摩擦力/仕事/エネルギーの関係をわかりやすく解説【エネルギー保存則の導出】
前回の記事で、トラックの制動距離を下記の式から求めました。
トラックの制動距離に重量は関係するのか?【エネルギー保存則だけでは不十分!?】
½mv2=μmgL
μ:タイヤと路面の摩擦係数
L:制動距離(m)
m:トラックの質量(kg)
v:トラックの速度(m/s)
g:重力加速度(9.8m/s2)
そもそも、なぜこの式になるのでしょうか?
もう少し詳しく解説します。
仕事=力×距離
下記の記事で物体に加速度を与えるのが「力」で、単位はN(ニュートン)、1Nは次のように定義されることを解説しました。
質量1kgの物体に作用して1m/s2 の加速度を生じさせる力
床荷重の単位はkg/m2?N/m2?間違えやすくなった経緯と単位換算方法
この「力」に距離をかけたものが「仕事」です。
そして、1Nの力で1m動かした仕事を1 J(ジュール)と定義します。
1 J=1N×1m=1kg×1m/s2×1m
摩擦力は力の一種
ツルツルの平面の上では、物体がよく滑ります。
例えば、氷の上を滑るカーリングの石です。
しかし、道路の上では同じ石でもあまり滑りません。
これを、氷は摩擦係数が小さく、道路は摩擦係数が大きいと言います。
物理の記号ではμ(ミュー)で表します。
また、物体の重さによっても、滑り易さは違います。
重い方が滑りません。
言い換えると、重い物体の方が摩擦力が大きいのです。
つまり、摩擦力は摩擦係数μと物体の重さに比例します。
式で書くとこうです。
F=μmg
F:摩擦力
μ:摩擦係数
m:物体の質量
g:重力加速度
そして、力に距離をかけたものが仕事ですから、L(m)滑ったらμmgL の仕事をしたことになります。
エネルギー保存則の導出
エネルギー=仕事
動いている物体が他の物体にぶつかると、その物体を動かします。
つまり、仕事をさせます。
つまり、動いている物体は、他の物体に仕事をさせる能力を持っているわけで、その能力を「エネルギー」と言います。
このエネルギーは物体の質量に比例し、動いている速度の2乗に比例することが知られています。
そして½mv2のように表されます。
他の物体に仕事をさせる能力がエネルギーですので、仕事とエネルギーは同じです。
速度の変化はエネルギーの増減
粗い床の上に物体を滑らすシーンを考えてみましょう。
その物体を放った瞬間の速度は、段々と減速していきますね。
放った瞬間の速度をv1、a秒後の速度をv2、a秒でL m滑るとしましょう。
物体の質量はmとします。
エネルギーは
½mv12-½mv22
だけ減少しますね。
摩擦力による仕事
また、このエネルギーの減少は、摩擦力によって負(マイナス)の仕事をされたからと考えることができます。
摩擦力による仕事は
μmgL
です。
2つはイコール
従って、
½mv12-½mv22=μmgL
が成り立ちます。
v2がゼロ、つまり物体が止まったとすると、
½mv12=μmgL
となり、これが冒頭の式になるのです。