変動係数の使い方を具体例で解説します。物流における適用事例も紹介
標準偏差では「ばらつき」を比較できない
ある専門商社では取り扱い商品数が多いため、カテゴリーごとに在庫日数を設定して在庫管理を行おうとしています。
安全在庫は、
安全在庫=需要の標準偏差×安全係数
で決まるため、各商品について計算した標準偏差でカテゴリー分けしようとしています。
需要が安定した商品は標準偏差が小さくなり、日々需要のばらつきが大きい商品は標準偏差が大きくなります。
標準偏差が大きな商品というのは、それだけ欠品になるリスクが大きくなりますので、安全係数を大きめに設定するというのは一定の合理性があります。
このやり方は正しいでしょうか?
結論からいうと正しくありません。
標準偏差が同じであっても、需要のばらつきが同じとは言えないからです。
標準偏差ではばらつきが測れない具体例
例を見てみましょう。

これは2つの商品の需要データですが、標準偏差は571で同じです。
しかし、どう見ても商品Aの方が需要が安定していますね。
商品Bは普段あまり需要がないのに、たまに2,000個以上需要がある日が続いたりして、欠品になるリスクが高いと言えます。
このような商品は安全係数を大きめにしておく方がいいかもしれませんね。
つまり、この2つの商品は同じカテゴリーで在庫管理すべきではないのです。
では、何を基準にカテゴリー分けをすればいいのでしょうか?
そんな時に役に立つのが変動係数です。
変動係数ならばらつきを比較できる
変動係数の求め方は簡単です。
変動係数=標準偏差/平均
標準偏差も平均も、安全在庫を求める時に必要になる基本的な統計量ですね。
平均に対する標準偏差の割合を計算しているだけです。
両商品について計算してみると、このようになります。
平均が3倍くらい違うので、商品Aの変動係数は1/3くらいになっています。
これだと需要のばらつきを適切に表していると言えそうですね。
変動係数の物流における適用事例
このように変動係数はデータのばらつき度合を表すのに使えます。
物流の世界では、例えば次のようなことにも使えます。
- 複数の物流センターの生産性を比較したいが、物量のばらつきが違うと同じ土俵で比較できない。そこで、日々の物量の変動係数が同じくらいの物流センターで比較を行う
- 工程間のラインバランスを取るために、各工程における生産性のばらつきをバッファーとして考慮する必要がある。変動係数でばらつきを表すのが適切
- 複数ブランドのタイヤの摩耗度合いを比較するのに、平均だけでなくばらつき度合いも気になる。標準偏差よりも変動係数の方がばらつき度合いをうまく表せる
- トラックドライバーごとに毎月の燃費のばらつきを変動係数でチェックする。ばらつきが大きいドライバーは燃料を抜いてる???
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