デジタコとドラレコと動態管理システムは何が違うのかをまとめてみた。
トラックに搭載する運行管理システムにはいろいろありますが、よく耳にするのは次の3つではないでしょうか?
- デジタルタコグラフ(デジタコ)
- ドライブレコーダー(ドラレコ)
- 動態管理システム
最近はこれらのうち2つ、もしくは3つ全部を組み合わせた複合機も存在するため区別するのが難しくなっていますが、元来の目的は異なります。
それぞれの本質を順に見ていきましょう。
法定義務化されているデジタルタコグラフ
タコグラフとは?
デジタルタコグラフとはデジタルのタコグラフということですが、当然アナログのタコグラフもあります。
タコグラフとは何でしょうか?
車好きの人なら(そうでなくても)エンジン回転数計のことをタコメーターと呼びますね。
このようにタコメーターとは、回転体の回転数を測定する機器というのが本来の意味です。
ですので、タコグラフとは回転数を記録する機器のことです。
ところが、トラックに付けるタコグラフは、主に速度を記録します。
なぜ速度を記録するのにタコグラフというのかというと、タイヤの回転数から速度を求めているからです。
タイヤのサイズ(外周)が分かっていれば、1秒間に何回転したかを測れば速度が求まりますね。
つまり、速度を測るということは車軸の回転数を測ることと同じなので、速度を記録する機器のことをタコグラフと呼んでいるのです。
タコグラフの搭載義務
タコグラフは1967年に搭載義務化がスタートしました。
当初は車両総重量8トン以上、または最大積載量5トン以上のトラックでしたが、2015年には車両総重量7トン以上、または最大積載量4トン以上に範囲が広がりました。
タコグラフで測定すべき必須項目は法律で決められています。
これは法定三要素と呼ばれ、速度、時間、距離です。
すべてのタコグラフは、これら法定三要素が測定・記録できるようになっていて、それ以外の測定項目はタコグラフメーカーの裁量で決めることができます。
ちなみにタコグラフの搭載義務がない小型トラックでも、運転日報を作成して1年間保管しなければならないことが貨物自動車運送事業輸送安全規則で決められています。
アナログタコグラフ
今ではタコグラフと言えばデジタルタコグラフ(デジタコ)が主流ですが、1960年代にタコグラフが登場した頃はアナログタコグラフ(アナタコ)でした。
これはスピードメータの裏面に円形の感圧記録紙をセットすると、24時間で下図のようなグラフが記録されるというものです。
ウィキペディア タコグラフ から抜粋&加筆
外周に1~24の目盛りが振ってありますが、これが時間を示します。
24時間分しか記録されないので、毎日紙を取り替えます。
中ほどのグラフは速度を示します。
目盛りが0~100まで20おきに振ってありますね。
一番内側にあるギザギザのグラフは距離を示します。
一つの山が10kmを示します。
従って、山の数を数えれば走行距離が分かるようになっています。
このように法定三要素をアナログのグラフで記録してくれるのがアナタコです。
デジタルタコグラフ
1990年代からアナログタコグラフはデジタルタコグラフ(デジタコ)に置き換わっていきました。
これにより紙に代わって、SDカードに測定値が記録されるようになりました。
アナタコでは細かいグラフを目視で読み取るため大体の値しか分からなかったものが、デジタコによりPC上でデータ処理できるようになりました。
また、データの改ざんができなくなったことも大きいと言われています。
アナタコでは感圧記録紙に線を描く針を少し曲げることで、本当は100km/時のスピードを90km/時として記録するというようなズルができてしまうのです。
これは行政処分の対象にもなります。
そしてGPSの普及とデータ通信コストの低減に伴って、SDカードにデータ保存する方式から、位置情報と共にデータセンター経由で事務所にいながらもリアルタイムでデータを見れるようになりました。
こうなると他のデータも見たくなるもので、燃料量データを元に燃費をリアルタイムで測定したり、貨物の品質を保つために荷台の温度をリアルタイムで監視したりというような機能も付加したデジタコも出てきました。
そのためには測定値を得るためのセンサーを付けたり、センサーからデジタコへの配線が必要になったりするのですが、最近では車を制御するための通信ネットワークであるCAN-BUSから簡単にあらゆるデータが取得できるようになっています。
CANとはController Area Networkの略で、車の中にあるセンサーやアクチュエータのデータを、それらのメーカーに依らずに通信可能にした通信ネットワークです。
このCAN-BUSと言われる通信バスに接続するだけで、車の運転状態に関するあらゆるデータが得られるようになったため、これらをデジタコに取り入れてリアルタイムに事務所で監視することもできるようになっています。
このように技術が進化してくると、デジタコ以外にも法定三要素を測定・記録できる機器はいくらでも出てきます。
しかし、いくら多機能、高機能であろうとも、国交省が型式認定したデジタコ機器以外で代替することは今のところ許されていません。
事故時の証拠映像を撮るドライブレコーダー
ドライブレコーダー(ドラレコ)とは、航空機に搭載されているフライトレコーダー(ブラックボックス)の自動車版です。
日本では2000年代から普及し始めました。
車両の前後方向だけでなく、車内のフロントガラス等に設置したカメラにより運転手や運転席の側面の道路状況を常時記録しておき(古い映像は順次消去)、加速度センサー(Gセンサー)で衝撃を感知したら、前後の時間の映像をいつでも出せるようになっています。
事故発生場所や時間を特定するためGPS機能も付いています。
これにより、事故時の状況証拠を警察や保険会社に示すことができ、事故処理がスムーズになります。
また事故が起こらないまでも、ヒヤリハットした時にもGセンサーが働き映像が残りますので、ドライバーの予防安全運転教育にも使えます。
【ガンマ分布の使い方】ヒヤリハットへの適用方法を具体例で解説します。
今のところ、貸切バスには搭載が義務化されていますが、トラックにはされていません。
配車業務効率化のための動態管理システム
動態管理システムとは、車載端末やスマホ等からデータ通信機能を利用してデータセンターにデータを送信し、インターネットを介して車両の位置や運行状況などのデータを事務所でリアルタイムに受信できるようにするクラウドサービスです。
トラックが今どこを走っているかを、PC上の地図にリアルタイムで表示できます。
また走行した緯度経度と時間が一緒に履歴データとして残るため、走行距離や速度も自動的に計算できてデータとして残せます。
緯度経度のデータからランニングした距離をExcelで計算してみた。
動態管理システムはデジタコと違って搭載義務はありませんが、デジタコによっては付加機能として付いている機種もあるためよく混同されることがあります。
しかし動態管理とは、あくまでGPSにより位置情報をリアルタイムで把握する機能のことです。
この機能は、スポット輸送サービスが多い運送会社には便利です。
どこを空荷のトラックが走行しているのかが一目で分かるため、配車を機動的に行うことができます。
また、複数配送先の貨物を一台のトラックに積載して順番に配送する混載サービスにおいても、途中の遅れが一目で分かるため便利です。
一方、単一荷主に対するチャーター輸送サービスで、かつそれが定期便である場合には、余り配車業務効率化のメリットは期待できません。
しかし、動態管理サービスは何もトラック輸送業務だけのためにあるのではありません。
営業マン用やサービスエンジニア用等の社用車を多く抱えている会社にも有効です。
社用車を使う人にとっては、位置と時間のデータが自動取得できることで、日報の作成の手間が減ります。
管理者にとっては、いつも見ているぞということを示すことで、私的利用の抑止効果があるでしょう。
また、個々の社用車の車検やメンテナンス履歴等もシステムに入れておくことにより、車両管理にも使えます。