発電や送電の原理、三相電源のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。
電気には、なぜ交流と直流があるの?
家のコンセントと業務用コンセントはなぜ違うの?
単相と三相って何?
などについて、電気国家資格を持つ管理人が、なるべく平易に解説します。
発電の原理
電気が生まれる原理は簡単です。
鉄線を巻いたコイルに、磁石を近づけたり遠ざけたりすると、鉄線に電流が流れます。
これが電磁誘導と呼ばれる現象です。
下図では磁石のS極を近づけたり遠ざけたりしていますが、N極で同じことをすると逆向きの電流が流れます。
自転車のタイヤに付いている発電機が分かり易い例です。
昔の自転車の車輪にはこのような発電機が付いていました。
この発電機の軸には磁石が付いていて、その周りはコイルで覆われています。
車輪の回転で軸が回転させられることによって、磁石とコイルの間の距離が変わり、電流が流れるのです。
日本の発電所は火力、水力、原子力でほとんどを占めていますが、すべてこれと同じ原理です。
火力、水力、原子力の何であろうと、タービンを回して磁石を回転させているからです。
この場合、磁石のN極やS極が一定周期で動きますので、電流の向きも一定周期で変わります。
磁石を回転させるので当たり前ですね。
そのため、生み出される電流も次のように周期的になります。
これが交流です。
つまり、一部を除いて、電気は交流の形で生まれるのです。
送電の原理
発電所で生まれた電気は、遠く離れた消費者に送電されます。
遠くまで電線で運びますので、途中で電気の損失が発生します。
損失のない物理現象はないのです。
そしてこの損失は、電圧を大きくすればするほど小さくなります。
そのため、発電所からは数十万ボルトの超高電圧で送り出されます。
ところが余りに電圧が高いと危険ですし、私たちが家で使う電気は100Vですので、途中で4、5回変電されて住宅地に来る頃には6,600Vまで落とします。
ですので変電所はいろいろな場所にあります。
そして、変電の原理も発電の原理と同じです。
つまり、交流でないといけないのです。
これが電線を流れる電気が交流である大きな理由です。
三相電源のメリットとデメリット
私たちの家には6,600Vから更に変圧されて100Vの電気が来ています。
最近は広い部屋用に200Vのエアコンも普及していますが、2つの100Vのラインを併せて200Vにしていますので、大きな違いではありません。
そして、コンセントは基本的に2つ口です。
電流が送り込まれる口が1つと、帰る口が1つです。
たまに3つ口のコンセントがありますが、残りの1つはアース線がつながる口で、漏電防止用のおまけです。
これを単相電源と言います。
これに対して、工場や物流センターなどでは、三相電源が用いられます。
三相電源では電流が送り込まれる口が3つと、アースの口が1つ、合計4つ口になっています。
なぜ電流を送り込む口が3つもあるのかと言うと、その方が単位時間当たりに沢山の電流を送り込めるからです。
このように高い密度の電流を送り込めるため、産業用機器のように大きなパワーが必要な機器には三相電源が用いられるのです。
先ほど、三相では電流が送り込まれる口が3つあると言いました。
単相では電流が送り込まれる口が1つと、電流が帰る口が1つでしたね。
なぜ三相には電流が帰る口がないのでしょうか?
それは3つの電流の合計が常にゼロになるからです。
下の図を見ていただけると分かると思います。
だから、電流を返す口が要らないのです。
また三相電源の電圧は200Vです。
電圧が2倍になると半分の時間で同じ仕事ができます。
更に三相にすることによって多くの電流を送り込めますので、より効率の高い仕事ができるのです。
また三相電源は電気代も安くなっています。
電柱に来ている6,600V三相電源からの変圧が簡単だからです。
いいことづくめのように思えますね。
ではなぜ一般家庭で三相電源が使われていないのでしょうか?
そんなに高効率なら家庭でも使いたいですよね。
でも家庭で使う電気機器はそこまでパワーが要らないので、三相電源を使うメリットがほとんどありません。
逆に電線をもう一本増やす手間とか、安全面対策を考えると、デメリットの方が大きくなってしまうのです。