【待ち行列理論の使い方】トラック予約受付システムを導入すると何が変わるのか?

2022年11月6日

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トラック予約受付システムとは?

荷卸し順番待ちによるトラックの待ち時間は、ただでさえ不足が叫ばれているトラックの回転率を下げる大きな要因になっています。

この問題は物流センターのみならず、工場や店舗でも起きています。

 

従来、トラックが荷卸しや荷積みをする順番は早いもの順でした。

人気のレストランには順番待ちの表が店頭に置いてあって、それに名前を書いておけば順番がきたら呼んでくれるあのやり方と同じです。

このやり方を改良して、予めパソコンやスマホから空いている時間に予約を入れておき、その時間に合わせて到着するというやり方が「トラック予約受付システム」です。

現在、10社を超えるシステムベンダーがこのシステムを提供しており、導入企業もどんどん増えています。

 

「こんな当たり前のことがなぜ今までできていなかったのだろう?」

と思うくらい簡単な解決策で、効果が高いことは誰でも想像できますね。

しかし、それを論理的に説明できる人は少ないのではないでしょうか。

今回はオペレーションズリサーチの一理論である「待ち行列理論」を使って、その理由を数学的に解明します。

 

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待ち行列理論とは?

ここで問題です。

レジが一つしかないコンビニを想像して下さい。

毎朝7~9時には平均30人/時の客が買い物をしにきます。

しかし、いつもこの時間帯はレジの順番待ちが長くなるため、ベテランのレジ打ちAさんに来てもらうことにしました。

Aさんは平均30人/時の客をさばくことができます。

これでレジの順番待ちは解消するでしょうか?

 

客が来るスピードとレジが処理するスピードが釣り合うのだから、解消するに決まっているだろ。馬鹿にするな!」

と思うかもしれませんが、残念ながらこれではレジの前に長蛇の列ができてしまいます。

なぜでしょうか?

 

客がレジに到着するスピードは30人/時ですので、平均すると2分に1人到着します。

レジの処理スピードも30人/時ですので、平均すると2分に1人分処理できます。

もし客がきっかり2分に1人レジに来て、レジも常に2分に1人分処理できれば、確かに行列はできません。

でも、そんなの現実にはあり得ませんね。

客が列に加わる間隔は、1分の時もあれば5分の時もあるかもしれません。

また、少ししか買い物をしない客なら1分でレジ処理できても、沢山買い物する客に対しては5分かかるかもしれません。

つまり、客の到着間隔もレジの処理人数ランダムで予測できないのです。

 

このような場合、最初の客を1分でレジ処理できたとしても、次の客までの間隔が5分なら、レジ打ちは4分間何もすることがありません。

また、ある客のレジ処理で5分かかっている間に、4人の客が到着することだってあり得ます。

このようなことが積み重なるので、行列なしにスムーズに流れることなどあり得ないのです。

 

そこで、

レジの処理スピードが客の到着スピードに対してどれくらい速ければ、待ち時間はどれくらいになるのか?」

という問いに答えてくれるのが待ち行列理論です。

 

待ち行列理論の使い方

待ち行列理論の考え方は難しくありませんので、先ほどの例で一緒にやっていきましょう。

 

客の到着スピードは30人/時ですね。

これをλ(ラムダと読みます)とします。

レジの処理スピードも30人/時ですね。

これをμ(ミューと読みます)とします。

そして、μに対するλの比率ρ(ローと読みます)とします。

ですので、この例では

ρ=λ/μ=30/30=1

となります。

この時、レジ前にできる行列の人数

ρ/(1-ρ)

になるというのが待ち行列の理論です。

意外と簡単でしょ。

 

でも、この例で計算すると(1-ρ)がゼロになってしまい、ゼロ除算で計算できません。

あえていうなら、行列の人数は無限大になります。

レジの処理スピードが客の到着スピードと同じでは遅すぎるということです。

ではレジの処理スピードを40人/時に上げたらどうでしょうか?

するとρは、

ρ=λ/μ=30/40=0.75

になりますので、行列の人数は

ρ/(1-ρ)=0.75/0.25=3

つまり3人にまで減ります。

 

行列の人数が求まれば、待ち時間も求まったようなものです。

レジの処理スピードは40人/時ですので、3人を処理するには

3/40=0.075時間

分に直すと、.5分になります。

 

待ち行列理論をトラックの待ち時間に応用する

まず、トラック予約受付システムが登場する前の状況を想像してみましょう。

トラックの到着時間ランダムですね。

また積載してある貨物量や、これから積載する貨物量もランダムです。

従って、倉庫作業員の人数が変わらなければ処理スピードランダムになります。

これは正に待ち行列理論が想定する状況です。

 

例えば、ある物流センターでは午後に平均5台/時でトラックが到着し、1か所のトラックバースで荷卸しをするものとしましょう。

この場合、λは5です。

もし荷卸しスピード6台/時なら、待ち時間はどれくらいになるでしょうか?

μ=6なので、

ρ=λ/μ=5/6=0.83

ρ/(1-ρ)=0.83/(1-0.83)=5

となり、5台分のトラックが待つことになります。

荷卸しスピードは6台/時ですので、5台分処理するのに50分かかります。

つまり待ち時間は50分です。

物流会社にとって荷卸しスタッフの人数はそのままコストになりますので、そんなに余裕を持たせた人員配置はしません。

その日の処理量がトラック5台/時ならば、6台/時くらいの荷卸しスピードにするのがせいぜいでしょう。

これが今までトラック待ちの行列ができていた原因です。

 

トラック予約受付システムの導入によって変わること

では、トラック予約受付システムが導入されるとどう変わるのでしょうか?

上で紹介した待ち行列理論はM/M/1モデルと呼ばれていて、到着スピードも処理スピードのランダムである場合の理論です。

更にいうと、到着スピードも処理スピードもポアソン分布指数分布に従うことを仮定しています。

 

トラック予約受付システムを導入すると、到着スピード(到着時間)がランダムでなくなるのでこのM/M/1モデルは使えなくなります。

一方で、荷卸しの処理スピードにはランダム性が残っているため、待ち時間はゼロにはなりません。

予約システムに入力される情報から貨物量も分かりますので、その情報を元に荷卸し人員数を調整できれば、次のトラックの荷卸し時間までに作業を終わらせることも可能です。

しかし現実には、そこまで柔軟に対応できる現場はないでしょう。

荷卸しの処理スピードにランダム性が残るというのはそういう意味です。

 

工場の生産現場であれば不確実性が低いため、工程間のスピードを同期化させてムダを省くことはやり易いのですが、物流では道路状況や天候状況等、不確実要素が格段に大きくなります。

そのため予約システムが導入されたとしても、処理スピードを到着スピードに同期化させることはできないため、トラックの待ち時間をゼロにすることはできないでしょう。

逆にそれに執着すると、荷卸し人員を多めに確保することになりコスト増につながります。

しかし到着時間からランダム性が消えるため、待ち時間が削減されることは確実です。

更にそこで得られたデジタルデータから新たなソリューションが開発される可能性もあり、今後も目が離せないソリューションです。

 

 

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