大きな航空貨物を自分で通関して個人輸入する方法をわかりやすく解説
大きい貨物でも個人輸入できる
海外で仕入れた商品を購入する時、商品が大きくてかさばる場合は一般の航空貨物として輸入します。
すべてをワンストップで手配してくれるEMSや国際宅配便を使う場合と違って、航空貨物代理店、上屋、税関などと別々に自分でやり取りしないといけません。
航空貨物の場合でもフォワーダーに依頼すれば、これらのやり取りをワンストップでやってくれますが、少量の貨物であれば自分で行うことも可能で、その方が安上がりになることもあります。
商品の品目分類(HSコード)がわかっていれば、税関に赴いて自分で通関を行うことも可能です。
その流れを追ってみましょう。
覚えておくべき用語の説明
いくつか専門用語が出てきますので、まずは簡単に整理しておきましょう。
航空貨物代理店
航空会社は貨物を集荷するための営業活動やAWB(Air Waybill:航空貨物運送状)の発行業務などを航空貨物代理店に委託しています。
貨物を集めて航空機に乗せられる状態するまでのすべての業務を請け負っているのが航空貨物代理店です。
そして貨物量に応じたコミッションを航空会社から受け取ります。
AWBは荷送人(通常は輸出者)が作成して荷受人(通常は輸入者)に交付するのが原則ですが、実際は航空貨物代理店が荷送人の指示のもとに発行します。
AWBは3通発行され、原本1は航空会社用、原本2は荷受人用、原本3は荷送人用になります。
原本2は貨物と一緒に送られ、後に出てくるD/Oと一緒に航空貨物代理店から受領します。
ULD
Unit Load Deviceの略で、貨物を入れるコンテナのことです。
空港でよく見かけますね。
飛行機に無駄なスペースを空けることなく積むために、飛行機の形状に合わせたいびつな形をしています。
写真のような形状以外にも様々な形があります。
また海上輸送に使うコンテナは頑丈な造りになっていますが、ULDは頑丈にすると重くなって、積める貨物量が少なくなってしまいますので、アルミ製で軽量化されています。
保税上屋
飛行機が到着すると、ULDに入った貨物は保税上屋と呼ばれる倉庫に運ばれ、ここでULDから出されて仕分けされます。
輸入通関が終わるまで貨物はここで一時蔵置されます。
輸出貨物はその逆の流れで、空港まで運んできた貨物は保税上屋で下ろされULDに積められると同時に、輸出通関が終わるまで一時蔵置されます。
D/O(デリバリーオーダー)
貨物が保税上屋に着いたら、航空貨物代理店からA/N(Arrival Notice:アライバルノーティス)により輸入者に連絡が来ます。
輸入者は航空貨物代理店の窓口に行ってA/Nに記載された必要な料金を支払うと、AWBや運賃明細書などと一緒にD/O(Delivery Order:デリバリーオーダー)を受け取れます。
このD/Oは通関が終わった後、保税上屋から保管されている貨物を受け取る時に必要になります。
D/Oがないと、航空貨物代理店に必要な支払いが終わっていないと思われて貨物を引き取れません。
NACCS(ナックス)
NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System:ナックス)は、輸出入貨物の通関をオンラインで申告するためのシステムです。
税関だけがシステムでつながっているのではなく、航空会社/フォワーダー/上屋/通関業者/銀行などともつながっていて、情報共有できるようになっています。
NACCSがなかった頃は輸出入申告書を手書きで作っていましたが、これがシステム化されたことによって、例えば上屋で入力された貨物情報を輸入者は入力する必要がないなど、作業が効率化されます。
初めて使用する場合には、税関窓口にある利用申込書に記入し、身分証明書と一緒に提出します。
輸入通関の流れ
D/O交換
飛行機が到着すると、航空会社はULDを保税上屋に搬入し、中の貨物を荷卸し(バン出し)してAWB別に仕分けします。
そして輸入者(荷受人)にA/N(Arrival Notice:アライバルノーティス)を送付します。
航空貨物の場合は海上貨物と違って時間がないので、電話で輸入者に連絡がいくこともあります。
輸入者は航空貨物代理店の窓口へ行ってA/Nを見せて、A/Nに記載された必要な料金を支払うと、AWBや運賃明細書などと一緒にD/O(Delivery Order:デリバリーオーダー)を受け取れます。
輸入通関
輸入申告は貨物が保税上屋に搬入された後、その保税上屋を管轄する税関官署で行います。
A/Nに保税上屋の保税地域コードが書かれているので、これをもとにネットで検索して管轄官署を探すと確実です。
保税蔵置所一覧 東京税関管内 より抜粋
税関へ行く前に保税上屋に電話して、AWB番号を伝え、自分の貨物の搬入情報がシステムに登録されているか確認しておきます。
また管轄税関に赴く前にAWB、A/N、インボイス、パッキングリストを2部用意しておきましょう。
管轄税関に着いたら窓口で、そのうちの1部を提出します。
そして税関にあるNACCS端末から、もう1部の書類の情報を見ながら申告情報を入力します。
入力情報を確定して送信すると申告情報が電子的に送られます。
個人輸入の場合はほぼ100%実物検査になりますので、指示に従って検査を受けます。
貨物搬出
検査日時が決まると税関から検査指定票が渡されますので、それとD/Oを持って貨物が保管されている保税上屋に行きます。
その前に貨物を引き取るためのトラックの手配は済ませておきましょう。
検査場とは保税上屋とは別の場所ですので、
保税上屋⇒検査場
検査場⇒配送先
の配送が必要になります。
検査場ではX線検査や開梱検査があります。
検査に合格したら、先ほどの税関窓口へ赴き検査指定票を提出します。
すると輸入(納税)申告書を渡されますので、税関の収納課で関税と消費税の支払いを行います。
支払うと納付書・領収証書が発行されます。
更にNACCSで入金が確認されると、輸入(納税)申告書に「輸入許可」の印が押されます。
これが輸入許可書になり、検査場にある貨物は保税貨物(外国貨物)から国内貨物にステータスが切り替わります。
輸入許可書を検査場に提出すれば、貨物をトラックに載せて日本国内の好きな場所に持っていくことができます。