物量が少ない時のFCLとLCLはどっちが安い?アプリでトータル物流コストをシミュレーション

「二ヶ月にコンテナ一本分の物量しかないが、二ヶ月に一度FCLで輸入するのと、毎月LCLで輸入するのとではどちらが安いのだろう?」
国際物流に絡んだことのある人なら、誰でも一度は悩むことですね。
このような時、普通は過去の平均物量を前提に輸送費を見積もります。
「一ヶ月の平均物量が20CBMくらいだから、これでFCLとLCLの輸送費を比較しとこう」
とするのが一般的です。
ところが実際には毎月の出荷量は変動し、それに伴う発注量も変動します。
すると、二ヶ月に一度FCLで定期発注しようとしていたのに、それでは足らずに航空便での緊急発注を強いられるかもしれません。
また物流コストは輸送費だけではありません。
まとめて発注するということは、それだけ保管コストもかかります。
そこで、これらをまとめて精緻にシミュレーションできるアプリを開発しました。
>>定期発注方式のシミュレーションアプリ ~輸送コスト(発注コスト)可変~|ロジギーク
このアプリは定期発注で輸送モードを変えると物流コストはどうなるか?アプリで簡単シミュレーションで公開したアプリの発展版です。
前回のアプリでは発注一回当たりの輸送コストを一定としています。
今回のアプリではこの輸送コストを①固定費、②物量に比例して増加する変動費、③物量に応じてステップ状に増加する変動費の3つに分解して、それぞれのパラメータを設定できるようになっています。
国際輸送コストの内訳
国際物流における輸送モードは海上/航空/陸上に分かれますが、いずれも
- 物量に関係しない固定料金
- 物量に比例して増加する変動料金
- 物量に応じてステップ状に増加する変動料金
の3つに分類できます。
最初の①物量に関係しない固定料金の例としては、通関料/ハンドリングチャージ/DOC FEE/D/O FEEなどがあります。
これらは輸出入の一件当たりいくらという料金なので物量に関係しないのです。
(国によってはコンテナ本数に応じて追加料金が発生することもありますが、その場合は追加料金のみを③に含めます)
次に②物量に比例して増加する変動料金の例としては、LCLの海上運賃/航空運賃/LCLのTHCやCFSチャージ/航空便のターミナルチャージ等があります。
これらは貨物の重量または容積(CBM)に比例して請求される料金です。
最後の③物量に応じてステップ状に増加する変動料金の例としては、FCLの海上運賃/FCLのTHC/コンテナドレイ料/FTLの国内輸送料等があります。
これらはコンテナ単位またはトラック一台単位で料金が請求されますので、物量に応じてステップ状に料金が変化します。
例えばコンテナ一本に8,000個の貨物が載せられるのであれば、1~8,000個まではコンテナ一本分の料金、8,001~16,000個まではコンテナ二本分の料金というように変化します。
アプリでの輸送コストの設定方法
本アプリではこれら3種類の料金体系に応じて、それぞれのパラメータを設定できるようになっています。
サイドバーの条件設定画面の一番下、4.物流コストで設定できます。
保管コストと欠品コストの設定方法は前回のアプリ定期発注で輸送モードを変えると物流コストはどうなるか?アプリで簡単シミュレーションと同じです。
輸送コストの「固定単価」の欄には、一回の発注当たりの固定料金の合計を入力します。
通関料が20,000円、ハンドリングチャージが10,000円、DOC FEEが7,000円、D/O FEEが5,000円の場合は42,000円を入力します。
デフォルトでは40,000円になっています。
「比例単価」の欄には、物量に比例して増加する料金の合計を入力します。
航空便の場合は航空運賃やターミナルチャージが通常kg単位で設定されていますので、これを貨物1個当たりの料金に換算して、その合計を入力します。
例えば航空運賃が30円/kg、ターミナルチャージが10円/kgで、貨物1個当たりの重量が10kgであれば、合計400円/個を入力します。
「ステップ単価」の欄には、物量に応じてステップ状に増加する料金の合計を入力します。
海上運賃が100,000円/コンテナ、THCが20,000円/コンテナであれば、合計120,000円を入力します。
その他にもコンテナ単位の料金があれば、それも加えて下さい。
「ステップ区切り」の欄には、コンテナ1本当たりに積載可能な貨物数を入力します。
8,000個がコンテナに積載可能であれば8,000個を入力します。
以上を入力するとトータルロジスティクスコストが計算され、画面一番下のシミュレーション結果に即座に反映されます。
FCLとLCLのトータル物流コストを比較
需要データの読み込み
それでは冒頭の事例を実際にシミュレーションしてみましょう。
過去半年間の出荷実績が下記のようであったとします。
このデータをアプリに取り込む場合には、下記のようなフォーマットでcsvファイルを作成して下さい。
そして下記の1.需要データ読み込みからアップロードして下さい。
デフォルトでも182日分の出荷データが入っていますので、自分でデータを用意できなくても大丈夫です。
以下のパラメータを変化させながら、物流コストがどのように変化するかを見ることができます。
今回はFCLとLCLを下記の条件で比較してみましょう。
FCL:納品リードタイム=20日、発注サイクル=60日
LCL:納品リードタイム=25日、発注サイクル=30日
FCLの場合のシミュレーション
まずはFCLのシミュレーションをしてみます。
納品リードタイムと発注サイクルは下記画面で設定します。
次に物流コストを設定していきますが、下記の状況を想定します。
輸送コスト
【固定料金】
通関料:20,000円/件
ハンドリングチャージ:10,000円/件
DOC FEE:7,000円/件
D/O FEE:5,000円/件
合計 42,000円/件
【比例料金】
なし
【ステップ料金】
海上運賃:200,000円/40GP
THC:10,000円/40GP
コンテナドレイ:40,000円/40GP
合計 250,000円/40GP
保管コスト
3円/個・日
欠品コスト
1,000円/個
従って条件設定画面には下記のように入力します。
「ステップ区切り」はコンテナ一本に8,000個積載することを想定して、8,000を入力します。
するとシミュレーション結果が即座に表示されます。
毎日の入出庫や在庫の状況が表形式で見れますが、長いので在庫推移のグラフを見てみましょう。
80日目に在庫が増加していますが、これは60日目に発注された商品が20日後に入庫したためです。
物流コストのシミュレーション結果を見てみると、トータルロジスティクスコストは2,455,748円であることが分かりました。
LCLの場合のシミュレーション
次にLCLのシミュレーションをしてみます。
納品リードタイムと発注サイクルは下記のように設定します。
次に物流コストを設定していきますが、下記の状況を想定します。
輸送コスト
【固定料金】
通関料:20,000円/件
ハンドリングチャージ:10,000円/件
DOC FEE:7,000円/件
D/O FEE:5,000円/件
合計 42,000円/件
【比例料金】
(CBM単位の料金を貨物一個当たりの料金に換算しています)
海上運賃:60円/個
THC:15円/個
CFS:10円/個
合計 85円/個
【ステップ料金】
(トラック一台当たり2,000個積載可能とします)
国内配送料:20,000円/台
合計 20,000円/台
保管コスト
3円/個・日
欠品コスト
1,000円/個
以上から、条件設定画面には次のように入力します。
するとシミュレーション結果が即座に表示されます。
まずは在庫推移のグラフを見てみましょう。
30日目に発注され、その25日後に入庫されるので、55日目に在庫が補充されています。
またその後も30日ごとに在庫が補充されていることが分かります。
次に物流コストを見てみましょう。
トータルロジスティクスコストは2,654,648円で、先程のFCLで送る場合と比べて8%ほど高くなっています。
内訳を見てみると、保管コストは下がるものの輸送コストがそれ以上に上がるため、トータルでは増えていることが分かります。
このように今回はFCLで送る方が安いことが分かりました。
LCLで送る場合は4回の発注がありましたが、毎回の発注量の平均は3,450個でした。
コンテナの満載数が8,000個ですので、積載率は44%です。
このくらいであれば、保管コストの増加を考慮しても、FCLで送る方が安いということです。
まとめ
この結果は海上運賃のタリフ構造により当然異なります。
タリフによってはLCLで送る方が安くなるかもしれません。
また、保管コストによっても結果は当然変わってきます。
しかしこのように判断に迷うような難しい問題であっても、数値的に解けるケースは数多くあります。
是非このアプリを役立てて下さい。