【区間推定の使い方】t分布表を使って推定する方法をわかりやすく解説
区間推定が使える具体例
物流会社Aでは、トラックに使う燃料をB5(バイオディーゼル 5%、石油ディーゼル 95%)からB20 (バイオディーゼル 20%、石油ディーゼル 80%)に変更することを検討しています。
そこで150台の保有トラックの中からランダムに15台を選んでB20燃料を使ってもらい、燃費を1か月間テストしました。
結果は下記の通りです。
平均は2.98と出ましたが、さすがにこれだけのデータで断定するのは無理があります。
いくらからいくらの間と推定するのが適当でしょうか?
このような推定を区間推定と言いますが、区間推定についての解説は既に沢山書かれていますので、ここでは少し違う角度から解説してみます。
直球の解説で分からなかった人の参考になれば幸いです。
ヒストグラムにする
まず、このようなデータは正規分布に従うのが常です。
実際に、ヒストグラムを描いてみると、このように正規分布の形になります。
でも、統計的にはnが十分に大きくないと正規分布に従わないと言われています。
この例ではnは15です。
nがどのくらい大きければ「十分に大きい」と言えるのかについては明確な基準はありませんが、概ね30以上と言われています。
t分布で近似する
ではnが大きくない場合にはどうすれば良いのか?
そのためにあるのがt分布です。
これはt分布のグラフをエクセルで描いたものですが、正規分布によく似ています。
違うのは、自由度によって形が異なり、自由度が小さいほど横に広がっていることです。
自由度とは大雑把に言うとデータ数です。
データ数が少ないということは、それだけ確信度が低いということなので、データのばらつきが大きい、つまりグラフが横に広がるというわけです。
データ数が少ないほど、自信のない分布になるのです。
この例では自由度は14です。
なぜ14なのか説明します。
データ数、つまりnは15でしたね。
データ数が15個あると、14個までは自由に数を変えられますが、最後の1個は合計が決まっていたら自動的に決まってしまいます。
部屋数15室のホテルがあるとして、14組の客までは好きな部屋を選ぶ自由度があるけれども、最後の1組は残りの部屋に自動的に決まってしまうようなイメージです。
このように、自由に選べる数を自由度といい、通常、データ数-1になります。
先ほどn(データ数)が概ね30以上なら正規分布に従うと言いましたが、試しに自由度30のt分布のグラフと正規分布のグラフを比較してみましょう。
このように、ほぼ一致します。
nが30以上の場合は正規分布を使っていいけども、それより小さい場合はt分布を使いましょうという理由がここにあります。
平均値の標準偏差を求める
ここでさきほどの例に戻りましょう。
15台の燃費の平均は2.98でしたが、分散も求めてみましょう。
分散にはnで割る標本標準偏差とn-1で割る不偏標準偏差の2種類があります。
ここでは不偏標準偏差を使います。
不偏標準偏差はエクセルのSTDEV関数で簡単に計算できます。
計算してみると0.24になりました。
でもこれは15個のデータのばらつきを表す標準偏差です。
私たちが知りたいのは平均値のばらつきの程度です。
15個のデータの標準偏差をsとすると、その平均値の標準偏差はs/√15になります。
これは分散の加法性から分かります。
15個のデータをx1、x2、、、x15とします。
すると15個の平均値は(x1+x2+ … +x15)/15です。
この平均値の分散は
V{(x1+x2+ … +x15)/15}
= (1/15)2V(x1+x2+ … +x15)
= (1/15)2 {V(x1)+ V(x2)+ … +V(x15)}
= (1/15)2 V(x1)×15
= V(x1) / 15
分散の平方根が標準偏差ですので、平均値の標準偏差はs/√15になります。
先ほど標準偏差sは0.24でしたので、平均値の標準偏差は0.062です。
t分布表からp値を求める
ここで、t分布表を見ます。
>> t分布表
自由度14の有意水準5%のp値は2.14です。
これはグラフでいうと、次のことを意味します。
95%信頼区間を求める
しかし、このグラフは正規化してあり、標準偏差が1の場合のt分布です。
今回のデータでは標準偏差は0.062ですので、幅が0.062倍されます。
つまりこういうことです。
従って、燃費は平均2.98±0.13であることが、確信度(信頼区間)95%で言えることになります。
意外と、精度の良い数字でした。
区間推定はベイズ推定でやっても同じ結果が得られます。
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