三国間貿易での決済の仕組みをわかりやすく解説|L/C決済とT/T決済別に

2024年3月13日

三国間貿易でL/C決済とT/T決済が混在するケース

L/C決済は売り手、買い手ともに取引に伴うリスクを低減できますが、コストはかかります。

保証料、金利、電信料等、数々の費用項目があり、L/Cはコストの塊とも呼ばれています。

ですので、なるべくなら使いたくないのが本音です。

そのため、取引開始から間もないころだけL/Cを使い、信頼できるようになるにつれてD/A(Documents against Acceptance)D/P(Documents against Payment)を経由して、T/T(Telegraphic Transfer)決済に移行していくのが普通です。

また、海外取引でもグループ会社間であれば始めからT/T決済にするのが普通です。

 

このような背景があるため、仲介貿易では仲介者が仕入れる時と販売する時とで異なる決済方式になることも少なくありません。

L/C決済とT/T決済の組み合わせでは重複のある順列の求め方より、2×2=4通りの組み合わせがあります。

  1. 売り手-仲介者:L/C決済、仲介者-買い手:L/C決済
  2. 売り手-仲介者:L/C決済、仲介者-買い手:T/T決済
  3. 売り手-仲介者:T/T決済、仲介者-買い手:L/C決済
  4. 売り手-仲介者:T/T決済、仲介者-買い手:T/T決済

 

1についての注意点は前回の記事で解説しました。

三国間貿易のメリットをわかりやすく解説。L/C/インボイス/BLの注意点も

今回は2~4についての注意点を見ていきます。

 

各決済方法における注意点

売り手-仲介者:L/C決済、仲介者-買い手:T/T決済

大手メーカーが香港やシンガポール等に調達機能を統括する子会社を置いているケースがこれに相当します。

調達先(売り手)との取引が長くなって信頼関係が築けてこれば、売り手-仲介者の間もT/T決済に移行しますが、始めのうちはL/Cで品質や納期を担保するのが普通です。

 

すべてをL/C決済する場合は、L/Cの条件をしっかり固めた上で、L/Cの条件を設定する必要がありました。

今回は親L/Cが不要になるため、そのような縛りはなくなります。

買い手と仲介者との間の契約に沿った形でL/C条件を設定していくことになりますが、買い手と仲介者との間の信頼関係はできている前提ですので難易度は低くなります。

とはいえ、以下の点については注意すべきでしょう。

  1. L/Cの船積期限は、契約で決められたETAから逆算
  2. EPAによる特恵税率を使う場合、B/L上のシッパーは仲介者でなくなる(仲介者と買い手との間の契約では仲介者が契約者だが)。そのため契約、L/C共に「Third Party B/L acceptable」の条項を入れておく
  3. 買い手は信頼できるという前提なので、売り手から買い手へB/L直送、もしくはSurrender B/Lでよい
  4. 買い手からできるだけ早く送金を受けられる条件を設定する。売り手には船積み後24時間以内に関係書類をメールしてもらい、それを買い手にメールして送金を促すのが一般的(買い手が仲介者の親会社である場合には後払いになる可能性が高いが)

 

売り手-仲介者:T/T決済、仲介者-買い手:L/C決済

海外の子会社が製造した商品を、親会社が第三者へ販売するようなケースがこれに相当します。

この場合は買い手に開設してもらうL/Cが条件の基点となりますので、その内容を仲介者と売り手との間の契約に反映させることになります。

仲介者が親会社、売り手がその子会社という場合には問題は少ないのですが、グループ外の会社と契約だけで取引を行う場合には注意が必要です。

 

注意点は以下の通りです。

  1. L/Cはいたずらに長い期限は設定しないので、L/C発行を待ってから契約に反映させていては時間が不足。事前にL/C条件を固めておく。特に特恵関税を受けるために必要となる書類の記載方法には注意
  2. Inspection certificateやTest report等、仲介者が切り替えできない書類に仲介者や売り手に特有のコード等を記載させない様にする(特に仲介者と売り手が親子関係にある場合に社内コードを使わない)
  3. 海上保険は仲介者のマージンを乗せた金額を基準に付保金額を決めるため仲介者が手配するケースが多いが、売り手が用意する書類にはインボイス以外は金額を記載しないよう注意する

 

売り手-仲介者:T/T決済、仲介者-買い手:T/T決済

この場合、3者ともにグループ内の会社であれば特に問題はありませんが、グループ外でL/C決済から移行する場合には契約だけが頼りになってきます。

中でも議論になるのは送金のタイミングでしょう。

L/C決済からT/T決済に移行する前にD/A(Documents against AcceptanceD/P(Documents against Paymentを挟む場合もありますが、これに準じたタイミングに設定するのが揉めることのない無難な方法です。

つまり、

  • 売り手は船積後24時間以内に船積書類をメールで仲介者に送付。仲介者が送金手続きし、売り手が入金確認後、船積書類原本を仲介者に郵送
  • 船積書類原本を入手した仲介者は、インボイス等を差し替えた後の書類一式をメールで買い手に送付。買い手が送金手続きし、仲介者が入金確認後、船積書類原本を買い手に郵送

 

しかし仲介者としてはなるべく支払いは遅らせ入金は早めて、リスクを低減させたいところです。

現実的な条件としては以下のような選択肢があります。

【買い手とは一覧払い、売り手とは期限付き支払い】

 

【双方一覧払いだが一覧条件に差を付ける】

 

随分と仲介者に都合の良い条件の押しつけですが、相手もそうしてくるので仕方ありません。

いずれも売り手との交渉がカギで、バイングパワーの有無が効いてきます。