【UPS】応募する前に知っておきたい会社の歴史と収益性と事業内容

2023年10月13日

United Parcel Service (UPS)のExpress事業を含む2020年の売上高は83,959百万USDで、これはDeutsche Post DHL グループを上回ります。

この中で3PLを担うUPS Supply Chain Solutionsの売上高は15,184百万USDで、グローバル売上ランキングでは8位です。

【2021年版】外資系物流会社売上高ランキング 30社!事業セグメント別に独自調査

 

1999年にニューヨーク証券取引所に上場し、20世紀最大のIPOといわれています。

 

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UPSの歴史

アメリカ郵政省の下請けとして創業

1907年にAmerican Messenger Companyという社名でシアトルに創業しました。

当初はアメリカ郵政省の下請けとして、徒歩や自転車で小包配達を請け負っていたようです。

1913年にはT型フォードを購入して積み合せ輸送を開始、会社名もMerchants Parcel Deliveryに改称します。

1919年にはカリフォルニア州でも営業免許を取得し、現在のUnited Parcel Service (UPS)に社名変更します。

そして1922年には一般輸送業(Common Carrier)の営業免許を持つ会社を買収し、宅配便事業に乗り出します。

とはいっても、当初の営業範囲はロサンゼルス近郊限定で、1927年に125マイル圏にようやく拡大されたほど規制は厳しかったようです。

カリフォルニア州以外で一般輸送業(宅配便業)が認められたのは1953年のイリノイ州シカゴで、ハワイ州とアラスカ州を除く全州でのサービスが認められたのは1975年でした。

また同年にはカナダ、翌年1976年にはドイツ向けにサービスを開始することで国際化も始まりました。

 

UPSというと今や貨物航空会社として世界3位の規模ですが、出だしはなかなか厳しかったようです。

まず1929年に航空貨物利用運送業を初めて開始しましたが、世界恐慌のあおりを受けて早々に中止しました。

1953年に再開しましたが、営業範囲は北米に限定されました。

ヨーロッパへ飛ばせるようになったのは1985年でした。

また1981年に初めて自社機を購入しましたが、FAA(アメリカ連邦航空局)から自社機での営業を認められたのは1988年でした。

こう見てくると、自由の国アメリカでも運送業は利権ビジネスなのだなと感じます。

 

ロジスティクス部門はSonicAirを買収したのがはじまり

次に、ロジスティクス事業を担うUPS Supply Chain Solutionsの歴史を見てみます。

UPSがロジスティクス部門を発足させたのは、1995年にサービスパーツ物流事業を行っていたSonicAirを買収したのがきっかけです。

小口物流を得意とするUPSならではの買収といえます。

 

メンロー買収でフォワーディング事業を強化

次に2004年、大型貨物のフォワーディングを強化するために Menlo Worldwide Forwardingを買収し、UPS Supply Chain Solutionsとしてロジスティクス部門を独立させます。

そして続く2005年には混載陸上輸送(Less than Truck Load:LTL)大手のOvernite Transportationを買収し、これが後のUPS FreightとなりUPS Supply Chain Solutionsの一部門となります。

しかし、このUPS Freightは2021年4月に同業のTFI Internationalへ売却されました。

 

UPSの収益性

ロジスティクス部門の売上は全体の僅か18%

まずUPS全体の売上高構成を見てみましょう。

UPS 2020 Annual Report on Form-10K より抜粋)

 

Express、中でも米国内の売上高が大半を占め、Supply Chain Solutionsの割合は18%しかありません。

しかし、それでも15,184百万USDと日本通運に匹敵する売上高があります。

 

突出して利益率の高い国際宅配便

利益率はどうなっているのでしょうか?

コロナ前後の2019年と2020年のセグメント別のEBITマージンを調べたら、次のようになりました。

 

国際宅配便(International packages)の利益率がとても高いことが分かります。

DHLは国内外を合わせたExpressの利益率が14%くらいですので、DHLも国際宅配便だけを抜き出せばこのくらいの利益率なのかもしれません。

国内宅配便の利益率はそれより劣るとはいえ、8-9%の利益率を叩き出しています。

 

ロジスティクス事業の利益率も7%と高い

一方、ロジスティクス事業(Supply Chain Solutions)の利益率は昨年こそ.3%だったものの、今年は.4%と急低下しています。

何があったのでしょうか?

ロジスティクス部門の売上は15,184百万USDに対して、コストは14,827百万USDです。

コストの内訳を見てみると、2019年と比べてGoodwill and Other Asset Impairment Charges686百万USD増えています。

これは2021年4月に売却する予定のUPS Freightの減損損失を、2020年度の会計で処理したものでした。

従って、このコストは一時的なものと見なすことができ、これを除いたEBITは,058百万USDとなり、2019年度とほぼ同等になります。

UPS 2020 Annual Report on Form-10K より抜粋&加筆)

 

このUPS Freightが行っているLTL事業(混載陸上輸送事業)は、仕分け拠点の設備費用や幹線輸送費用が固定費になりますが、コロナの影響で固定費負担が重くなっていたようです。

UPSはこの事業売却により、主力事業に専念できるようになったとコメントしています。

 

ちなみに、この調整後のEBITを元に計算すると、EBITマージンは7%になります。

これはロジスティクス事業としては大変高い利益率です。

UPSではForwardingとContract Logisticsのセグメント別コストを公開していないため、どちらの利益率が高いのかは分かりません。

ただContract Logisticsの売上が,073百万USDあり、これは3PLの売上規模で勝る欧州のフォワーダー大手であるDBDSVと比較しても高い数字です。

日本では日立物流がContract Logisticsの最大手ですが、それと匹敵する売上規模です。

国際物流大手はフォワーディングが主でContract Logisticsが従の位置づけである会社が多く、倉庫/DCの細かい運営にはあまり長けていません。

UPSは小口物流に強いこともありContract Logisticsでの競争力が高いのかもしれません。

 

日本では国際宅配便とロジスティクスで2社体制

国際宅配便部門のユーピーエス・ジャパン株式会社と、ロジスティクス部門のユーピーエスサプライチェーンソリューション・ジャパン株式会社があります。

UPSは日本での国際宅配便事業では最初ヤマト運輸とタッグを組んでいて、1990年に合弁会社UPSヤマトエクスプレスを設立しています。

この合弁関係は2004年に解消されましたが、UPS単体の現地法人としては1999年設立のユーピーエス・ジャパン株式会社として継続しています。

現在、700名ほどの社員がいるようです。

 

ロジスティクス部門のユーピーエスサプライチェーンソリューション・ジャパン株式会社は1985年設立のようです。

UPS本体がロジスティクス部門を立ち上げたのは1995年ですので、それより前ということになります。

2004年に本体のUPSが買収したMenlo Worldwide Forwardingの日本法人が前身なのかもしれません。

社員は200名ほどいるようです。