【シーバロジスティクス】応募する前に知っておきたい会社の歴史と収益性と事業内容

2023年10月13日

CEVA Logistics(シーバロジスティクス)は世界4大インテグレータの1社だったTNTのロジスティクス部門が前身で、現在はフランスの大手海運会社CMA CGM傘下でロジスティクスを担う国際物流企業です。

2020年の売上高は7,506百万USDで、3PLグローバル売上ランキングでは13位です。

【2021年版】3PLグローバル売上高ランキング 30社|事業セグメント別に独自調査

 

シーバロジスティクスの歴史

ルーツは4大インテグレータのTNT

CEVA Logisticsのルーツは終戦後の1946年、Ken Thomas氏がオーストラリアで立ち上げた運送会社KW Thomas Transportにまで遡ります。

1958年には会社名をThomas Nationwide Transport (TNT)に変更し、1962年には早くもオーストラリア証券取引所に上場します。

その後は活発なM&Aを繰り返し、世界の4大インテグレータと呼ばれるまでに成長しました。

 

低採算のロジスティクス部門は投資ファンドへ売却

そして1996年にオランダ最大の電気通信事業者であるKPNに買収されます。

KPNはオランダ国営の郵便及び電信電話会社が前身で、1994年から段階的な民営化を進めている最中でした。(2006年に全株式を民間に売却終了)

TNTは買収後にExpress、郵便、ロジスティクスの3部門に分割されましたが、営業利益率がそれぞれ7%、21%、2%というようにロジスティクス部門がお荷物になっていました。

また当時、4大インテグレータのうち米国を地盤とするUPSとFedExが、ヨーローッパのネットワークを拡充するためにTNTの買収を画策しているという噂がありました。

TNTはこれを阻止するために、低採算のロジスティクス部門を米国の投資ファンドであるApollo Managementに売却し、売却益を使って自社株買いをし、その結果TNTの株価は大幅に上昇し、UPSやFedExは手を引きました。(その後、2016年にFedExがTNTを買収)

 

シーバロジスティクスに社名変更するも赤字が継続

このような経緯でTNTのロジスティクス部門(TNT Logistics)を手に入れたApollo Managementは社名をCEVA Logisticsに変更します。

ところがTNTはTNT Logisticsを売却する前に、フォワーディング部門をUPS Supply Chain Solutionsに売却していて、ほとんどContract Logistics(倉庫/DC運営)だけの会社になっていました。

そこでTNT Logisticsの買収から半年後、Apollo Managementは米国の大手航空フォワーダーだったEGLも買収しフォワーディング部門を強化、CEVA Logisticsに吸収しました。

 

このようにしてCEVA Logisticsが誕生し、EGL買収後の売上高は,000百万USDを越えていました。

しかし、最終利益は2007年からずっとマイナスのままでした。

その大きな理由はApollo ManagementがTNT Logisticsを買収した際の巨額の負債をすべてCEVA Logisticsに引き継がせたためで、その利払い負担が本業で稼ぐ利益を食いつぶしていたのです。

 

世界4位の海運会社CMA CGMが買収

このように最終損益はマイナスのままでしたが、2018年4月にスイス証券取引所に上場を果たします。

それと同時に世界4位の海運会社であるフランスのCMA CGMが、株式の24.99%を取得しました。

その後も株式は買い増されて、上場から1年半後の2019年10月には上場廃止、CMA CGMの傘下に入りました。

CMA CGMには元々CMA CGM Logistics(CC Logというロジスティクス会社がありましたが、CEVA Logisticsに組み込まれました。

CC Logは海運会社のロジスティクス会社だけあり海上フォワーディングが主体です。

一方、CEVA Logisticsはフォワーディング事業の母体であったEGLが航空フォワーディング主体の会社だったため、良い補完関係にあるといわれています。

 

シーバロジスティクスの収益性

EBITマージンは競合に見劣り

まず直近2年間の売上高、EBITDA、EBIT、税引き前純利益を見てみましょう。

 

このように本業での稼ぎを示すEBITでは何とか黒字を確保していますが、利払い後の純利益では依然としてマイナスです。

EBITマージンで見ても、1.8%(2020年)、0.4%(2019年)と、欧州の競合であるK+N.4%DSV.2%と比較して大きく見劣りします。

そこで、2019年にCMA CGMに買収されてから業績が向上しているかどうか調べるために、2014年からの売上EBITDAの推移を調べてみました。

(この期間で共通して得られる財務データが売上とEBITDAだけだったため)

 

EBITDAマージン急増も実質は赤字

これを見ると、2019年度からEBITDAが急増しています。

丁度CMA CGMに買収されたタイミングです。

売上高に対する比率(EBITDAマージン)で見ても、平均3.5%から平均8.5%へ5ポイントほども上昇しています。

なぜCMA CGMに買収されたとたんに、利益率が上昇したのでしょうか?

EBITDAとは減価償却費を引く前の営業利益です。

もしかすると減価償却費の定義を変えたのかもしれません。

そこで2018年度と2020年度の損益計算書をよく見てみると、2019年度からDepreciation of right-of-use assetsの項目がEBITDA後に追加されていることが分かりました。

【2018年度の損益計算書】

(Annual Report 2018 | CEVA Logistics より抜粋 & 加筆)

【2020年度の損益計算書】

(Annual Report 2020 | CEVA Logistics より抜粋 & 加筆)

 

Depreciation of right-of-use assetsとは「使用権資産の減価償却費」という意味で、IFRS(国際会計基準)では2019年からファイナンスリースであろうとオペレーティングリースであろうとすべて「使用権資産」という勘定科目を用いて、貸借対照表に計上することとなりました。

つまり、それまでリース費用として計上していたコストが使用権資産の減価償却費に移動しただけで、最終利益は変わっていません。

税引き前純利益の推移を調べてみると、依然として赤字で厳しい状況であることが分かります。

 

CMA CGMとのシナジー効果で本業の利益であるEBITが増え、それが利払い負担を超えるようになるには、もう少し時間が必要かもしれません。

 

日本ではシーバロジスティクスジャパン

1986年設立の現地法人シーバロジスティクスジャパン株式会社があり、現在約150名の社員が働いています。

元々は米国のフォワーダーCircle International山下新日本汽船の合弁会社でしたが、2000年にEGLがCircle Internationalを買収したことでEGLジャパンになり、更に2007年にCEVA LogisticsがEGLを買収したことで現在の社名になったようです。