タイヤの交換時期とコストの関係を統計理論で解く

2021年6月12日

トラックを走らせていればタイヤがすり減ります。

新品のタイヤは溝の深さが16mmありますが、日本の基準では高速道路を走る時には3.2mm以上残っていないといけません。

でもこれは守らなければならない最低ラインで、理想は残量が50%、つまり8mmで交換するのが安全上望ましいと言われています。

アジアでは基準がない国もありますが、ツルツルのタイヤで走ると危ないのでいつかは交換しないといけません。

 

では、タイヤの交換時期とタイヤコストの関係はどうなっているのでしょうか?

いくら安全のため残量8mmで交換するのが望ましいと言われても、タイヤ交換頻度が上がればコストに跳ね返ってきますのでシビアに検討する必要があります。

今回は統計理論を使って、この問題を解いてみます。

 

生データから素直に求める方法

以前の記事

【物流数学の基礎】標準偏差を理解するための超重要ポイント

で、

1. 世の中の多くの現象は正規分布になる

2. 正規分布は平均と標準偏差の2つの数値で形がグラフの形が決定される

3. 標準正規分布表を使えば、あらゆる区間の確率が求まる

ことを解説しました。

 

タイヤの溝の残量も、この正規分布に従います。

下図は400台のトラックのタイヤ、合計6,447本についてタイヤの溝残量を測ったデータです。

概ね正規分布になっていることが分かります。

 

この会社では毎月の点検で、残量が3mmになったら新品のタイヤに交換することにしています。

それでは残量が3mm以下のタイヤは全体の何%でしょうか?

下の表から残量3mm以下のタイヤ本数は

103+250+477=830本

であることが分かりますので

830÷6447=12.9%

です。

 

同様に

4mm以下:20.3%

5mm以下:28.1%

6mm以下:37.0%

7mm以下:49.1%

8mm以下:59.3%

となります。

ですから、もし残量4mmでタイヤ交換すると、

20.3%-12.9%=7.4%

だけ多くのタイヤを交換することになります。

つまり、年間のタイヤ購入コストが7.4%アップすることになります。

これくらいなら大したことはないかもしれませんが、もし日本で推奨されているように残量8mmで交換すると、

59.3%-12.9%=46.4%

となり、46%のコスト増となることが分かります。

 

統計的に一般解を求める方法

上のデータはある月のタイヤ溝残量を測定したデータでした。

ですから、違う月のデータで計算すると違う結果になるかもしれません。

上のヒストグラムは正規分布が少し歪んだ形になっていましたが、違う月では違う歪みになるでしょう。

 

そこで、歪みのない正規分布で近似することを考えます。

正規分布は平均と標準偏差が分かれば一意に決まるのでしたね。

計算すると、

平均=7.2

標準偏差=3.5

となります。

この正規分布をグラフにすると次のようになります。

 

このグラフから残量3mmから8mmの間に全体の何%が含まれるかを調べるためには、下図の赤で示した面積を調べればよいことになります。

 

これを調べるためには赤部分を3~7.2mmと7.2~8mmの2つに分割します。

 

ここで、3~7.2mmの範囲は標準偏差何個分かを計算します。

標準偏差は3.5ですので、

(7.2-3)÷3.5=1.2

つまり1.2個分まれます。

これを標準正規分布表で調べると、下のように0.3849と分かります。

これはつまり、3~7.2mmの範囲に全体の38.49%が含まれることを意味します。

 

次に7.2~8mmの範囲に何%が含まれるかを調べます。

(8-7.2)÷3.5=0.23

ですから標準偏差が0.23個分含まれます。

これを標準正規分布表で検索すると、下のように0.091となります。

つまり9.1%含まれます。

 

2つを併せると、

38.49%+9.1%=47.59%

となり、先ほど生データから計算した46.1%とほぼ同じ結果になります。

ただし、こちらの方がより一般的な解と言えます。

 

まとめ

このようにデータが正規分布に従う場合には、平均と標準偏差を計算することによって正規分布の形が一意に決まり、あらゆるデータ区間の確率を求めることができます。

今回はタイヤ溝の残量を例にとりましたが、世の中の多くの現象は正規分布に近似できますので、適用範囲は広いと言えます。

物流の世界も例外ではなく、例えば倉庫に到着する貨物量や到着時間の分布とか、倉庫作業員の生産性の分布とか、従業員の残業時間の分布とか数えればきりがありません。

この方法のメリットはリスクを定量化しコストに換算できることですので、意思決定の場で広く適用できるのです。