【ケリー】応募する前に知っておきたい会社の歴史と収益性と事業内容

2023年10月13日

ケリーのルーツはシャングリラホテル

Kerry Logistics(ケリーロジスティクス)は1981年創業の香港の国際物流企業で、2013年にShangri-La Hotels and Resorts(シャングリラホテル)の創業者としても有名なRobert Kuok(ロバート・クオック)氏率いるKerry Properties(ケリープロパティーズ)からスピンオフする形で香港証券取引所に上場しています。

2020年度の売上高は6,878百万USDで、3PLグローバル売上ランキングでは16位です。

【2021年版】3PLグローバル売上高ランキング 30社|事業セグメント別に独自調査

 

ケリーの歴史

創業後20年間は倉庫会社

Kerry Logisticsの起源は1981年に香港のKwai Chung(葵涌)に設立された倉庫会社Kwai Chung Godown Limitedです。

その後1991年には総床面積200,000m2の倉庫を手に入れ、会社をBVI(British Virgin Island)に登記します。

そして1996年には倉庫事業だけでなく、1978年から行っていた不動産開発やインフラ開発も担う法人としてKerry Properties Limitedが設立され、香港証券取引所に上場します。

同時に倉庫事業を担うKerry Warehouse (Hong Kong) Limitedはその子会社となりました。

 

ケリーの強み小口配送事業は2000年に開始

さて、1991年に手に入れた巨大倉庫はその後手狭になり、1999年には同社の象徴ともいえる総床面積130,000m2Kerry Cargo Centre(嘉里貨運中心)をオープンします。

そして2000年の節目に今の社名Kerry Logistics Network Limitedに変更し、現在の同社の強みになっている自社トラックによる小口配送業務を組み合わせたIntegrated Logistics事業(IL事業)を開始します。

 

その後の20年間でアジアに強固なロジスティクスネットワークを構築

その後のKerry LogisticsのIL国際事業の成長は圧巻でした。

中国本土では2003年に最初の倉庫をオープンさせてから、2005年に中国国有の有力企業だったEASと合弁会社を設立し、急速に事業を拡大させました。

現在では中国大陸で総床面積,200,000m2を超える倉庫を運営し、Kerry Logistics全体の40%近くの売上を占めるまでに成長しています。

 

また台湾でも2004年から開始したフォワーディング事業を皮切りに、2008年には同国の上場有力物流企業であるT. Join Transportation Co., Ltd.を買収し、現在は3,000台以上の自社トラックを使ったIL事業を展開しています。

 

またアセアンでの事業も2002年のタイを皮切りに、シンガポールマレーシアインドネシアカンボジアフィリピンベトナムミャンマーにまで及んでいます。

Kerry Logisticsの事業は大きくフォワーディング事業(International Freight Forwarding:IFF事業)とロジスティクス事業(Integrated Logistics:IL事業)の2つに分けられますが、一般的なフォワーディング会社と比較してロジスティクス事業に強いのが特徴です。

従って他のフォワーディング会社が各国に書類のやり取りをするためだけの現地法人を置くのとは異なり、自社で大規模な倉庫や車両を持って、現地に根差した物流サービスを展開しているのが特徴です。

20年間でこれだけのネットワークを整備してきた成長スピードには驚かされます。

 

2021年に中国SFホールディングがケリーロジスティクスを買収

その間、冒頭で述べたように2013年にはKerry Propertiesからスピンアウトして香港に上場していますが、2021年2月に中国の小口物流大手SFホールディング(順豊)がケリーロジスティクスの株式の過半を取得して経営権を握ることが発表されました。

SFホールディングも1993年創業で急速に成長した会社ですが、中国本土での競争環境が激化する中、アジアの国際物流の雄で小口配送の足回りにも強いケリーを買収することで、海外に活路を求めたといわれています。

ちなみにSFホールディングは2021年の最初の四半期では赤字決算になっており、中国本土での小口宅配分野における競争激化は相当なものだと思われます。

 

ケリーの収益性

特殊要因を除いたEBITマージンは6%台

まずは直近2年間の売上高とEBITを見てみましょう。

 

平均で10%以上と高い利益率です。

これはExpress部門の貢献度が高いDHL7%UPSの10%と比べても、同等以上の水準です。

やはり成長率の高いアジアを主戦場としているため利益が出易いのでしょうか?

でも、コロナ特需で軒並み利益を増やしている他のフォワーダーが多い中で、Kerry Logisticsが利益を減らしているのはなぜでしょうか?

もう少し詳しく調べてみます。

Annual Report 2020 | Kerry Logistics より抜粋 & 加筆)

 

すると2019年度は自社倉庫の売却収入(Gain on disposal of warehouses)が臨時収入としてあり、また自社資産の公正価値の変動(Change in fair value of investment properties)の影響もあることが分かりました。

これらは本来の事業とは関係ないため除外して計算すると、本業によるEBITマージン(⋍売上高営業利益率)は次のようになりました。

 

ロジスティクス事業の営業利益率は驚異の12%

意外なことに、Kerryはコロナ特需の恩恵を受けていないように見えます。

そこでセグメント別に詳しく見てみましょう。

セグメント別にはEBITが公開されていなかったため、営業利益で比較しました。

2019年度と2020年度の、IL部門(ロジスティクス)とIFF部門(フォワーディング)の売上高と営業利益は以下の通りでした。

 

これから下記のことが分かります。

  1. 売上はIFFの方が多い
  2. 利益はILの方が圧倒的に多い
  3. IFFはコロナ特需を受けた

 

やはりKerryも御多分に漏れずフォワーディングでコロナ特需を受けていました。

それにしてもロジスティクス部門の利益率は相当に高そうです。

営業利益率を計算してみると次のようになりました。

 

12%というのは相当に高い利益率です。

倉庫事業でここまでの利益率を出すのは難しいと考えられ、自社車両を活用した得意の小口配送によるところが大きいと考えられます。

 

ちなみにKerryは2021年度上期の実績を公開しています。

それによると、フォワーディングの営業利益は2020年上期と比較して.8倍の大幅伸長になっています。

Interim Report 2021 |Kerry Logistics より抜粋)

 

営業利益率にして約10%、2020年度の約3倍です。

コロナ特需、恐るべしです。

しかし、平常時にもそれを上回る12%の営業利益率を上げているロジスティクス部門はもっと恐るべしです。

 

日本事業は独資と合弁の2社で展開

SFホールディングに買収されましたが、経営陣はそのままで、Kerryブランドもそのまま引き継がれます。

日本には100%出資のケリーロジスティクスジャパン株式会社と、通関業者であるKSAインターナショナルとの合弁会社ケリーKSAロジスティクスジャパン 株式会社があるようです。