【モンテカルロシミュレーション】倉庫の保管容量を求める方法をエクセルVBAで実演!

2021年7月29日

前回(倉庫レイアウトの設計方法【平置き】)は、平置きで1,448パレット分の貨物を保管できるレイアウトを作成しました。

しかし、1ブロックに8または10パレットを保管するため、空きスペースができてしまって目標の1,400パレット分を保管できないかもしれません。

先入れ先出しをするためには、同じブロックに違う入荷日の貨物を置けないからです。

 

実際、どれくらいの空スペースができるのかを式で解析的に求めることは困難です。

このような時には、モンテカルロシミュレーションにより確率的に予測するしかありません。

今回は、以前の記事(最小発注数量が保管効率に与える影響をシミュレーション)で作成したエクセルマクロを使ってシミュレーションしてみます。

 

シミュレーションを設計する

まずはやりたいことを整理しておきましょう。

保管したい物量はパレット1,400枚分です。

日々の保管量は変動しますので、瞬間的に1,400パレットを超える時があるかもしれません。

これを一切許容できないというのは条件が厳しすぎますので、5%の確率で超えるのは良しとします。

これくらいなら現場で対応できるでしょう。

 

また平置きの2段積みで保管できるパレットポジションは1,448あります。

これは156ブロックに分かれていて、8パレットポジションあるブロックと10パレットポジションあるブロックがあります。

 

商品アイテム数(SKU数)は9で、商品アイテムごとに8パレットのブロックに置くか10パレットのブロックに置くかを予め決めておくものとします。

またアイテムごとに過去の出荷データがあり、平均と標準偏差が分かっているものとします。

 

調べたいのは保管効率です。

保管効率は次のように定義しておきます。

保管効率 =(使用されているブロックのフルポジション数-使用されているブロックの空ポジション数)÷ 使用されているブロックのフルポジション数

 

その上で、次のようなシミュレーションを行います。

  1. 発注間隔:2日、リードタイム:3日、許容欠品率:1%で発注を行う
  2. 9個の商品アイテムを3個ずつ3カテゴリーに分類し、それぞれのカテゴリーの需要特性と最小発注数量を次の通りとする
    • 商品カテゴリーA:需要平均1,000、需要標準偏差700、最小発注数量2,000
    • 商品カテゴリーB:需要平均500、需要標準偏差350、最小発注数量1,000
    • 商品カテゴリーC:需要平均100、需要標準偏差70、最小発注数量500
  1. それぞれの商品カテゴリーごとに500回のモンテカルロシミュレーションを行い、保管効率の分布を調べる

 

シミュレーションを実行する

それぞれの商品カテゴリーでシミュレーションした結果は以下の通りです。

※分散は標準偏差の2乗

 

商品カテゴリーAからCの順に保管効率は低くなっていますが、標準偏差や分散(標準偏差の2乗)はいずれも小さくなっています。

これは、平均値からのばらつきが小さいということなので、かなり精度の良い予測だと言えます。

 

シュミュレーション結果を考察する

次にすることは、9アイテムすべて併せた保管効率の平均と標準偏差を求めることです。

各商品カテゴリーには3アイテムずつあり、同じ商品カテゴリーに属するアイテムはすべて同じ需要特性を持つと仮定しています。

ここで、平均と分散が分かっている2つのデータ郡を併せた時の、平均と分散の性質を使います。

E(X±Y) = E(X) + E(Y)

V(X±Y) = V(X) + V(Y)

E(X):Xの平均

V(X):Xの分散

(分散の加法性についてはこちら >> 分散の加法性を平均値に適用する

 

つまり、2つのデータ郡を併せた平均と分散は、それぞれ郡の平均と分散を足した値になるという性質です。

例えば、3年B組の国語のテストの平均点が50点、数学のそれが70点だった場合、国語と数学の合計点数の平均は120点になります。

また分散についても、国語テストの分散が400、数学テストのそれが900だった場合、国語と数学の合計点数の分散は1,300になるということです。

 

この性質を使うと、商品カテゴリーAの3アイテムすべての保管効率の平均、分散、標準偏差は次のように計算できます。

平均 = (96 + 96 + 96) / 3 = 96

分散 = (0.44 + 0.44 + 0.44) / 3 = 0.44

標準偏差 = √0.44 = 0.66

(平均も分散も加法性が成り立ちますが、これは足し合わせたデータ郡についての性質です。今回は保管効率を足し合わせても仕方ありませんので、平均を取っていることに注意です。)

 

同様にその他の商品カテゴリーについても計算すると、次のようになります。

 

続いて、9個の商品アイテム全体について計算します。

平均、分散とも需要に応じた加重平均を取ります。

(分散の加重平均は係数を2乗していることに注意です)

また、標準偏差は分散の平方根ですので下記のようになります。

 

ここから分かることは、平均保管率は94%で、そこから振れたとしても94±0.81%以内に68%の確率で収まるということです。

平均±1σの範囲に全体の68%のデータが収まるため

求めたいのは95%のデータが収まる範囲ですので、σ(標準偏差)何個分を取ればよいかを標準正規分布表で調べます。

片側では47.5%になりますので、0.475の値を調べます。

すると、下記のように1.96となります。

 

つまり、平均±1.96σの中に、全体の95%のデータが入ります。

実際の数値を当てはめると、

94 ± 1.96 x 0.81 = 92~96%

ですので、保管効率が92~96%のいずれかになる確率は95%です。

これは言い方を変えれば、保管効率が92%未満になる確率が5%しかなく、滅多に起きないということです。

 

そこで、保管効率92%で1,400パレット置けるロケーション数を計算します。

1,400 ÷ 92% = 1,522

従って、平置きで1,522パレットロケーションを確保できていれば、1,400パレット分の貨物を収容することができます。

 

しかし、1,448パレット分しかレイアウトできませんので、残念ながらもう少し広い倉庫が必要という結論になるのでした。