【アジリティ】応募する前に知っておきたい会社の歴史と収益性と事業内容

2022年3月11日

Agility Public Warehousing Company K.S.C.P.は1979年にクウェートの国営倉庫会社として設立され、97年に民営化、1984年からクウェート証券取引所、2006年からはドバイ金融市場にも上場している国際総合物流企業です。

2020年度の売上高は5,284百万USDで、これは近鉄エクスプレスに匹敵する規模です。

3PLのグローバル売上ランキングでは21位です。

【2021年版】3PLグローバル売上高ランキング 30社|事業セグメント別に独自調査

 

ところが、来年にはランキング外に落ちる見込みです。

その理由はこの記事の中盤で明らかになります。

 

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アジリティの歴史

元はクウェートの国営倉庫会社

1979年にクウェートの国営会社として設立されたPublic Warehousing Companyは、国策として倉庫建設を中心とするインフラ整備を担っていましたが、1997年には民営化されてクウェートの資本家が経営権を握りました。

 

2005年から怒涛のM&Aで3年で売上高4倍に

最初の数年間は大きな動きはありませんでしたが、2005年に怒涛のM&Aを行います。

まず、当時1,500億円ほどの売上があった米国の有力フォワーダーGeologisticsを買収します。

これは当時のAgilityの売上を凌ぐほどの大きな会社の買収です。

そして同年に同じく米国のフォワーダーであるTransoceanic Shippingと、シンガポールのTrans-Linkも買収します。

これによって2006年の売上は、なんと前年の3倍ほどの,000億円規模になりました。

同時に社名をAgilityに変更、一気に国際物流企業の大手として台頭しました。

その後の数年間も年に5社くらいの小型の買収を繰り返し、2008年には今と同じくらいの売上,000億円規模に成長しています。

 

2009年から数年間は低迷

ところが、2009年に潮目が変わります。

それまでの3年間、Agilityの売上高に対するEBITの比率(EBITマージン)は8%を超えていました。

これは物流企業としては大変高い利益率です。

なぜそんなに高かったかと言うと、Defense & Government Servicesの事業を抱えていたためです。

これは米国軍や国連軍の兵站を請け負う業務で、具体的には食料の輸送倉庫業務軍関係者の引っ越し等が含まれます。

1990年にサダム・フセイン率いるイラク軍がクウェートに侵攻したのをきっかけに、米国を中心とする多国籍軍がクウェートに駐屯しました。

Agilityは、これらの軍に付随する兵站業務を2003年から5年契約で請け負いました。

この業務は危険が伴うものの利益率は大変高かったと見られています。

ところが、2009年に米国の国防総省から料金の水増し請求疑惑を掛けられ、起訴されてしまいました。

そのためリーマンショックをも物ともしなかったEBITマージンが、2010年には1%台まで落ち込んでしまいました。

その後の経営努力により直近では5%台になっていますが、売上高は横這いが続いています。

 

稼ぎ頭のロジスティクス部門をDSVに売却

そして2021年には稼ぎ頭であるロジスティクス部門Global Integrated Logistics (GIL)をデンマークの物流大手DSVに売却しました。

これによりAgilityはDSVの株式の8%を握る2番目に大きな株主になりますが、Agility単独としてのロジスティクス事業はなくなることになりました。

 

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アジリティの収益性

売上高の割には高い利益率

まずはコロナ前後の直近2年間の売上高とEBITを見てみましょう。

 

Deutsche Post DHL.3%(2020年)、.5%(2019年)ですので、2年間の平均ではほぼ同等です。

Agilityの売上高がDHLの10分の1以下しかない割には高い利益率です。

先ほど米国国防総省からの仕事がなくなったため、2010年度はEBITマージンが1%台まで落ち込んだことに触れました。

そこで2007年からのEBITマージンを調べたところ、次のようになっていました。

 

2007年からの3年間は8%くらいだったのが、2010年には1%程度に急減した後、徐々に盛り返してきたことが分かります。

2020年はコロナの影響で下がりましたが、それまではほぼ一本調子で盛り返しています。

この間の売上高推移を見てみましょう。

 

意外なことに、売上高はほぼ横這いです。

売上高が変わらないのに利益率が大きく伸びた理由は何でしょうか?

残念ながらAgilityではセグメント別の売上高やコストを公開していないため理由は分かりませんでした。

誰か分かる人がいたら教えてもらいたいです。

物流企業としては羨望の利益率です。

 

アジリティ買収によりDSVの売上は3割増

次に買収する側のDSVにとり、Agilityを買収することでどのくらいのインパクトがあるのかを見てみます。

Agilityはセグメント別の利益が分かるデータを公開していませんが、GIL部門全体の売上高はアニュアルレポートに載っていました。

Agility Public Warehousing Company Annual Report 2020 より抜粋)

 

これによると、Agility全体の売上のうちGIL部門が8割以上を占め、そのまた8割以上をフォワーディングで占めていることが分かります。

フォワーディングの売上高である1,151百万KDは、米ドルに換算すると約,750百万USDになり、DSVのフォワーディングの売上高である11,289百万USDの1/3に相当します。

これだけの売上が乗ってくるのは、DSVに取っても大きいでしょう。

 

これに対してロジスティクスの売上は米ドルにして約711百万USDですが、DSVの同部門の売上高は2,238百万ドルと余り大きくないため、こちらも約1/3に相当します。

DSVにとってAgilityは同じような事業ポートフォリオを持つ物流会社であり、規模的にも1/3と身の丈に合った買収と言えるのではないでしょうか。

 

買収後も残るAgilityの事業はLogistics park(物流センター開発事業)、Fuel logistics(オイル輸送事業)、Commercial real estate(商業施設開発事業)、Airport services(空港業務請負事業)、Digital logistics(テックスタートアップに出資し物流のデジタル化を進める事業)等になります。

 

日本での事業はディエスヴィ・エアーシーへ移管

1985年設立の現地法人であるアジリティ株式会社が日本におけるGIL部門の業務を担ってきましたが、買収に伴いDSVの現地法人であるディエスヴィ・エアーシー株式会社に業務移管されたようです。