これは荷物が個人使用目的の場合と、商業貨物の場合とで異なります。
個人使用目的の場合の免税枠は、
- 酒/たばこ/香水を除いて20万円以内
- 酒/たばこ/香水は価格ではなく、量で規定
- 1品目当たり1万円以内は無条件免税で、20万円の枠には含めない
でした。
【携帯品/別送品の簡易税率】海外旅行で買うとお得な商品はこれだ!
これが商業貨物では、1品目当たり課税価格1万円以内の荷物だけが免税になります。
これは個人使用目的の免税枠の3)と似ていますが、下記のように異なります。
個人使用目的・・・海外での購入価格が1万円以内
商業貨物・・・課税価格が1万円以内
課税価格とは関税額計算の基礎となる価格のことで、課税価格×関税率=関税額になります。
そして課税価格は一般的に「輸入港に到着した時点での価格(=CIF価格)」ということになっていて、下記のように計算されます。
課税価格=海外での購入価格+海外から日本までの運賃+保険料=CIF価格
つまり、商業貨物の場合は海外での購入価格が1万円以内であっても、運賃や保険料を足すと1万円を超えてしまい、免税枠をオーバーしてしまう可能性があります。
しかも、この運賃は税関が決めます。
「俺の運賃は格安航空券だからこれだけだ」
といっても無駄です。
IATAで決められている公定運賃を参照して税関が決定します。
免税枠内でハンドキャリーしようとしている人は、この点に十分注意しましょう。
旅具通関の2通りの申告方法
上記の免税枠を超える荷物には、すべて簡易税率が適用されます。
その簡易税率は、個人使用目的の携帯品/別送品に適用されるものと同じです。
すべてに関税+消費税を合わせて15%が課されます。
但し、課税価格は海外での購入価格に税関が定める運賃と保険料を合わせた額(CIF価格)になります。
ハンドキャリーにおける旅具通関の申告方法には2通りあります。
1つ目は一般の海外旅行客が機内で記入するのと同じ「携帯品・別送品申告書」に記入する方法です。
この場合は、ハンドキャリーする荷物が自分(もしくは自社)が所有する商業貨物であれば下記の⑤に、他人(もしくは他社)が所有する商業貨物であれば⑥に「はい」をチェックします。
携帯品・別送品申告書 – 税関 より抜粋
そして、そのすべての貨物内容を裏面に記載します。
携帯品・別送品申告書 – 税関 より抜粋
酒/たばこ/香水以外は、「その他の品名」の欄に記入します。
その時、数量と価格も同時に記入します。
この価格は海外で購入した時の価格を記入しますが、その証拠としてレシートを取っておく必要があります。
でも、安く仕入れるために現地の市場等で買うとレシートが貰えないケースもありますね。
その場合は品名と価格をメモしておいて、申告時に税関職員に提示しましょう。
大抵は、そのままの価格で信用してもらえます。
ただ、余りにも安すぎると思われる場合は、税関データベースにある価格を使われてしまいますので、正直に申告しましょう。
この申告した購入価格に税関データベースにあるIATA運賃を足して課税価格が決定され、その15%を関税及び消費税として納めて終了です。
2つ目の申告方法は「輸出・輸入託送品(携帯品・別送品)申告書」に記入する方法です。
「携帯品・別送品申告書」に記入する方法では1通だけ記入すればよかったのですが、こちらは2通に記入します。
「同じことを2通も記入するなんて面倒臭い。だったら最初から携帯品・別送品申告書で申告するよ」
という声が聞こえてきそうですが、2通提出することにより1通は戻されます。
これは輸入許可書として認めてもらえ、輸入販売を生業とする場合には必須の書類を残すことができます。
記入内容は「携帯品・別送品申告書」の場合とほぼ同じで、難しくありません。
税関様式 C 第 5340 号 Export Declaration for Consigned … から抜粋
商業貨物では輸入許可書の保管が必要な場合が多いため、こちらの方法が一般的です。
旅具通関ができないケース
ハンドキャリーでも荷物の量があまりにも多くなると簡易税率が適用されません。
簡易税率が適用されるのは海外での購入価格が30万円程度までです。
それ以上になる場合は、一般通関の手続きが必要です。
この場合には下記のように「輸入(納税)申告書」への記入が必要になり、一気にハードルが上がります。
1110 輸入(納税)申告書の記載方法について – 税関 より抜粋
これは記入例ですが、例えば⑮の欄にはHSコードの記載が必要なため、1万個近くある品目コードの中から該当するコードを探り当てるための専門知識が必要です。
⑱の欄の課税価格の計算も、運賃を各品目ごとに按分してCIF価格を自分で計算する必要があります。
多少、専門家の助けが必要かもしれません。
また、この輸入申告を行う前には、貨物を空港内にある保税倉庫へ搬入しないといけません。
そして確かに搬入しましたよという証明になる搬入票をもらって、それを添えて輸入申告をすることになります。
このように購入価格が30万円を超える場合には少し面倒な手続きが必要になります。
でもプロでないとできないかというと、そうでもありません。
それどころか、ハンドキャリーではなく一般の航空貨物として輸入する場合でも、通関から貨物の引き取りまでを自分で行うことも可能です。
興味のある方は、こちらも是非読んでみて下さい。
大きな航空貨物を自分で通関して個人輸入する方法をわかりやすく解説
まとめ
- 販売目的でハンドキャリーして輸入する貨物(商業貨物)は、購入価格が30万円程度以下であれば旅具通関扱いとなり簡易税率が適用され、関税/消費税合わせて15%が一律課税される
- 15%は購入価格ではなく、運賃や保険料を足した課税価格に掛けられる。運賃は実際に払った運賃ではなく、税関データベースの中にあるIATA運賃が適用される
- 但し、1品目当たりの課税価格が1万円以下であれば関税/消費税とも免税になる
- 商業貨物の旅具通関では2通りの申告方法があるが、輸入許可書を残したいのであれば「輸出・輸入託送品(携帯品・別送品)申告書」で申告すべき
- 購入価格が30万円程度に収まらない場合には一般通関扱いとなる。この場合の申告は煩雑かつ専門知識が必要が必要になる