【DSV】応募する前に知っておきたい会社の歴史と収益性と事業内容
DSVは1976年にデンマークで創業し、現在はナスダック・コペンハーゲンに上場、デンマークプライム市場の主要25銘柄にも採用されている国際物流企業です。
3PL会社として売上高世界5位です。
【2021年版】外資系物流会社売上高ランキング 30社!事業セグメント別に独自調査
DSVの歴史
創業は1976年と若い会社
DSVは創業が1976年と比較的新しい会社ですが、M&Aによって急速に成長した会社です。
その起源は、2005年までCEOを務めたLeif Tullberg氏が9つの運送会社を束ねて設立した1976年にまで遡ります。
DSVという社名は、デンマーク語で運送業者連合を意味するDe Sammensluttede Vognmændの頭文字に由来するそうです。
超積極買収により世界3位が視野に
会社設立後の最初の10年間は、基幹輸送を担う9社の業務に付随する末端配送等を行っていましたが、1989年に競合だったBorup Autotransport A/SとHammerbro A/S-Bech Transの2社を買収します。
続いて1997年にSamson Transport Co. A/Sを、そして1999年にSvex Group A/Sの2社を買収して陸上輸送網をヨーロッパ全体に広げました。
そして2000年、かつて世界有数の海運会社だったDFDSの輸送部門(DFDS Dan Transport Group)を買収してイギリス、アメリカ、アジア太平洋地域に及ぶ広範な輸送網を手に入れます。
続いて2005年にはドイツのJ.H. Bachmann GmbHを買収し、フォワーディング部門を強化します。
そして2006年にはオランダのKoninklijke Frans Maas Groep N.V.を買収し、ヨーロッパ第3位の陸上輸送会社になります。
2008年にはベルギー国鉄からスピンアウトしてフォワーディング大手に成長していたABX LOGISTICSを買収し、6大陸をカバーするネットワークを手に入れました。
その後も2年に1社くらいのペースで買収を進め、2019年には当時6,000億円規模の売上で日本の大手近鉄エクスプレスを凌ぐ規模を誇っていたPanalpinaを買収、世界5位の3PLプロバイダーになりました。
そして2021年4月にはクウェートの物流大手Agilityのロジスティクス部門(Agility Global Integrated Logistics)を買収しました。
これにより、来年からはDHL、Kuehne + Nagelに次ぐ世界3位の3PLプロバイダーになることが見込まれています。
DSVの収益性
ドイツポストを上回る利益率
まず売上とEBIT(Earnings Before Interest, Taxes)を見てみましょう。
まず驚くのはEBITマージン(EBIT/売上高)の高さです。
Deutsche Post DHLが7.3%(2020年)、6.5%(2019年)ですので、これを上回る数字です。
Deutsche Post DHLは寡占事業であるExpressと郵便のEBITマージンがそれぞれ14%、10%と高いことが、グループ全体のEBITマージンを押し上げている理由でした。
DSVはどうなのでしょうか?
ForwardingとSolutionでDHLを凌ぐ利益率
DSVではAir & Sea Forwarding、Road Freight、Solution(倉庫/DC運営)の3つのセグメントに分かれています。
それぞれの売上高とEBITを調べてみると次のようになりました。
売上高ではAir & Sea Forwardingが一番多く、その約半分がRoad Freight、そのまた半分がSolutionという構成になっています。
EBITマージンではAir & Sea Forwardingが約10%、Solutionが約8%という高い利益率を上げているのが目を引きます。
Deutsche Post DHLでさえ、これらの利益率は3%台でした。
またKuehne + NagelもAir & Sea Forwardingが5%台、Solutionは2%台です。
一般的にForwardingは物量が大きいほど船社や航空会社からの仕入れ値でボリュームディスカウントを得られますので、規模の経済がモノを言う世界です。
規模で劣るDSVがこれら2社より大きなディスカウントが得られるというのは考えにくいことです。
そこで、EBITの定義を詳しく見てみます。
損益計算書を見ると、下記のようにEBIT before special itemsと書いてあります。
更にSpecial items, costsの額が2,164百万DKKと大変大きな額になっています。
通常、EBITは支払利息や受取利息控除前の税引き前純利益として定義されますが、DSVではSpecial itemsも控除していないようです。
ではSpecial itemsの中身は何でしょうか?
コロナ対策やそのためのリストラ費用、減損損失、買収のための諸費用に分かれますが、最初のコロナ関連費用が大きかったようです。
このSpecial itemsを控除したEBITでEBITマージンを計算してみると、6.3%(2020年)、6.2%(2019年)となりました。
これはDeutsche Post DHLより少し低いくらいの水準ですが、それでも十分に高い利益率と言えます。
Special itemsはセグメント別には公開されていなかったため、各セグメントでの控除後EBITは分かりませんが、ForwardingとSolutionセグメントの利益率が高いことは間違いないようです。
PanalpinaとAgilityの買収により近年大幅伸長のフォワーディング物量
次に取り扱い物量を見てみましょう。
Kuehne + Nagelの2020年アニュアルレポートに載っていたデータでは下記の通りです。
(2019年、2020年ともに9か月間のデータ)
(以上 Kuehne + Nagel Annual Report 2020 より抜粋)
まず目を引くのはDHLとKuehne + Nagelはコロナの影響で2020年に売上高が減少したのに対し、DSVだけ増えていることです。
これはグラフの注釈に書いてあるように、買収したPanalpinaの物量が2020年にはフルに寄与したためです。
しかし、それでも競合2社には物量が及びませんが、2021年4月に買収を発表し、第三四半期に買収手続きが完了する予定のAgilityの物量が乗ってくると勢力図が少し変わってきます。
DSVの発表(DSV Panalpina acquires Agility’s Global Integrated Logistics business)によると、Agility分を加えた航空フォワーディングの物量は1,600千トン、海上フォワーディングは2,800千TEUになる見込みなので、次のようになります。
海上、航空共に、DHLと肩を並べることになりそうです。
日本ではディエスヴィ・エアーシー
日本には1990年設立のディエスヴィ・エアーシー株式会社という法人があります。
HP情報によるとAir & Sea Freight部門とLogistics solution部門があり、東京(本社)、成田、横浜、名古屋、大阪に営業所があります。