床荷重の単位はkg/m2?N/m2?間違えやすくなった経緯と単位換算方法
倉庫を建設する時や、貸倉庫を選定する時に、床荷重の大きさは重要なファクターです。
しかし、単位がkg/m2だったり、N/m2だったりして混乱したことはないでしょうか?
この際、スッキリさせておきましょう。
質量と重量の違い
私たちが普段「床荷重」と言っているのは、正式には「床の積載荷重」のことです。
荷重とは物体に働く「力」のことです。
そして力とは物体に加速度を与えるもので、単位はN(ニュートン)、1Nは次のように定義されます。
質量1kgの物体に作用して1m/s2 の加速度を生じさせる力
この他に別の表現方法もあります。
それがkg重(またはkgf)で、1kg重は次のように定義されます。
質量1kgの物体に作用して9.8m/s2 の加速度を生じさせる力
私たちが普段「重さ」とか「重量」と言っているのは、このkg重のことです。
つまり、重さとか重量は力の一種です。
そして定義から分かるように、Nとkg重の間には次の関係が成り立ちます。
1kg重= 9.8N
つまり、kgは質量の単位で、Nやkg重は力の単位です。
(重さや重量は力の一種)
ですから体重60kgという表現は本当は間違いです。
正確には体重60kg重、もしくは588Nというべきなのです。
でもそんな風に言う人なんていませんよね。
なぜ、こんな紛らわしいことになっているのでしょうか?
重量単位系からSI単位系になったのがきっかけ
それは1993年の計量法の改正がきっかけです。
それ以前は重力単位系が採用されていてkg重が力の単位でした。
それが改正後はSI単位系になりNが力の単位になりました。
これは国際標準に合わせるためです。
ところがここで問題が生じます。
商品の重さはgやkgで書かれていますね。
また体重計もkgで表示されます。
これらを9.8倍したNで表示すると、国民が混乱してしまいます。
そこで、政府は
「重さ,重量の単位での商品売買を禁止し,新たに質量概念での商品売買を義務化する。(違反者には 50 万円以下の罰金)」
としたのです。
国民やメーカーを混乱させないための苦肉の策とも言えます。
ところが、われわれ国民の中に、
「私の質量は60kgです」
という人がどれだけいるでしょうか?
それだけではありません。
法律の条文にも「重量xx kg」のような記載が多く残っています。
そのため、ほとんどの国民が混乱してしまい、質量と重量(重さ)の区別がつかなくなってしまったのです。
床荷重の正式な単位はN/m2
話しが逸れましたが、kgは質量の単位で、Nやkg重が力の単位です。
そして、その間の関係は
1kg重 = 9.8N
です。
床荷重は力の一種ですので、正式な単位はN/m2です。
ところが、N/m2では実感が湧かないため、kg/m2を使う人の方が多いのが実情です。
でもその場合でも、kg重/m2のことを言っているのだということは知っておいた方がいいでしょう。
N/m2からkg/m2への換算方法
ちなみに、建築基準法では建物の用途ごとに床荷重(床の積載荷重)の基準が定められており、下記のように単位はN/m2で書かれています。
例えば、事務室は2,900 N/m2ですが、これではイメージが湧きませんね。
そこで重力単位系で表すと、
2,900 N/m2÷9.8=296 kg重/m2
となり、1m×1mのスペースに約300kgまでの質量の物体を設置することができることが分かるのわけです。
倉庫の床荷重は、これよりかなり頑強なため、2 t/m2のようにトンで言うことが多いですね。
その場合でも、本当は2 t重/m2、または
2,000 kg重/m2×9.8=19,600 N/m2=19.6 kN/m2
が床荷重(力の一種)の正確な単位であることは、頭の片隅に置いておきましょう。
2 t/m2のような言い方は、イメージが湧きやすくするための仮の表現方法なのです。
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