【携帯品/別送品の簡易税率】海外旅行で買うとお得な商品はこれだ!
簡易税率には2種類ある
通関と聞くと、難しそうなイメージがありますね。
実際に1万個近くもあるHSコードの中から適切なコードを探り当てるのはプロフェッショナルの仕事です。
でも、少額の輸入にも同じ手間をかけるのは効率が悪いため、少額輸入貨物に対する簡易税率があります。
これを使えば、たったの7分類で関税率を決定できます。
関税や消費税を節税しながらお得に個人輸入できる条件をまとめてみた。
一方で、携帯品/別送品に対する簡易税率も別に存在します。
簡単にいうと、海外旅行者用の簡易税率です。
- 日本にいながら海外の商品を航空便などで輸入する場合・・・少額輸入貨物に対する簡易税率
- 海外旅行のついでに購入した商品を持ち込む場合・・・携帯品/別送品に対する簡易税率
海外のブランド品は本国で買う方が安いに決まってるので、ここぞとばかり買い込んできたような人が空港に沢山いますね。
管理人はアジアがホームなので、日本へ行った際は日本で買う方が安いものを中心に買い込みますが、動機は同じです。
物流を勉強すれば、輸送費だけでなく、関税や時には消費税までただになるかもしれない携帯品/別送品の簡易税率を使いこなして、お得に買い物ができるでしょう。
携帯品/別送品に対する簡易税率を勉強して、
海外旅行先で何を買うべきか?
を考えてみましょう。
別送品とは?
携帯品とは機内に持ち込んだり、スーツケースに入れて手荷物として預ける荷物のことです。
別送品とはお土産物屋さんなどで大きな買い物をした時に、郵送や国際宅配便などを使って直接店から送る荷物のことです。
携帯品も別送品も空港から出る最後の関門である税関検査所で申告します。
機内で配られる「携帯品・別送品申告書」に申告内容を記入して、大多数の人は1の欄にすべて「いいえ」をチェックして税関検査の係員に渡して終わりです。
(人相の悪い人はスーツケースを開けてチェックされますが)
携帯品・別送品申告書 – 税関 より抜粋
一方、別送品がある人は3の欄に「はい」をチェックして、送った荷物の箱数を書きます。
携帯品だけの人は1枚だけ申告書を書いて税関員に渡して終わりでしたが、別送品がある人は2枚書いて税関員に渡し、そのうち1枚は税関の承認印を押してもらってから返してもらいます。
これを忘れると、携帯品/別送品に対する簡易税率が適用されずに一般通関になってしまいますので注意しましょう。
別送品を郵送で送った場合には、日本に荷物が到着したら、税関の外郵出張所という所から荷物が到着した旨の通知ハガキ(外国から到着した郵便物の税関手続のお知らせ)が届きます。
ハガキが届いたら、先程の携帯品/別送品申告書を税関外郵出張所に郵送するか、直接窓口に提出すれば、荷物が受け取れるようになります。
その他に別送品で注意すべき点は、
- カートンの外側に「別送品」または「Unaccompanied baggage」と記載する
- 宛先は自分宛てにする
ことです。
そうすれば、携帯品/別送品に対する簡易税率が適用され、条件を満たせば次に述べるように免税で輸入できます。
免税になる条件
少額輸入貨物に対する簡易税率は課税価格20万円以下が適用条件でした。
個人使用目的の場合は、
課税価格=海外小売価格×0.6
になるため、約33万円までの買い物が対象になります。
しかし、これによるメリットは
- 一般税率より多少低い簡易税率を適用できる
- 課税価格を低くできる
ことだけです。
免税のメリットを得るためには、買物額を16,666円以内(10,000円÷0.6)に抑える必要があります。
これに対して携帯品/別送品に対する簡易税率は、もっと強力です。
なんと20万円以内の買い物が、関税/消費税ともに免税になります。
更に、1品目で1万円以下の買い物しかしていない場合は無条件免税となり、その分は20万円の計算から除外できます。
例えば、
靴・・・2足買って、合計10,000円
時計・・・1個買って200,000円
合計・・・210,000円
の買い物をしたとすると、一見免税枠を超えたように思ってしまいますが、靴だけで1万円以下なのでこの分は無条件免税となり、時計だけで20万円の免税枠を使えます。
この仕組みを利用して品目ごとに1万円以内に収まるように買い物をすれば、高額品用に20万円の免税枠を温存できますね。
更に、酒/たばこ/香水も別枠です。
これらは下記のように免税枠が別枠で決められています。
海外旅行者の免税範囲 – 税関 から抜粋
このように免税枠は決められていますが、20万円の計算には含める必要はありません。
また家族5人で海外旅行に行った場合、5人分の免税枠が使えるので100万円まで免税になります。
3人の子供に未成年者がいれば、その分の酒/たばこの免税枠は使えませんが、20万円の免税枠は使えるので、100万円まで買えます。
但し、6歳未満の子供が1人いればその分は除外されて、80万円までの免税枠となります。
でも、おもちゃだけは6歳未満の子供にも免税枠がありますので、おもちゃで20万円、それ以外(酒/たばこ/香水は除く)で80万円の免税枠は確保できます。
尚、この免税枠は携帯品と別送品を合わせた額です。
また、個人使用目的に限られ、販売目的の場合は1品目1万円以内の無条件免税枠はありますが、合計20万円以内の免税枠や酒/たばこ/香水の免税枠は使えません。
免税枠を超えた場合の税率
上記の20万円の免税枠を超えた場合は、一律15%の税金がかかります。
但し、これには関税の他に消費税も含まれているので、関税率は5%弱です。
免税枠を超えてもお得といえます。
但し、酒/たばこ/香水は別枠で、免税枠を超えた分には下記のように課税されます。
税額の計算方法 – 税関 から抜粋
少し注意しないといけないのは、1個で10万円以上する商品は合計20万円の免税枠に収まっていれば免税ですが、これを超えた場合は一般税率が適用されて、簡易税率のうまみがなくなってしまいます。
1個10万円以上の買い物をする場合には、合計で20万円の免税枠に収めるようにしましょう。
ただ、パソコン、スマホ、ゴルフクラブ等の一般税率でもともと関税がゼロの商品については、15%の簡易税率の適用外になります。
いくら買っても関税ゼロですが、消費税はかかります。
これは少額輸入貨物に対する簡易税率の場合と同じです。
以上は個人使用目的であることが前提です。
販売目的の場合は、1品目1万円以内の無条件免税に収まる商品以外は、一律15%(関税+消費税)の簡易税率が適用されます。
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EPA税率の適用
このように免税枠を超えても適用される簡易税率15%(関税+消費税)は十分に低いのですが、EPA税率を使えば更に税金を節約できることがあります。
日本はいろいろな国や地域と貿易協定を結んでいて、条件を満たせばEPA税率やFTA税率と呼ばれる有利な税率を適用できます。
通常、このEPA税率を適用するには原産地証明書を提出する必要がありますが、原産品であることが明らかな場合、かつ日米貿易協定/日EU経済連携協定/日英包括的経済連携協定を適用する場合には原産地証明書の提出を省略できます。
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代表的な商品としてはワインがあります。
ワインは原産地が明らかで、ヨーロッパで作られている場合が多いですね。
ワインの免税枠は1人3本までですので、4本目からは1リットル当たり800円の税金がかかりますが、例えばEU産のワインなら、2019年2月1日に発効した日EU経済連携協定により関税免税になります。
一方、アパレル商品についている「Made in China」等のタグでは原産地の証明にはなりません。
サプライチェーンが国をまたがり複雑で、判断基準も多種多様なためです。
判断基準を明確に記載した特定原産地証明書が必要になります。
規制品目
パイナップル/オレンジ等の果物や、肉/ハム/ソーセージ等は動植物検疫の対象になります。
購入した国の公的機関が発行する検査証明書の取得、及び空港の検疫所での検査が必要になり、ハードルが非常に高くなります。
米国やオーストラリア等の一部の国の土産物店では、検査証明書付きの肉/ハム類が販売されていることがあり、それなら大丈夫です。
しかし、「ちょっと味見」とかいって入国前に開封してしまった場合はアウトです。
これらの商品をスーツケースの中に入れていて携帯品/別送品申告書に記載がない場合は、処罰の対象にもなります。
気をつけましょう。
その他に海外旅行先で買いたいものの中には、医薬品や化粧品もあると思います。
これらはたとえ個人使用目的であっても、下記のような数量制限があります。
- 医薬品、及び医薬部外品・・・2ヶ月分以内(処方箋薬は1ヶ月分以内)
- 化粧品・・・1品目24個以内
- 医療機器・・・1セットまで
これらを超える場合は厚生労働省の手続きが必要になります。
海外旅行で買うとお得な商品はこれだ!
このように海外旅行ついでの買い物は、日本にいながら個人輸入するのと比べて、格段に税金面でのメリットがあります。
うまく買い物をすれば、大きな免税枠を得られることが分かっていただけたと思います。
中でもメリットが大きい商品はニット製品/シューズ/革製品です。
これらの商品は関税や消費税を節税しながらお得に個人輸入できる条件をまとめてみた。で解説したように少額輸入貨物に対する簡易税率の適用外です。
日本にいて輸入しようとすると、たとえ少量かつ個人使用目的であっても一般税率で関税が課され、消費税も払う必要があります。
それが海外旅行ついでにうまく買い物をすれば、22万円分まで関税/消費税が免税になることのメリットは大きいですね。
(ニット製品:1万円分、シューズ:1万円分、革製品20万円分購入した場合)
更に家族5人で旅行に行けば、110万円分まで免税です。
関税が10%とすると、消費税と合わせて約20%、約22万円分の税金と輸送費が節約できることになります。
航空券代くらいにはなるかもしれません。
皆さん、どんどん海外旅行して、いっぱい買い物しましょう。