変動係数(CV)で何がわかるの?標準偏差との違いは何?単位はないの?

2024年3月8日

標準偏差では「ばらつき」を比較できない

ある専門商社では取り扱い商品数が多いため、カテゴリーごとに在庫日数を設定して在庫管理を行おうとしています。

安全在庫は、

安全在庫=需要の標準偏差×安全係数

で決まるため、各商品について計算した標準偏差でカテゴリー分けしようとしています。

【安全在庫の計算式】標準偏差と安全係数から計算する式をわかりやすく

 

需要が安定した商品は標準偏差が小さくなり、日々需要のばらつきが大きい商品は標準偏差が大きくなります。

標準偏差が大きな商品というのは、それだけ欠品になるリスクが大きくなりますので、安全係数を大きめに設定するというのは一定の合理性があります。

このやり方は正しいでしょうか?

 

結論からいうと正しくありません。

標準偏差が同じであっても、需要のばらつきが同じとは言えないからです

 

標準偏差ではばらつきが測れない具体例

例を見てみましょう。

クリックすると拡大します

これは2つの商品の需要データですが、標準偏差は571で同じです。

しかし、どう見ても商品Aの方が需要が安定していますね。

商品Bは普段あまり需要がないのに、たまに2,000個以上需要がある日が続いたりして、欠品になるリスクが高いと言えます。

このような商品は安全係数を大きめにしておく方がいいかもしれませんね。

 

つまり、この2つの商品は同じカテゴリーで在庫管理すべきではないのです。

では、何を基準にカテゴリー分けをすればいいのでしょうか?

そんな時に役に立つのが変動係数です。

英語ではCoefficient of Variationと呼ばれているので、略してCVと呼ぶ人もいます。

 

変動係数の計算式

変動係数の求め方は簡単です。

変動係数=標準偏差/平均

 

標準偏差平均も、安全在庫を求める時に必要になる基本的な統計量ですね。

平均に対する標準偏差の割合を計算しているだけです。

ですので単位はありません

無次元の値です。

 

変動係数ならばらつきを測れる

さきほどの両商品について計算してみると、このようになります。

 

平均が3倍くらい違うので、商品Aの変動係数は1/3くらいになっています。

これだと需要のばらつきを適切に表していると言えそうですね。

 

変動係数の物流における適用事例

このように変動係数はデータのばらつき度合を表すのに使えます。

物流の世界では、例えば次のようなことにも使えます。

  1. 複数の物流センターの生産性を比較したいが、物量のばらつきが違うと同じ土俵で比較できない。そこで、日々の物量の変動係数が同じくらいの物流センターで比較を行う
  2. 工程間のラインバランスを取るために、各工程における生産性のばらつきをバッファーとして考慮する必要がある。変動係数でばらつきを表すのが適切
  3. 複数ブランドのタイヤの摩耗度合いを比較するのに、平均だけでなくばらつき度合いも気になる。標準偏差よりも変動係数の方がばらつき度合いをうまく表せる
  4. トラックドライバーごとに毎月の燃費のばらつきを変動係数でチェックする。ばらつきが大きいドライバーは燃料を抜いてる???

 

Udemyの関連講座

はじめての統計(推定・検定編) ~記述統計から推測統計へ!しっかり9時間、97レクチャーでデータ時代の入場券を手に入れる

データサイエンス時代にまず押さえるべきデータの扱い方・見方を扱った統計講座。データをどう要約し、分かりやすく伝えるのか(記述統計)から、そのデータから母集団について何が言えるのか(推測統計)まで、丁寧に統計的発想を身に付けます。

 

文系出身・数学がニガテ・知識ゼロの方大歓迎!社会人のための統計活用力養成講座 ~ データサイエンスの基礎を攻略!

「最も面白く,役に立った!」と評価される集合型研修のオリジナル映像講座版!文系・数学が苦手・過去に学習したが挫折したといった方でも大丈夫!統計を実際に使う時に必要な視点から学ぶ,統計を使って的確な解釈・判断ができるようになることを目指す講座

 

【しっかり原理を理解したい方向け】東大理系女子と学ぶはじめての統計学

統計学を学んだことのない方向けの入門コースです。原理をきちんと説明しますので、これからステップアップしたい方に最適です。

 

いちばん理解できる統計学ベーシック講座その1【確率分布・推定・検定】

統計学の基礎を効率的に学べるベーシック講座です。統計学の入り口となる「確率分布・推定・検定」について豊富な図を用いて説明していきます。統計学や確率思考という一生モノのスキルを一緒に身につけましょう!